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2018.06.24

「スマホ漬け」の子を性根からたたき直す知恵|アップルも「依存症対策」に力を入れ始めた

東洋経済オンライン

わが子がネット依存になってしまったら……(写真:freeangle/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/226408?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

わが子がネット依存になってしまったら……(写真:freeangle/PIXTA)

これは昨年、私が関東地方のある公立中学校に講演に行った際、生徒の母親から相談された事例だ。「息子は今日も学校に行かないんです……」と、彼女は深刻そうな顔で言った。彼女から成績の下降を強く叱責されたことがきっかけで、息子の山崎佳祐くん(仮名)はその講演会の1年ほど前から自室にこもって昼夜問わずネットゲームに入り浸るようになった。ゲームをやめさせようと彼女は彼のパソコンを取り上げたこともあったが、怒鳴ったり、物を投げたり、たたいたりするようになって逆効果だった。

ネットゲームに依存するまではかなり良い成績だっただけに、それでも彼女は連日、佳祐くんを責め立てた。しかしその度に、大げんかになり、次第に彼は学校を欠席しがちに。2年生に進学してからは、とうとう1日も学校に行かなくなってしまったという。

「ネット依存」は世界的に深刻な問題

「出席日数が足りないから卒業できないと思っているみたいで。息子はもう学校にまったく行きたがらないんです」

公立中学校なら卒業できないことはまずないし、そもそもまだ中学2年生である。たとえ不登校が続いたとしても、通信教育などを活用すれば、学力はカバーできる。だが、それよりも問題なのは、自力では立ち直れそうにない彼の状況だ。

彼のように1年近く「ネット依存」が続いた場合、治療には医療機関を頼るしかない。私はネット依存専門の外来を持つ病院を彼女に紹介した。しかし、問い合わせが殺到しているため、病院側がすぐには対応できない状況だという。日本にはまだネット依存症を治療できる医療機関が少ない一方、相談したい患者の数は年々増加している。

ネット依存症は、彼のように日常生活や心身の健康、人間関係よりもネットの利用を重視してしまい、利用時間などをコントロールできない状態をさす。実生活に支障が出ることが一番の問題だ。海外では、数日間ネットに没頭した人がエコノミークラス症候群をきっかけに死亡したケースも出ている。

iPhoneなどで知られるアップルは6月4日、「スマホ依存症対策」としてアプリの利用時間などを制限できる新機能を、次世代ソフトウェア「iOS12」に搭載すると発表した。また、グーグルも昨年から、アプリの利用や端末の利用時間を制限できるサービス「ファミリーリンク」を提供し始めており、今やネット依存は世界全体の問題となっている。

最近は注意を促す報道や番組も増えているため、わが子がネット依存になることを恐れて、「子どもにスマホを持たせたくない」「パソコンの利用を禁止したほうがいいのでは」と考える保護者も多い。しかし、その考えはあまりおすすめしない。家庭には、スマホやパソコン以外にも学習用タブレットやゲーム機などネットが使える端末は多くある。もし子どもが隠れて使うと、トラブルに直面したとき親に相談できず、問題が深刻化する可能性があるからだ。

インターネットをまったく使わせないのは、現実的ではない。ネット依存を遠ざけたければ、子どもの「セルフコントロール力」を養ったほうがいい。

たとえば、ネット依存の治療に長けた医療機関が採用している「認知療法(自分が置かれている状況を冷静に見直す治療法)」が参考になる。もし自分の子どもがネット依存症の疑いがあるようだったら、一度ネットやゲームの利用時間を紙に書かせて、可視化させたほうがいい。そうやって「置かれている状況を客観視」させることが、セルフコントロール力の向上につながる。

ちなみに冒頭で紹介した佳祐くんも、その後、なんとかネット依存専門の外来で認知療法を受けられるようになった。彼の場合、毎日ネットゲームのプレイ時間を記録することで、一日のうち寝る以外はゲームをしている状況や、これまで自分がゲームに費やした時間の総量を把握して、われに返ったそうだ。ゲームでは強くても学校に行かず、友達もいない自分の状況を客観視して、「ゲームはやめたほうがいいかもしれない」と言えるまでに変わった。まだ以前のように学校には通えていないそうだが、これから徐々にゲームのプレイ時間を減らしていけば、正しい生活リズムを取り戻すことはそれほど難しくはないだろう。

「他に熱中できるもの」を持つことも大事

また、ほかに「やりたいこと」や「将来の目標」がはっきりしている子は、依存症にはなりづらい。逆に、やりたいことや目標などがない子ほど、友達の誘いや誘惑に引っかかってしまい、ズルズルとネットを使い続けて依存症になる傾向にある。

もし自分の子どもが後者であるなら、積極的に目標ややりたいことを見つける手助けをすることをおすすめする。たとえば子どもが受験を予定しているなら、志望校の学園祭や説明会などに参加させて、「この学校に行きたい」という気持ちをかきたてるなどだ。

子どもが小さい場合は、目標を持たせることが難しいこともある。実際、わが家でも当時まだ幼稚園児だった息子が、夫のダウンロードしたスマホゲームにはまってしまったことがあった。ゲームをアンインストールしても、欲求は収まらなかった。しかし、息子が小学校に入学して、けん玉にはまってからは「ゲームをやりたい」とねだらなくなった。けん玉では他の子どものトップに立てたため、1人でゲームをしているより楽しかったようだ。

ほかに夢中になれることがあれば、子どものゲームやネットの優先順位は低くなる。外遊びや習いごとをさせるなど、子どもが小さいときは可能なかぎりスマホを使えない環境におくといいだろう。

ネットやスマホは非常に魅力的なツールだ。大人でもゲームやSNSに熱中しすぎる人は少なくない。大人でさえのめり込みすぎるものを子どもだけで使いこなせるようにするのは難しいのだから、きちんとルールを作って、保護者が見守りながらうまくコントロールできるよう練習させることを推奨する。ルールを作る方法については、過去の記事「子どものスマホデビュー、知らないと怖い基本」を参考にしてほしい。

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高橋 暁子:ITジャーナリスト

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