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2018.05.30

定番ドリンクと脳卒中の意外な関係【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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3週にわたりコーヒーの健康効果についてお伝えしましたが、お茶やココアのような他の定番ドリンクにも健康効果はあるのでしょうか。また、その効果はどのようなものでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2014年のStroke誌に掲載された解説記事ですが、コーヒーとお茶とココアの、脳卒中予防についての知見をまとめたものです。

▼石原先生のブログはこちら

定番ドリンクは健康に役立つか?

コーヒーもお茶もココアも、いずれも生理活性物質のポリフェノールを多く含む飲み物で、その種類は異なりますが、抗酸化作用や抗炎症作用を持ち、動脈硬化の進行予防や、心血管疾患のリスク低下に役立つという知見が、それぞれに集積されています。

ただ、この3種類の飲み物にもそれぞれに違いがあり、それを今日は主に脳卒中予防という観点からまとめてみたいと思います。

なお、本文の内容は、上の2014年のレビューを元にしているので、基本的に2014年までのデータのまとめです。その後の知見は反映されていないことにご注意下さい。
ただ、コーヒーの文献についてはその後のものも結構読んでいますが、この時点での知見を覆すようなものはないように思います。

1.コーヒーと脳卒中

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コーヒーには数百種類の生理活性物質が含まれていて、その中には心血管疾患に良いと思われるものもあり、その一方で有害と思われるものもあります。
これがコーヒーと健康との関係を考える時に、難しい問題を孕んでいます。

コーヒーに多く含まれている生理活性物質は、カフェインと油に含まれるジテルペン、ポリフェノールのクロロゲン酸の3種類です。
この成分がどの程度の比率で存在しているかで、コーヒーの身体への効果は代わる可能性があります。

コーヒーの淹れ方にはフィルターを使う方法と、そのままボイルして抽出する方法の2種類があります。ペーパードリップなどはフィルターを使用する方法で、フレンチプレスやエスプレッソは、フィルターを使用しない淹れ方です。

カフェイン:血圧上昇効果がある

カフェインは血圧を上昇させる性質があります。200mgから300mgくらいのカフェインを一気に摂取すると、収縮期血圧は中央値で8.1mmHg上昇した、というデータがあります。
この変化は摂取後1時間以内で現れ、3時間は持続します。

ただ、慢性のカフェイン摂取では血圧は上昇しない、という報告が多く、疫学データとしても、コーヒーを沢山飲む人の方が、血圧が高いというデータは得られていません。
コーヒーはゆっくり飲むものですから、カップ3杯かそれ以上に相当する量を、一気に飲むということはないからかも知れません。

ジテルペン:コレステロールや中性脂肪を増加させる

コーヒーの油脂の主成分は中性脂肪で、そこに代謝物のジテルペンが含まれています。
これまでの研究によると、このジテルペンには、血液中のコレステロールや中性脂肪を増加させる作用があります。

このジテルペンは、フィルターで淹れたコーヒーでは濾過されるので、その大部分は除去されます。また水出しのコーヒーではジテルペンは少なくなります。

つまり、エスプレッソやフレンチプレスなどの、アンフィルターの淹れ方のコーヒーでは、他の淹れ方に比べてジテルペンが多くなり、コレステロールが上昇し易い、という可能性があるのです。
一番多いのがフレンチプレスやスカンジナビアローストで、中間くらいがエスプレッソと言われています。

実際に2012年に発表されたメタ解析の論文では、アンフィルターのコーヒーで、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の増加が認められた一方、フィルターで淹れたコーヒーでは、軽微な変化しか認められていません。

クロロゲン酸:抗酸化作用と血圧降下作用がある

クロロゲン酸はコーヒーに含まれるポリフェノールの代表で、基礎実験や動物実験において、抗酸化作用が確認されています。

ただ、動脈硬化に結び付くとされる、LDLコレステロールの酸化を、クロロゲン酸が人間でも抑制するかどうかは、まだ確実とは言えません。

2014年の時点までに3つの研究があり、そのうちの2つでは淹れ方に関わらず、コーヒーによるコレステロールの酸化防止作用が確認されていますが、残りの1つでは確認されていません。

