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2018.03.07

花粉症とインフルエンザの意外な関係?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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くしゃみ、発熱、鼻づまり…。花粉症とインフルエンザの初期症状は似ているので、どちらか判断がつかない場合もありますよね。
実は花粉症の方はインフルエンザにもかかりやすいという検証結果があるのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「石原藤樹のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2018年のClin Exp Allergy誌に掲載された、花粉症(アレルギー性鼻炎)とインフルエンザとの関連についての、ちょっと興味深い研究報告です。

▼石原先生のブログはこちら

インフルエンザと花粉症の関係とは?

鼻詰まり等、症状が同じだけにどちらか判断が難しいこともある

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インフルエンザはまだまだ流行が続いていますが、その一方で花粉症の症状が出始めた方も、そろそろ増えて来ています。

この時期になると、鼻水やだるさや咳が出て、それが花粉症であるのかインフルエンザを含むかぜであるのか、区別が付かないというような話を、患者さんから聞くことが良くあります。

花粉症(アレルギー性鼻炎)は、鼻や目の粘膜に起こるアレルギー性の炎症ですから、鼻や咽頭の粘膜にウイルスが感染して起こるかぜとは、基本的に全く別の病気ですが、どちらも鼻の粘膜には炎症性の変化が起こる訳ですから、その症状には同じ部分があります。

また風邪をひくと、アレルギー症状が悪化して、鼻づまりなどが酷くなることもありますし、どこまでがどちらの症状であるのか、判断が難しいケースも往々にしてあるように思います。

花粉症の方は、インフルエンザにもかかりやすい?

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ここで1つの疑問は、花粉症になっている人は、インフルエンザや風邪にも罹りやすいのではないか、ということです。

インフルエンザウイルスや、ライノウイルスのような風邪の原因ウイルスは、鼻の粘膜に付着してそこから身体に侵入しますから、その粘膜での防御機能が、まずかぜに罹らないためには重要な要素となります。

その肝心の防御機能が、アレルギー性の炎症で障害されていれば、おのずとかぜにも罹りやすく、重症化しやすいのではないか、という推測が可能です。

それは本当でしょうか?

鼻粘膜細胞にインフルエンザウイルスを感染させて検証

ウイルス防御のカギは3型インターフェロン

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アレルギー性鼻炎を含む慢性の呼吸器の病気では、ウイルス感染に対する免疫機能が低下している、というデータが複数報告されています。
ただ、ウイルス感染に対する身体の免疫の最前線である、鼻粘膜の防御機能が、どのように障害されるのかについては、あまり明確なことが分かっていませんでした。

最近の研究により、免疫細胞の武器とも言うべきインターフェロンという物質のうち、3型インターフェロンが粘膜の免疫において、大きな役割を果たしていることが、徐々に明らかとなりました。

花粉症の方は、3型インターフェロンの産生が低下するため感染が起こりやすい

そこで今回の研究では、鼻中隔の手術により採取された、人間の鼻粘膜の細胞を利用して、A型インフルエンザウイルスに感染させ、粘膜でのインターフェロンの産生能を、アレルギー性鼻炎の粘膜と健常な粘膜とで比較したところ、感染させたA型インフルエンザウイルスの遺伝子量は、健常粘膜と比較してアレルギー性鼻炎では多く、その一方で3型インターフェロンの産生量は、アレルギー性鼻炎では低くなっていました。
そして、3型インターフェロンの投与により、インフルエンザウイルスの遺伝子量は減少が認められました。

このように、花粉症などのアレルギー性鼻炎においては、粘膜の感染に伴う3型インターフェロンの産生が低下し、それによりA型インフルエンザウイルスの感染が、起こりやすくなることが、粘膜細胞を培養した実験ではほぼ実証されました。
アレルギー性鼻炎では、その重症化も起こりやすくなることが、ウイルス量の増加からは推測されます。

インターフェロン治療で、花粉症患者も風邪予防ができるかも

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花粉症では風邪に罹りやすくなり、風邪が重くなる可能性が高くなることが、実験からは示されているのですが、それがインターフェロン治療で改善する、という知見は興味深く、それがすぐに風邪の予防に結び付く、という訳ではありませんが、今後の研究の進歩によっては、それに近いことが近い将来可能となるかも知れません。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36