メニュー

2018.08.10

熱中症対策にはどんなドリンクがよい?選び方から飲み方まで解説!

kencom編集部

記事画像

連日のように猛暑が続く今日この頃。テレビや雑誌では「熱中症」の危険性について取り上げられていますよね。そして、その対策方法のひとつとして必ず挙げられるのが「水分補給」です。
そのとき選択肢として思いつくのは「水・スポーツドリンク・経口保水液」の3点ではないでしょうか。では、熱中症対策に適した飲みものは何で、どのようにして飲むのが効果的なのでしょう?

そんな疑問を紐解くべく、大塚製薬のニュートラシューティカルズ事業部 学術部 田中久士さんにお話を伺いました。

まずは水分と身体の関係について知ろう!

身体の重さの約60%は水分。汗は血中の水分から作られる

田中さん「健常成人の体重の約60%が水分です。そのうち、細胞内が40%、細胞外(血液も含まれる)が20%です。そして細胞外はさらに組織15%と血しょう(血液中の水分)5%となるのですが、汗は、この血中の水分の5%からしか作ることはできません。また、汗は血液から作られるので、血液の中と同じナトリウムなどの電解質が含まれています。つまり汗をかく事は、水分だけでなくナトリウムなどの電解質を失っていることになります。これは大変重要なポイントです」

身体の水分は1日に約2.5Lも出入りしている

田中さん「普段の生活をしているとき、成人は、飲み物や食べ物また食べ物や飲み物が体の中でエネルギーに変化する時に一緒に発生する水分の合計は、約2.5Lです。それと同じ量だけの水分を尿や便、呼吸や皮膚の表面からの蒸発によって排出しています。

しかし、ここでの水分排出量に汗は含まれていません。1日に同じ量の水分を吸収し、同じ量の水分を排出しているので体重は一定ですが、汗はその水分の出入りの項目には該当しないのです。

つまり、汗をかいた分だけ、1日に必要な水分量は不足していることになります。

例えば、ある研究の報告によると、夏場の夜、28.6℃の寝室で就寝した場合、朝までに約200mlの水分が汗によって失われます。他の報告でも、38℃〜40℃のお風呂に30分程度浸かると約800mlもの水分が失われると言われています。

これだけで約1Lもの水分が汗として体から失われているので、寝る前に水分を取らないと朝に目覚めた時点では脱水状態になっていることになります」

熱中症対策に効果的な飲み物とは?

水・スポーツドリンク・経口補水液の違いを知ろう

田中さん「熱中症対策のための水分補給と聞いて思い浮かぶものは、水・スポーツドリンク・経口補水液になるかと思います。その違いについて簡単にご紹介します」

★水:口内や喉の乾きを潤す。脱水時には大量に飲まないほうがいい

田中さん「水は、日常的に口や喉の渇きを潤すことや、水分を補給として利用されていますが、汗をかいた脱水時(水と電解質が失われている状態)に大量に水だけを飲むのは避けたいもの。実は、水だけで補給しようとすると体内の電解質が薄められて、バランスが崩れた状態になります。身体は電解質のバランスを戻すために、水分を出そうと排尿するようになります。尿には水分以外にも電解質が含まれているので、最初に汗をかいた脱水状態に比べてより一層、水分と電解質を失う結果になります。これを自発的脱水といいます」

★スポーツドリンク:水分、ナトリウム、糖質が一緒にとれて、効率のよい水分補給が可能!

田中さん「一般的なスポーツドリンクには、水分と一緒に、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの電解質、糖質が入っています。これによって水分と電解質が吸収できます。さらに水だけを飲むよりも体内の水分吸収スピードが早いという研究結果があります。

水が吸収される小腸に、ナトリウムと糖質を吸収するためのトランスポーターがあります。その運び屋によって、体内のナトリウムや糖質の濃度が上昇して浸透圧が上がります。浸透圧が上がると、水分を引き込むために、体内に素早く吸収することができるのです」

★経口補水液:別名飲む点滴。まずは医師や栄養士に相談を

田中さん「経口補水液は、発展途上国でコレラが蔓延したとき救命のために生まれたものです。コレラに感染した乳幼児やお年寄りが亡くなられた最大の原因は、ひどい嘔吐と下痢による重症の脱水でした。通常、そのような重症の脱水の治療には点滴が使われますが、医療の整備への課題や経済的な理由から難しい状況だったのです。そこで命を救うために、点滴のかわりとして研究開発され、経口補水液の誕生につながりました。

