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2018.03.30

これで治る!痔の治療編〜知って得するおしりの話②〜

KenCoM公式ライター:緒方りえ

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痔とはどんな病気なのか、前回までの説明で理解できたと思います。
できることなら痔とはサヨナラしたい!でもそう簡単に治らないのでは?
と考えている読者のみなさんのために、痔の診察と具体的な対処法について説明いたします。

今回も、杏林大学医学部付属病院の消化器・一般外科助教授である竹内弘久先生にお話を伺いします。

■前回の記事はこちらで確認!

予習すれば安心!診察でやること

いざ病院に行ってみたものの、おしりを見せるのは恥ずかしい!できれば問診だけで薬を出して欲しいと考えてしまう人も多いと思います。初めて受診する場合は尚更です。
しかし、自分は痔だと思っていたのに実は違う病気だったということも少なくありません。医師が見たり触ったりすることで見つかる病気は多く、勇気を出して診察を受けてみることをおすすめします。

診察でやること&受診のコツ!

恥ずかしい部分を見せる必要がある痔の診察は、不安や緊張を感じてドキドキすることでしょう。その気持ちを少しでも抑えてスムーズに診察を受けられるように、一般的な診察の内容を以下にまとめましたので参考にしてください。

【痔の診察は何をするの?】

① 問診:いつどんな症状?大便の状態は?体重の変化は?がんになった家族は居ますか?などの質問をします。
② 視診:肛門周囲を観察します。基本的には、診察室のベッドに横向けに寝てパンツを膝あたりまで下げます。ほとんどの病院はタオルなどをかけてくれるので、必要以上の露出や寒さはありません。
また、「肛門鏡」という器具で肛門を少しだけ広げて観察することもあります。

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③ 指診:潤滑ゼリーを塗った指で肛門の中を触診します。口で呼吸をしながら、肛門を広げるイメージで軽くいきむとスムーズに触診できます。
④ 治療方針の説明と同意:痔の種類と程度、生活習慣の改善方法、薬の使い方などの説明をします。
※異性のドクターが恥ずかしい場合は、あらかじめ相談すると良いです。

こんなに進んだ!検査と手術の最新情報

痔が一過性で治ったと思っていても肛門の違和感が残る、便が細くなった、便に血が混ざった等いつもと違うと気付いたら必ず病院に行きましょう。
実は、痔だと思っていたら「大腸がん(結腸がん、直腸がん)」だったという場合もあります。

ここでは病院で行われる検査と手術についてご説明します。

大腸内視鏡検査について

肛門内の痔やポリープ、がんなどの状態を観察するために行う検査。肛門から内視鏡カメラ(先端にCCDカメラが付いた細い管)を入れて、テレビカメラで肛門内を観察することができます。
病院によって検査前の準備は多少異なりますが、前日から下剤を飲んで腸内を空っぽにすることと食事制限が必要になります。

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管をおしりに入れるのは痛そうだと想像するかもしれませんが、現在は機械の進歩もあり痛みはほとんどありませんので安心してください。(痛みなどのリスクや検査の手順など、疑問点は必ず医師に質問しましょう)
また、腸の奥まで観察する必要がないと医師が判断した場合は、直腸(肛門入ってすぐ)やS状結腸(直腸の少し奥にある便が長い間貯留しやすい場所)までの検査に留めます。
腸に起こるがんの約7割は直腸やS状結腸で発生すると言われています。

手術について

痔の手術はさまざまな種類があり、医師の方針によっても入院期間が異なります。ここでは、代表的な手術方法について一例を紹介します。

① 痔核が大きくなり、肛門の外に出てしまう

もっとも一般的な方法は「痔核結紮(けっさつ)除去術」。
これは痔の根元を縛って切り取ります。現在では肛門内の粘膜側の傷は縫い、皮膚側はそのまま残すのが主流になってきています。糸は自然と溶けるので抜糸の必要もありません。
3日〜2週間の入院です。

取り入れている病院が多くなってきているのが「ALTA(アルタ)療法」。痔核に薬剤を直接注射することでかたく縮小させ、粘膜に癒着・固定します。痔核を切ることなく症状(出血したり痔核が肛門の外に飛び出すこと)を改善できる画期的な方法で、皮膚を直接傷つけないので日帰りも可能となりました。

② 裂肛を繰り返して潰瘍やポリープができ、肛門が狭くなってしまった

狭さの程度によって選択がかわります。指を挿入しても肛門が押し広げられないほど狭い場合は、「LSIS法」を行います。これは縮んでしまった内肛門括約筋(排便の時に肛門を広げたり閉じたりする筋肉。自分の意識では動かせない)を浅く切開して肛門を広げる方法で、日帰りで済みます。

また、裂肛部分や肛門にあるポリープなどを除去してからその部分に正常な肛門皮膚をスライドさせてくる「SSG法」もあります。この場合は1週間程度の入院が必要になります。

③ 痔ろうは薬では治らないので手術が必要

痔ろうを放置すると「痔ろうがん」になってしまうこともあるので必ず大腸・肛門外科がある専門病院へ行きましょう。

比較的浅い痔ろうの場合は「ろう管切開開放術」が行われます。トンネル部分を全て切り開いて除去し、自然と肉が盛り上がって治るのを待ちます。こちらは再発が少なく、日帰り〜2週間程度の入院です。

痔ろうのトンネルが複雑化し下痢の度に細菌が入って炎症してしまうような場合は、「括約筋温存術」を行なってトンネルの内側をくり抜くように除去してから、溶ける糸で縫います。1〜2週間の入院です。

予防と早期治療が痔のベストアクション

痔という病気は「早期に治療を始めること」が大切です。自分の痔はどの痔に当てはまるかを見極め、適切な対処をしましょう。
また近年は食事の欧米化が進んだこともあり、年齢と共に大腸がんなどの恐ろしい病気が隠れている割合も上がってきています。

一番理想的なのは、定期的な検査と痔の治療を併用すること。病院を上手く活用し、がんなどの病気を否定した上で痔の治療に専念しましょう。
次回は、痔にならないための6ヵ条をご紹介します。

■痔の予防法はこちらから!

竹内 弘久(たけうち・ひろひさ)先生

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1997年杏林大学医学部卒業。2015年医学研究科博士号学位取得。杏林大学医学部付属病院において診療を行うとともに、同病院外科教室(消化器・一般)において研究に従事。現在は杏林大学医学部助教を務める。日本外科学会専門医、日本外科学会指導医。

著者プロフィール

■緒方りえ(おがた・りえ)
1984年群馬県生まれ。20代から看護師として活動をする傍ら、学会への論文寄稿や記事の作成なども行う。2015年独立しフリーの編集者として活動。2017年より合同会社ワリトを設立し代表社員に就任。医療系を中心に、旅行、雑貨など幅広いジャンルでフリーライター、フリー編集者として活動中。

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