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2018.10.01

何ができる?どうすごい?『ひさやま元気予報』を大解剖!

KenCoM編集部

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KenCoMに新たに登場した『ひさやま元気予報』をご存知ですか?
これは健康診断結果から自分の未来の姿が予測できるという驚きのツールです。
詳しい使い方は実際に触ってもらうことにして、ここでは『ひさやま元気予報』のこだわりポイントや開発の経緯など、他では聞けない情報をDeNAと共同開発した九州大学・久山町研究室の先生方から伺いました。

ひさやま元気予報が目指したのは健康リスクの見える化

開発の発想は1960年代から

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「健康診断の結果や生活習慣から、使用者の将来の疾患発症リスクなどを予測する」と書くと最近の発想のように見えますが、実は元の発想は1960年代から行われている久山町研究の中にあったそうです。
もともと医学論文では高血圧や糖尿病を引き起こす危険因子は複数存在し、これらを包括的・総合的に管理した方が良いという結果が出ていました。また、その理論に基づいてリスクを点数化し、包括管理するリスクチャートも登場していました。しかし、使い方が複雑であったり、計算しないといけないなどで一般に普及しにくい状態でした。

生活習慣病の危険因子を包括的に管理し、一般の方にも使いやすくするにはどうしたらいいのか。その発想を原点に将来の病気を予測する形を思いついたのが、久山町研究室前主任である清原裕先生でした。
実際に清原先生のチームによりソフト化され、久山町住民に対する保健指導に活かす形で研究成果を還元してきました。

これをより多くの方が日常的に簡単に使えるのが、今回のアプリ『ひさやま元気予報』になるのです。

最大の特徴はビジュアライゼーション

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『ひさやま元気予報』最大の特徴は、一般の方でも理解しやすいようリスクの集積の見える化が図られている点です。
この分りやすさを実現するためにパートナーとして選ばれたのが、ゲーム開発などでビジュアライズに長けたDeNAでした。

この共同開発の良さが特に発揮されているのがデータのシミュレーション時です。
「見た目に面白く、楽しい」を重視し、それぞれの病気の発症確率を「晴れ」「曇り」「雨」などの天気マークで美しく表示することにこだわっています。
これは従来使われていた類似システムを使用していた際、リスクを見える化することで使用者の反応が変わることがわかっていたため、特に細かく注文したポイントだそう。実際に細かく動かしてもらえば、天気が即時にに変わっていくのがわかるでしょう。
データのシミュレーション部分を一度起動すれば、「わかりやすい、見やすい、触りたくなる」という気持ちを感じられるはずです。

また、見える化をより進めるために、さらにこだわったポイントが2つあります。

ポイント1:発症確率を経年で確認できる

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まず1つ目は発症リスクを細かく表示できる点です。
一般的に利用されているリスクスコアだと、10年後に発症するかという一点だけを出すケースが大半ですが、『ひさやま元気予報』では5年、10年、15年と経年的に変わるリスクを示すことができます。年齢とともに少しずつリスクが増えていく様子や、予防への緊急度を一目見ただけでわかるようになっているのです。

ポイント2:他の人と相対的に比較できる

同年同世代と比べた際の発症リスクを数字と天気で表現することで、直感的に理解できるようになっている。

同年同世代と比べた際の発症リスクを数字と天気で表現することで、直感的に理解できるようになっている。

現在の自分がどれくらい健康なのか、ついつい他の人と比べてみたくなるのが人の常です。しかし、従来使われていた類似システムは発症確率が数値で示されるものの、その数値が他の参加者に比べて良いのか悪いのか分かりづらいものでした。
そこで今回のアプリでは発症確率を分りやすくグラフ化。25%-75%の間の値で自分がどの辺りに位置するかを一目で確認できるように工夫されています。さらに、同性同年代の人と比べて何倍病気になりやすいのかを倍率でみることもできるのです。

