メニュー

2018.05.06

40代の迷える子羊たちが求める「正解」の誤謬|社内に残るか外に出るか「納得解」を求めよう

東洋経済オンライン

見方を変えれば、誰からも自由に、自分の幸せを自分の時代で作り上げることができる時代とも言えます(写真:franckreporter/iStock)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/216739?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

見方を変えれば、誰からも自由に、自分の幸せを自分の時代で作り上げることができる時代とも言えます(写真:franckreporter/iStock)

「もう偉くなれないんじゃないか」

「外でも通用しないんじゃないか」

「独立する機会を逃した! 同期のアイツはさっさと辞めて自分の道を歩き始めたのに」

仕事の責任が圧倒的に増す40代。家族の危機に見舞われている人もいる。SNSでなんとなくつながっている人とは強い絆を感じられず、「自分はどこに向かっているのか」という夢を見失いがちで、自分自身を信じることの危機にも直面する世代だ。

そんな40代の自信や自己肯定感を取り戻すことをテーマに、藤原和博氏が自身の経験なども交えてまとめた著書『45歳の教科書 戦略的「モードチェンジ」のすすめ』から、40代のリアルな悩みへの答えを一部抜粋する。

サラリーマンの最大のリスクは「上司」

Q)どうしても苦手な上司がいます。この上司がいずれ役員になっていくのかと思うと、その下でずっと働くことができるかどうか自信がありません。

A)規模の大小に関係なく、組織にいることの大きなリスクは「上司」の存在です。サラリーマンである以上、上司が間違いなく幸せの半分のカギを握っていると私は考えています。そして40歳よりも45歳、45歳よりも50歳と、年齢が上がれば上がるほど、リスクはドンドン大きくなります。

若いうちは、たとえ直属の上司と気が合わなくても、異動や配置転換で環境が変われば、新しい上司からチャンスをもらうことができます。しかし、昇進するにつれて異動できる場所は限られていき、評価を下す上司の顔ぶれもだんだん決まってきます。

そして晴れて部長になったとき、常務や専務と合わなければ、「アイツはダメだ」と烙印を押されて「終わり」。一度下された評価は二度と覆らないまま、退職までの長い時間を過ごすことになります。

組織の中で生きることを選び、上を目指す道ももちろんあります。私はその道を進むことを否定はしません。ただしそうなら、取締役にまで上り詰めることを目指すべきです。

日本の企業社会はあまりこのことに触れませんが、たとえ気心の知れた同期であっても、いっぽうが取締役、片方がただの管理職であるとき、両者の間には、身分や待遇に関する歴然とした差があります。そこまで上り詰めれば、会社人生は成功をみるのです。

しかし、そこに適性を発揮できる人が実際にはどれくらいいるでしょうか。実のところ、7~8割くらいの人は向いていないのではないかと私は思います。であるなら、もっと多様なフィールドで、自分に向いている場所に早く足を向けたほうがいいかもしれません。

「転職・独立」と「組織にとどまること」のリスクは、40代半ば以上からは、ほぼ同じと考えてもいいのではないでしょうか。

どんなに貢献しても、会社はあなたのことを記憶しない

Q)「担当部長」なる肩書の部下なし部長になってしまいました。明らかに出世ラインからは外れており、もはや同期を逆転する見込みはありません……。

A)最近は、現場にとどまりながら年俸や条件を上げる交渉をする人がいます。つまり自分の仕事の専門性を極めて、組織内の階級ではなく、ある分野でのエキスパートを目指していくというパターンです。このように、現場にとどまり、自分の力を十分に発揮する方法を考えてみるのもよいでしょう。

ただし、1つ知っておいてほしいのは、「会社は自分の人生を記憶してくれるものではない」ということ。「自分以外にこの仕事はできない」「出世して取締役になって名前を残すんだ」などと思っていても、会社は人が入れ替わっていくものですから、どんなに会社に貢献し、名をなしたと自分では思っていても、いつの間にか忘れられてしまうものです。

企業の組織やシステムというのは、収益を拡大する局面では、取り替え可能な人を求め、事業を継続していくために必要な作業を無限に標準化していきます。「自分がいないとこの会社(事業部)は回らない」と思ったところで、組織の力学は「誰でもできるように」動いているのです。創業者ですら、株を手放せば忘れ去られる運命にあります。

自分の人生を記憶してくれるのは、会社組織ではなく、家族を含めたコミュニティの方です。自分がどんなに頑張ったか、苦労をしたか、仕事ぶりはどうだったかは、自分の家族や所属するコミュニティの人たちの間に「物語」として残ります。いっぽう、組織は社員一人ひとりの業績や記録を次々に上書きし、更新していきます。

