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2018.07.04

「ゴルフは認知症予防に役立つ」という新事実|シニア層に受け入れられるスポーツになるか

東洋経済オンライン

コースでの練習でゴルフを楽しむ女性(写真:ウィズ・エイジングゴルフ協議会)

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コースでの練習でゴルフを楽しむ女性(写真:ウィズ・エイジングゴルフ協議会)

日本の少子高齢化の流れは止まらない。そんな流れに対してゴルフが一石を投じる可能性がありそうだ。

内閣府の平成30年版高齢社会白書によれば、日本の総人口は平成29(2017)年10月1日現在、1億2671万人で、そのうち65歳以上の高齢者人口は3515万人。総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は27.7%である。一方15歳未満の子どもの人口は1559万人で12.3%である。

さらに総人口が減少するなかで、高齢化率は上昇すると予想されている。高齢者人口は、いわゆる「団塊の世代」(昭和22(1947)~24(1949)年に生まれた人)が65歳以上となった平成27(2015)年には3387万人、その後も増加傾向で2042年に3935万人でピークを迎える。

2065年には高齢化率は38.4%に達する。約2.6人に1人が65歳以上、75歳以上人口が総人口の25.5%となり約4人に1人が75歳以上となる予想になる。まさに、超高齢社会である。

認知症の高齢者が増える予測も

高齢化が進めば、医療費の増大、老人介護などさまざまな問題が湧き上がってくる。日本の将来に漠然と不安を感じる人も多くいるに違いない。また、認知症についても大きな問題となってくる。

少し古くなるが2015年に慶應義塾大学医学部と厚生労働省科学研究班の推計で、2014年の認知症の社会的費用は①医療費1.9兆円、②介護費6.4兆円、③家族などが無償で行う介護を金額に換算した「インフォーマルケアコスト」は6.2兆円で合計14.5兆円にものぼる可能性を示唆した。厚生労働省によると、日本の認知症の患者数は2012年に462万人、2025年には675万~730万人に増えると推計されている。

このような出口の見えない問題解決に、ゴルフ界が貢献できるかもしれない明るい情報が発信された。

シニアゴルフファーは元気である。ゴルフをやるから元気なのか、元気だからゴルフができるのかは議論の分かれるところだが、同じ、70歳、80歳でもゴルフをプレーしている人は若々しい感じがする。これを証明するような、興味深い情報が発信された。ゴルフが認知症の予防に効果があるということである。

今年3月に国立長寿医療研究センター、杏林大学、東京大学、ウィズ・エイジングゴルフ協議会(ゴルフ関連団体の関東ゴルフ連盟・日本芝草研究開発機構・日本ゴルフ場支配人会連合会・日本プロゴルフ協会・日本女子プロゴルフ協会)が共同で発表した「高齢者の認知機能低下予防におけるゴルフの効果検証」である。

また、世界5大医学誌の一つに数えられるイギリスのブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(イギリス医師会雑誌:British Medical Journal)に、この6月正式に「Effects of golf training on cognition in older adults(ゴルフの認知症予防に関する論文)」が掲載された。

これは社会実験として、関東地区在住で2016年の時点で65歳以上の高齢者でゴルフをほぼしていない(年1回以下)、またはゴルフをしたことがない人を対象に協力者を106名募集し、ランダムにゴルフを体験するグループ53名(介入群)とコントロールとして健康講座グループ53名(対照群)に分け、2016~2017年にかけて6カ月間、実験を実施した。

6カ月間の実験内容とは

ゴルフグループは埼玉県の日高カントリークラブで、6カ月間・週1回24のセッションを実施した。ゴルフの1日のスケジュールは①運動前の体調チェック、②ゴルフの基礎知識の学習、当日実施事項の説明、③ストレッチ(ウォーミングアップ)、④ゴルフの実戦、⑤ストレッチ(クーリングダウン)であった。

スナッグゴルフを楽しむ男性(写真:ウィズ・エイジングゴルフ協議会)

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スナッグゴルフを楽しむ男性(写真:ウィズ・エイジングゴルフ協議会)

ゴルフ教室については、練習セッションとして週1回90分を14週実施。第1週~5週は練習場でスナッグゴルフ。(スナッグゴルフはプラスチックのクラブとテニスボールとほぼ同じボールを使い、安全に「やさしく」「正確に」「どこでも」「だれでも」ゴルフの基本を学べるシステム。)

第6週はスナッグゴルフでゴルフコースを体験。第7週~14週は通常のゴルフクラブを使い練習場での教室。基本的な練習が終わると、コースセッションとなり週1回120分で10週実施した。

埼玉県日高市にある日高カントリークラブ(筆者撮影)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/227779?page=3

埼玉県日高市にある日高カントリークラブ(筆者撮影)

この6カ月の実験後、「ゴルフグループ」と「ゴルフをしない健康教室グループ」の間に記憶検査において単語記憶が6.8%UP、論理的記憶が11.2%UPと有意な機能向上がみられ、ゴルフをすることによって記憶力が改善されたことが証明された。

認知機能低下の予防には、有酸素運動と認知課題を同時に行うデュアルタスク運動(運動しながら頭を使う)が効果的とされてきており、これを兼ね備えているゴルフは願ったり叶ったりのスポーツと言える。さらに、今回の実験でわかるようにゴルフ経験のない、シニア層にも受け入れられるということである。

このゴルフ社会実験の場を提供した、埼玉県日高カントリークラブの総支配人の平沼正史さんにもお話を伺った。

「日高CCはメンバーコースですが、今回の実験については社会的に良い活動ということでメンバーの理解・協力があった。

日高CCの平沼正史総支配人(筆者撮影)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/227779?page=3

日高CCの平沼正史総支配人(筆者撮影)

また、実験に参加された方々も、評価が終わった後も、同窓会的な集まりができ、継続的にゴルフをしていて、本物のゴルファーが育っている」とのことであった。

未経験のシニアでもゴルフの楽しさを体験すれば、新しいゴルファーとなりえる。

高齢者が新たにゴルフを始めるきっかけになるか

ゴルフ業界の集まりであるゴルフ市場活性化委員会も「始めよう、続けよう、もっとゴルフを」のスローガンに、少子高齢化の厳しい中で2004年からゴルフ市場の縮小を少しでも抑制するための活動を続けている。

その中で「始めよう」はどうしてもゴルフ未経験のジュニア、女性、若者のイメージで活動してきているが、シニアにとってもゴルフが健康増進と認知症予防になることを考えれば、60歳になっても、70歳になっても新たにゴルフを始めるきっかけになる。

ゴルフは3世代でも同時に楽しめるスポーツである。さらに、ゴルフで認知症に関わる14.5兆円にのぼる社会負担が少しでも軽減できれば、社会貢献にもなる。ゴルフ未経験の祖母や祖父をゴルフに誘って、人生100年時代を一緒に楽しんでは。

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嶋崎 平人:ゴルフライター

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