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2018.06.08

笑い事で済まないかも!?出っ腹にまつわる医療的怖い話

KenCoM編集部

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お腹なんて出ていても、別に気にしない!という方は多いかもしれません。ですが、長年放っておくと医学的にもリスクがあることだと知っていますか?

意外と怖い出っ腹の医学的リスクを、KenCoM監修医の石原藤樹先生にお伺いしました。
見た目だけではない、出っ腹の問題点とはどんなものなのでしょうか?

お腹が出ていることで考えられるリスクとは

お腹が出ていることで一般的に言われるデメリットは、見た目の悪さです。
洋服のお腹部分だけがパンパンになったり、体型が崩れて見えたりと、見た目がしっかりしていないといけない仕事の方にはリスクが高いもの。
ですが、服装が自由な職場や、見た目が気にならない方にとっては、どうでもいいことでは?

そんなことはありません!

石原先生によると、実はお腹が出ていることで少なくとも3つのリスクが疑われるそうです。

リスク1:内臓肥満

最も一般的なリスクは「内臓肥満」です。特にお腹周りだけぽっこり出ているような場合は、リンゴ型体型と言われ、内臓脂肪がたまっている証拠とされています。
この脂肪は、本来は腸管を固定する役割を持つ腸間膜に蓄積し、腸管を中心に全身と血液のやり取りをし、全身にエネルギーを送るのが仕事。ただし、増えすぎると代謝低下や動脈硬化の進行、高血糖のリスクを高めるなど、身体に悪影響を与えるようになるのです。

この内臓脂肪がつきすぎかどうかを判定するのは、メタボ診断の腹囲検診。男性なら85cm、女性なら90cm以上の腹囲があれば、内臓脂肪がつきすぎということで要注意となります。
また、腹囲検診に引っかからなくても、中年以降で急激に体重が増えた方も注意が必要だそうです。特に20代から10kg以上体重が増えてしまった方などは注意してください。

リスク2:内臓下垂

加齢とともに増えてくるのが、次のリスク「内臓下垂」です。これは年齢とともに、重力に負けて内臓が下へ下へと降りてきてしまうもの。
主な原因は支えている筋肉が弱ってくることとされています。

降りてくるだけならそんなに問題がなさそうですが、実は下がることで、内臓が圧迫され、機能が低下しやすくなります。その結果、便秘やガス溜まりに悩まされたり、免疫力の低下を招く場合もあるそうです。
また、悪化しすぎると直腸脱、いわゆる脱腸になる場合もあります。

さらに女性が悪化した場合、落ちてきた内臓が骨盤の中に入り込んで子宮を圧迫し、子宮脱といって身体の外に出てしまうケースもあります。
あまり知られていませんが、なかなかに怖い症状です。

リスク3:エーラス・ダンロス症候群

3つ目は珍しいケースですが、難病である「エーラス・ダンロス症候群(EDS)」の可能性です。
EDSとは、国から難病指定されている病気で、皮膚、血管、関節、内臓などにある結合組織の生まれつきの“もろさ”によって、皮膚や関節が伸びやすく、切れやすいなどの症状のほか、皮膚や血管がもろくなり、出血しやすくなるなどの症状が出る病気です。
EDSが進んで、身体内部が緩み、大幅に腸が下に降りてきてしまうと、食事がしにくくなったり、運動能力が落ちるなどの自覚症状が出てくるそうです。
何も変わっていないのに、上記の自覚症状を感じた方は病院に相談してみると良いでしょう。

基本的な対策は「運動」あるのみ

これらのリスクを回避するためにはどうしたらいいのでしょうか?
その方法として石原先生がオススメしているのが、インナーマッスルなどの筋肉を鍛えることです。

3つ目のEDSを除き、内臓脂肪や内臓下垂は、運動である程度予防することができるそうです。
例えば、内臓脂肪であれば、運動をすることでエネルギーとして消費され、その量を減らすことができます。
また、腹部のインナーマッスルや、腹横筋などのコルセットのように身体を覆っている筋肉を鍛えておけば、内臓が下に降りてきにくくなります。

これらは元気なうちに行っておくほど効果的。
問題が出てから慌てて始めると、逆に体調を壊す原因になる場合もあります。
今から少しずつ運動をして、徐々にお腹を凹ませていきましょう!

医師プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。