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2018.06.20

カルシウムは本当にイライラを抑えてくれるのか?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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カルシウムは、健康な体を維持するのに必要な栄養素の1つです。
もし摂取量が不足していると、メンタルに影響する可能性もあるのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2012年のNutrition Research and Practice誌に掲載された、カルシウムの摂取量とうつ傾向との関連を検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

カルシウムが足りないとイライラする?

カルシウム摂取量とメンタルに関係はあるのか

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カルシウムが不足するとイライラが強い、というのは良く聞くことがある、健康情報の1つです。

ただ、最近では「それは嘘の医療知識だ」と言う解説がネットなどでは記載されていることが多いと思います。

そのことについて最近聞かれる機会があり、「あれは嘘の情報なんですよね」と言われたので即答出来ずに調べてみたのですが、確かに「カルシウムが不足してもイライラすることはない」というような記事は見られても、その出典が明確に示されているようなものは、なかなか見つかりません。

概ねその説明としては、カルシウムというのは血液濃度が一定になるように、身体が調整をしているので、少しばかりカルシウムの摂取量が減っても、それで身体に変化が起こる訳がない、というような内容になっています。

しかし、それは確かにそうではあるのですが、それを言えばナトリウムだってカリウムだって同じですが、それでも極端な欠乏や過剰があれば、身体の状態や病気のリスクが変動することは、その影響の大きさについては議論があっても、これはもう広く実証されている事実ですから、特別科学的な説明とは言えないように思います。

カルシウム摂取量とうつ状態の程度は反比例

月経前症候群の女性のイライラは、カルシウム摂取で緩和できる場合も

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カルシウムが不足するとメンタルに影響する、という言説はどの程度の根拠のあるものなのでしょうか?

それで調べて引っかかって来たのが下記の論文です。

下記文献およびそこで引用されている過去の多くの知見によれば、カルシウムの不足がイライラの原因となるというのは、主に月経前症候群の女性で得られている知見で、カルシウムの摂取量が少ないと、月経前の気分の変調やイライラが強く、それがカルシウムの摂取により緩和された、というようなデータは過去に複数存在しています。

一応の理屈としては、動物実験において視床下部の神経細胞は、細胞外のカルシウム濃度に敏感に反応して、その興奮や神経伝達に変化が生じるという報告があり、低カルシウム濃度がうつや衝動性などの原因となる、というような報告もあります。

下記論文では韓国において、41から57歳という閉経前後の女性105名の、カルシウムやマグネシウムの摂取量と、SDSという指標で見たうつ状態の程度との関係を見たところ、血液のカルシウム濃度にはSDSとの関連は認められなかったものの、カルシウムの摂取量が少ないほど、うつ状態の程度は強いという一定の相関が認められています。

中高年女性のカルシウム不足は、メンタル異常に影響する

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従って、主に閉経前後の女性に限った話として、カルシウムの不足がイライラや不安やうつなどの、メンタルな異常を助長しやすい、という点については一定の根拠があると、そう考えて大きな間違いはないようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36