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2018.06.06

ナッツと心血管疾患病の意外な関係【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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おつまみでもおなじみの、アーモンドやピーナッツ、くるみなどのナッツ類。
これらは栄養豊富なだけではなく、定期的に食べることで病気の予防につながる可能性があるのだそう。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2018年のHeart誌に掲載された、ナッツの摂取量と心血管疾患リスクとの関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

ナッツを食べることによる健康効果とは?

ナッツは不飽和脂肪酸やポリフェノール、ビタミンEや食物繊維、各種ミネラルなどをバランス良く含有し、ナッツ単独の効果とは言えませんが、ナッツやオリーブオイルを多く使う食事である、地中海ダイエットという食事パターンは、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患を予防する働きが、複数の精度の高い疫学データによって確認されています。

その一方でナッツ単独の摂取習慣と、個別の心血管疾患との関連を見たデータは、それほど多くはありません。

ナッツを食べる回数と心血管疾患発症リスクの関連を検証

17年にわたるスウェーデンの大規模疫学調査では

今回の研究はその点に着目したもので、スウェーデンの大規模疫学データを解析して、ナッツを食べる回数と、その後の心血管疾患の発症リスクとの関連を個別に検証しています。

対象者は一般住民61364名で、17年という長期の経過観察が行われています。
ナッツの摂取は、1か月に0回から1から3回、週に1から2回、週に3回以上という形で、アンケート結果から集計されています。

その結果、ナッツの摂取量が多いほど、心筋梗塞、心不全、心房細動、そして腹部大動脈瘤のリスクは、低いものとなっていました。
ただ、これを喫煙や血圧などの他のリスク因子を補正して解析すると、その関連は弱いものとなり、補正しても摂取量とリスクの低下との間に明確な相関があったのは、心房細動の発症リスクのみでした。

ナッツ摂取量と明確な関係があったのは「心房細動の発症リスク」

殆どナッツを摂取しない場合と比較して、月1から3回の摂取では3%(0.93から1.02)、週に1から2回の摂取では12%(0.79から0.99)、週に3回以上の摂取では18%(0.68から0.99)、用量依存的にリスクは低下していました。

それ以外に心不全のリスクについては、週に1から2回の摂取では20%(0.67から0.97)と、有意に低下していましたが、週に3回以上の摂取では有意な低下はありませんでした。
つまり、用量依存的な低下ではありません。

このように今回の検証においては、ナッツの摂取が明確に関連していたのは、心房細動の発症リスクのみでした。

精度の高いデータで再検証を

今回のデータはナッツの摂取量を、アンケートでの摂取回数で判断していて、具体的な量などは分からないので、その意味で精度の高いデータとは言い切れないのですが、個々の疾患とナッツの摂取との関連については、今後再検証される必要がありそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36