行動につながる画期的なわかりやすさ

自分の身体の数値でシミュレーションできる

運動などで数値が変わったらリスクがどう下がるかをシミュレーション可能。数値はスライドするだけで変化させられる。

運動などで数値が変わったらリスクがどう下がるかをシミュレーション可能。数値はスライドするだけで変化させられる。

ここまで、アプリ側の見やすさやこだわりについて書いてきましたが、みなさんが実際に『ひさやま元気予報』を使って最も驚くのは、自分の身体の危険性を総合的に判断して予測してくれることでしょう。

今までこんな経験はなかったでしょうか。健康診断の数値が悪かった際、「運動してください」とアドバイスを受けても、どう改善できるのかよくわからず戸惑ってしまう。
『ひさやま元気予報』なら、もしも自分が運動したらどういう状態になるのかを自分の健康診断の値からシミュレーションできるため、納得して取り組むことができます。
一般論ではなく、自分自身が運動したら何が変わるのか、どのリスクが下がるのかをしっかりと理解しながら行えるのです。

久山町で行動変容効果は実証済み

久山町の健康診断では、保健指導時に使用されている。

久山町の健康診断では、保健指導時に使用されている。

自分の数値でシミュレーションしたことで行動変容につながるのか、疑問を抱かれた方もいるかもしれません。
ですが、実際に久山町では平成26年度から本年平成29年度の4年間、同じアルゴリズムを使った類似のシステムで保健指導を行なっています。
そこで見える化したデータを使い指導した場合、1年以内に血糖値が改善しており、禁煙などの成功率も良いという結果が示されました。また、改善した方々は2〜3年経っても効果が継続していることが多いことから、行動変容に適しているシステムであると言えそうです。

ただ、あくまで4年間での結果のため、さらに長期的な話はわかりません。一般的には年数とともに、意欲が下がるというのはわかっているので、日頃から健康に対して意識づけていくことが大事になります。
その意味では、『KenCoM』などで健康情報に親しんでおくことがいいのではないでしょうか。

将来的には他の疾患にも対応予定

現在シミュレーションできるのは『糖尿病』と『心血管病』の2つ。

現在シミュレーションできるのは『糖尿病』と『心血管病』の2つ。

『ひさやま元気予報』では、現在のところ糖尿病と心血管病の発病予測ができますが、今後はさらにその予測範囲が広がる予定です。
久山町研究室で検討されているのは高血圧と認知症の2種類。これらがわかり予防できるだけで、老後の人生の質は間違いなく上がりそうですね。

注意点は、あくまでリスクであること

ここまで、メリットを上げてきましたが、注意すべきこともあります。

それは、『ひさやま元気予報』で出るのは健康診断結果を基にした予測値であり、診断ではないということです。

予測とはあくまでも確率の話ですので、シミュレーション結果で発症リスクが低かったとしても生活習慣病を患うこともあります。反対にリスクは高いが、一生発症しなかったというケースもあるかもしれません。

将来の予測が良くても過信せず、定期的に健康診断を受けるなど健康管理はしっかり行うようにしましょう。

最終目標は病気の予防から介護の予防へ

最後に久山町研究室の主任である二宮先生に、『ひさやま元気予報』の展望を伺いました。

「このアプリの最終目標は、生活習慣病の予防だけではなく、高齢化社会での介護の予防だと思っています。要介護状態を予防し健康な高齢者になるためには、実は比較的若い時、特に中年期から生活習慣病の予防管理や喫煙や運動不足などの生活習慣の見直しをすることが重要です。しかしながら、実際に病気を発症するまでは、なかなかその大切さに気づく方は少ないように思います。そのため、『ひさやま元気予報』により個人が持つ病気の発症リスクをできるだけ早い時期から知り、自らその予防管理を行うことで、元気な80〜90歳を迎えていただくことを期待しています。」

九州大学・久山町研究室 二宮利治先生・吉田大悟先生

二宮利治(にのみや としはる)衛生・公衆衛生学分野 教授
吉田大悟(よしだ だいご)  衛生・公衆衛生学分野 助教

(取材・文/KenCoM編集部)