点滴の代わりに使うことが本来の目的なので、医療従事者の適切な指示のもと飲むのが正しい使い方です。喉が乾いたからと日常的に飲むのはおすすめできません。ナトリウム量が多いので、腎臓への負担や血圧への影響も心配されます」

脱水時にはスポーツドリンク!水分を高速チャージ

田中さん「こうした観点から、汗による脱水時の水分と電解質の効果的な補給に適しているのはスポーツドリンクだと考えられます。

汗をかいて体内のナトリウムが失われると電解質のバランスが崩れます。すると筋肉の細胞は正常な動きができなくなり、筋肉がつったり、筋肉痛を起こす原因になります。実はこれも熱中症の軽い症状のひとつです。

水だけよりも汗の成分に近いスポーツドリンクを飲んだほうがより効果的に水分補給ができます」

スポーツドリンクを選ぶときはナトリウム濃度をチェック!

記事画像

田中さん「飲料で、“熱中症対策”という文言を使用してもよいのは、ナトリウムの濃度が100mlあたりに40~80mgの範囲に限られています。これは、各飲料メーカーが加盟する、全国清涼飲料連合会によってガイドラインが定められているんですよ」

シーン別!私生活におけるスポーツドリンクの使い方

オフィスワーカーなら1時間にコップ1杯

田中さん「現在、熱中症対策にはさまざまなシーンに合わせた各種ガイドラインがあり、その推奨事項に沿って対策することをおすすめします。オフィスワーカーの方ならば、1時間にコップ1杯の水分と電解質をとることが目安になります。また暑い季節に備えて日頃から軽く汗をかく運動をすることで身体を暑さに慣れておくことも重要です。そうすると、身体の中心部分の体温が上昇する早い段階で汗をかいて体温を調節することができるので、熱中症になりにくい身体になります」

製造業で屋外での現場作業であれば20分ごとに100~200ml

田中さん「製造業などでマスクをしなければならなかったり、建設業で重いものを運んだりしなければならない方は、作業内容、環境と衣類などによる要因からも熱中症のリスクが高まります。そこで、頻繁な水分補給が必要です。また現場の気象条件などの環境の要因や作業の強度などの要因を考慮することが重要で、作業中の20分ごとに100~200mlのスポーツドリンクを飲むことで、身体に必要な水分と電解質がとれますよ。また喉が渇く前に定期的に飲むのも大切です」

スポーツ時は喉の渇きがなくなるまで飲む

田中さん「スポーツをするときは暑さの影響を受けやすい環境にあり、熱中症になりやすい状況です。スポーツドリンクは、糖分とナトリウムが含まれてるため、水だけを飲むことに比べて、より効率的に補給した水分を体内に保てるのです。また、スポーツをするときには当然エネルギーも使っているので、ある程度のエネルギー補給をすることも重要です。

夏場の運動は、汗を大量にかきます。もし、運動後の体重減少が2%(体重60kgの人なら1.2kg)を超えてしまうと危険です。運動を始める前と後で体重を測ることも簡単な脱水を知るための方法です。

スポーツ時に飲む際の目安は、喉の渇きがなくなるまでしっかり水分と電解質を補給しましょう」

熱中症対策の基本は、水分・電解質補給と体調管理

汗をたくさんかいた後の水分と電解質を失った脱水状態では、水だけよりもスポーツドリンクが有効だということがわかりました。職域やシーン、ご自身の体調に合わせて適切にとるように心がけられるとよいですね。

また熱中症の対策は、日頃の健康状態を良好に保つことやも大切ですので、食事と睡眠はきちんと取りましょう。暑さに慣れることも覚えておきたいポイントです。

熱中症は注意すれば防ぐことができますので、総合的に整えて、暑さに負けない身体をつくりましょう!

<監修者プロフィール>

記事画像

■田中久士(たなか・ひさし)さん
1989年大塚製薬株式会社医薬品事業部に入社。医薬品の営業や開発関連の業務を約25年経験した後、健康の維持と増進のため科学的な根拠を持った飲料や食品などを展開する、ニュートラシューティカルズ事業部へ異動。2016年よりニュートラシューティカルズ事業部に新設された学術を担当。

取材協力:大塚製薬

参考文献

(撮影・取材・文/kencom編集部)

この記事に関連するキーワード