会社は人だと言われますが、組織の機能としては、人でなくシステムの維持が使命であることを頭に置いておきましょう。

市場価値を知りたければ「3人の人」から話を聞いてみる

Q)自分の市場価値がよくわかりません。

A)組織の中では上司や人事などからの評価を受けるので、自分の今の力や組織内でのポジションはどうかといったことは、だいたい判断できるでしょう。問題なのは、いざ、外に向かって一歩踏み出すとき、どこに足をかけたらいいのか、自分のポジションがわからないことです。

往々にして、組織内での自己評価と、外に出て受ける評価(自分の市場価値)は、同じ組織にいた時間が長ければ長いほど食い違っている可能性が高いです。また、「こんな人材が求められているはずだから、自分のキャリアは必要とされているだろう」という「読み」もハズしてしまう確率が高くなります。

自己評価だけで判断して市場に出るのは、かなりリスクが高いということを知っておくべきでしょう。

そこで、自分を客観的に見てくれる外部の人を探す必要があります。人材スカウト会社の人、競合他社に勤める友人、人事部の同期の3名に、書き下ろした履歴書を見せてみましょう。

スカウト会社の人は潜在的な転職可能性を、競合他社の友人は社外で自分の売りがどのくらい通用するかを、人事部の同期は会社が自分をどう評価しているかを、それぞれ教えてくれるはずです。耳に痛い指摘も受けるかもしれませんが、外の世界への「とっかかり」をどの辺りに置けばいいか、自分の「現在地」を把握できるはずです。

「運動エネルギー型の履歴書を書く」こともやってみてください。自分がどんな部署を経験し、どんな役職についたかという「位置エネルギー型履歴書」は今いる組織の中では通用するかもしれませんが、いったん外に出たら「何をやってきたのか」「何ができるのか」という運動エネルギーのほうがカギになります。

Q)会社名や肩書がなくても社会で通用するのか、自分の本当の実力が知りたいです。具体的に何をすればわかるでしょうか?

A)本当の自分の実力が知りたいなら、会社ブランドや役職ブランドが通用しない場で、むき身の自分を鍛える練習をするとよいでしょう。名刺が通用しない世界で、自分のコミュニケーション力を試してみるのです。

子どもがいるなら地域のコミュニティに顔を出すのがもっとも早いですが、被災地や途上国のボランティアに出かけて、そこで自分プレゼンの練習をしながら、名刺に頼らない人間関係のネットワークを広げていくのも1つの手だと思います。

私は東日本大震災で被害を受けた宮城県石巻市雄勝の支援を続けていますが、震災直後から支援に入った人たちは、災害によって何もかも破壊されたあとでは、名刺や肩書なんて、その場ではまったく通用しないことを痛感したと思います。そこでは、大会社の部長の肩書を持つ人よりも、たとえば炊き出しの技術を持っていたり、ボロボロになったアルバムの写真を修復できたりする人たちのほうが受け入れられたし、実際に役に立てたのです。亡くなった方に死化粧するボランティアをする人も。

私も当初、気仙沼高校の避難所で炊き出しを手伝ったとき、提供できる技術が何もありませんでした。それでも何かできることはないかと考え、子どもたちにおもちゃを配る際、ひたすら「あっち向いてホイ」をやりました。結局、「3時間続けてあっち向いてホイをやった人」としてタイトルをもらいましたが(笑)。

40代は「強制的モードチェンジ」が連続する時期

40代は、子会社への出向や突然の異動命令、あるいは自分や家族の病気、反抗期の子どもや夫婦の問題など、「強制的なモードチェンジ」が波のようにやってくる時期で、抱える問題もそれぞれ個別になってきます。


『45歳の教科書 戦略的「モードチェンジ」のすすめ』(PHP研究所)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ですから基本的に「こうすればOK」という「正解」はないと思ったほうがいいでしょう。今後40代が直面していく問題は、ほかのどの世代も体験したことのない、前例のないことなのです。

そう言うと厳しい世の中のようですが、見方を変えれば、誰からも自由に、自分の幸せを自分で作り上げることができる時代とも言えます。

そうした時代には、柔らかアタマで目の前の問題に「正解」ではなく当面の「納得解」を導く「情報編集力」がますます大事になります。存在しない「正解」を追い求めていくと、病気になる以外ないんじゃないでしょうか。

記事画像

藤原 和博:教育改革実践家

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します