2018.06.01
イライラやむくみ…月経前の不調とそれを軽やかに乗り切る方法
前回の記事では、女性の病気の専門医である片井みゆき先生に、月経前の不調とその原因について教えていただきました。
今回も引き続き片井先生に、その不調を改善するための方法をご紹介いただきます。
月経前の不調症状、改善する方法とは?
まずは前回のおさらい!
片井先生「前回の記事では、月経前の不調は、次の3つに大別されることをお話ししました。これを確認したうえで、お話を進めますね」
①治療が必要ない程度の不調を感じる(多くの女性が感じるもの)
②月経前症候群(PMS)
③月経前不快気分障害(PMDD)
「ホルモンのせい」と自覚すると少し楽になるかも?
片井先生「ここからは、月経前の不調感を和らげるセルフケアの秘訣をお伝えします。その第一歩として、月経前や月経初期の気分の落ち込み、身体の不調は、女性ホルモンの変動の影響によるものと自覚することです。
そう自覚することで『子供が言うことを聞かなくてイライラする』と子供のせいにしたり、『怒りたくなかったのに怒ってしまった。私ってダメな人間だ…』と自分を責めて落ち込んでしまうといった悪循環を減らすことができます。
症状を自覚しているならば、事前に家族や周囲に『月経前や初期は体調や気分が優れなくなる』と伝えておくことで、ある程度の理解や協力が得やすくなるかもしれません。しかし、イライラや不調で周囲との人間関係に影響を及ぼす程の場合や、PMSやPMDDに当てはまるかもしれないと思った方は、我慢をせずにまずは婦人科や女性科を受診してみてください。それによって、適切なアドバイスや治療、症状に応じて内科やメンタル科への紹介を受けることが可能になりますよ」
症状に合わせて生活指導や薬などで治療する
片井先生「PMSやPMDDの症状や背景は個人差が大きいので、外来にいらっしゃった患者さんには、まず症状について詳しく伺ってからそれぞれの症状に合わせた治療を行います。
軽症から中等度のPMSの場合は、生活指導やカウンセリングなどから開始し、PMDDや重度のPMSの場合には主に薬での治療が選択されます。薬には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)や、排卵抑制のための低容量ピルなどがあり、その方の症状の程度や状況、ご希望に応じて使われます。
対症療法の一例としては、例えばむくみがひどい方であれば、むくみを改善する五苓散(ごれいさん)という漢方薬などを処方します。また気分の落ち込みがひどいような場合は、専用のお薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:SSRIs)によってコントロールします。
人によって症状は様々なので、そこにひとつひとつ対処していくイメージです。
治療によって症状は改善します」
自分の身体のリズムを把握しよう
片井先生「女性は、男性とは異なり、約1ヵ月の月経周期の間で女性ホルモンの分泌量が劇的に変化します。それによって心身のバランスに多かれ少なかれ影響が出ることは、ある意味、自然なことなのです。
だからこそ、自分の身体のリズムを知ることはとても大切です。特に月経前の不調が重度な方の場合は、例えば重要な予定は月経前ではない時期にズラすことで、ストレスを軽減することができるかもしれません」
食事や睡眠を正しくとることも大切です
片井先生「前回もお話ししましたが、PMSやPMDDの発症には女性ホルモンの変動、セロトニンやGABAという物質の神経系への関与といった体内での要因に加え、生活環境や心身のストレスなどの外的要因も関与するとされています。そのため、バランスのよい食事、十分な睡眠や休息をとることで症状が和らぐ可能性はあります。
質の良い食事や睡眠、適度な運動やリラックスできる時間を持つことは、心身の健康全般に繋がりますが、やはりPMSやPMDDの軽減にとっても大切なポイントです」
身体のリズムと向き合って不調を乗り切る
いかがでしたでしょうか?
女性は女性ホルモンの周期的な変動による心身の影響があり、それを理解して上手に付き合っていくことが、身体のリズムと向き合って不調を乗り切るための第一歩だと教えていただきました。
最近は、自分の身体のリズムを把握するような女性向けのアプリがありますので、そういったものを利用するのも手ですよね。
まずは自分の身体と、今一度向き合ってみましょう。
(取材・文/KenCoM編集部)
片井みゆき(かたい・みゆき)先生
内分泌代謝内科専門医、女性ヘルスケア専門医(日本女性医学会)、甲状腺専門医、糖尿病専門医。信州大学大学院医学博士課程修了。ハーバード大学医学部フェローを経て、信州大学医学部附属病院 加齢総合診療科・内分泌代謝内科へ。現在は東京女子医科大学本院 総合診療科・女性科(女性内科)にて女性の専門外来を担当している。
参考文献
『女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編 2016年度版 日本女性医学学会 編』(金原出版)