クロロゲン酸はカフェインと反対に血圧降下作用があり、おそらく一酸化窒素を介した血管拡張作用によると考えられています。

最近の疫学データにおいて、1日3から4杯くらいまでのコーヒーが、心血管疾患を減らすというのはほぼ一致した見解ですが、脳卒中単独で見ると、その差はそれほど明確ではありません。概ね3から4杯くらいのコーヒーで、15から20%程度の脳卒中リスクの低下が報告されています。

2.緑茶や紅茶と脳卒中

どのお茶も、コレステロールや血圧低下、血管内皮機能の改善作用がある

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お茶には紅茶と緑茶、ウーロン茶などがありますが、これは茶葉の発酵の度合いによる違いです。
緑茶は発酵させていないお茶で、少し発酵したお茶がウーロン茶、それをより発酵させたのが紅茶です。

お茶はフラボノイドが含有されているのが、その特徴ですが、緑茶のフラボノイドはカテキンが主体で、紅茶のフラボノイドは、発酵の過程で酸化され、テアルビジンなどの二次産物に変化しています。

お茶に含まれるフラボノイドとその酸化物は、コレステロール降下作用と血管内皮細胞機能の活性化などが、基礎実験や動物実験で確認されていて、そのことから動脈硬化の進展防止に有効と考えられています。

臨床研究において報告があるのは、緑茶や紅茶の摂取による、コレステロール低下作用や血圧降下作用、そして血管内皮細胞機能改善作用で、特に血流依存性血管拡張反応と呼ばれる検査で測定された、血管内皮機能の改善作用が、精度の高いデータで確認されています。

お茶による脳卒中の予防効果は、緑茶における日本の研究(2013年発表多目的コホート研究の解析データ)では、1日4杯以上の緑茶の摂取で20%の予防効果が認められていて、スウェーデンの紅茶を対象としたデータでは、1日4杯以上の紅茶の摂取で21%の予防効果が認められています。
こうしたデータを見る限り、緑茶でも紅茶でも、脳卒中の予防効果にはそれほどの差はないようです。

3.ココアと脳卒中

インスリン抵抗性や血管内皮機能を改善する

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ココアやチョコレートに含まれている、カカオポリフェノールには、抗酸化作用と抗炎症作用のあることが確認されています。
ただ、この効果はミルクを入れたココアや、ミルクチョコレートではあまり認められません。
ココアやチョコレートを使用した介入試験のメタ解析では、ココアやチョコレートによる血圧降下作用が報告されています。
ただ、個別の研究結果では、その降下作用は明確ではありません。
ココアやチョコレートは、インスリン抵抗性を改善し、血管内皮機能を改善する効果が報告されています。

脳卒中とココアやチョコレートとの関係では、メタ解析で19%そのリスクを減らした、という報告があります。
ただ、お茶やコーヒーと比べると、データ自体は少ないのが実際です。

それぞれ一定の脳卒中予防効果が

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コーヒーもココアもお茶も、一定の脳卒中予防効果のデータは存在しています。

比較的信頼性の高いデータとしては、ココアとお茶は血管内皮機能を改善し、お茶はコレステロールを下げ、ココアはインスリン感受性を改善しています。

お茶の効能はほぼカテキンなどのポリフェノールの効果で説明され、ココアの効能はほぼココアフラボノイドで説明されますが、コーヒーについてはより多彩な生理活性物質を含み、そのうちのどれがどのように効果を示しているのか、まだ明確ではないのが実際なのです。

今日はコーヒー、お茶、ココアを比較した、主に脳卒中予防のエビデンスについてのまとめでした。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36