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2018.08.01

ビタミンサプリ摂取による心血管疾患の予防について【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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コンビニやドラックストアでも販売されているマルチビタミン・サプリメント。体のためにと愛用されている方も多いのではないでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2018年のCircultion: Cardiovascular Quality and Outcome誌に掲載された、マルチビタミンのサプリメントの、心血管疾患予防効果についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

ビタミンを多めに摂るメリットはある?

人間に必要なビタミンを複合して含む、マルチビタミン・サプリメントは、サプリメントの商品の中でも、最も広く使用されているものです。

個々のビタミンの不足や欠乏が、多くの病気の原因となることは、それは間違いのない事実ですが、それはあくまで高度な不足の場合であって、余程の偏食やアレルギーなどがない場合には、そうした事態はあまり起こりません。

それでは、それほどの欠乏がなくても、やや多めにビタミンを摂ることに、健康上のメリットがあるのかどうか、という点については、まだ明確な結論が出ていません。

これまでの多くの研究では、マルチビタミンのサプリメントと、心血管疾患などのリスクとの間には、明確な関連は得られていません。
ただ、一部にある種の心血管疾患において、そのリスクがサプリメント使用者で低かった、というようなデータも発表はされています。

今回の研究は、1970年から2016年の間に発表された、主だった臨床データや疫学データをまとめて解析する手法で、マルチビタミンのサプリメントの使用と、心血管疾患のリスクとの関連を検証しています。

その結果、一般住民がマルチビタミンのサプリメントを使用しても、その後の心血管疾患のリスクには、何ら有意な影響は確認されませんでした。

ビタミンサプリを飲んでも心血管疾患予防には効果なし

これはほぼ常識的な結果といえるでしょう。と、言っても全ての方にサプリメントが無効ではなく、さらに、それほどの健康への害もないと想定されています。お好きな方が使用することを非難するべきではないと思いますが、少なくとも心血管疾患の予防という観点においては、そうしたサプリメントの使用は無意味と断じても、もう言い過ぎではない時期に来ているように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36