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2017.10.26

定期検診こそ完治のカギ!子宮頸がんってどんな病気?

kencom編集部

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30~40代の女性を中心に罹患することが多いと言われている子宮頸がん。早期に発見することで、子宮を全摘出しなければならないリスクを格段に減らせる疾患だと、ご存知でしたでしょうか?

実は、その正しい認識や早期発見の手段は意外と知られていません。
そこで、子宮頸がんとは一体どんな病気で、どう対処すべきなのか、婦人科がんの権威である国立がん研究センターの加藤友康先生にお話を伺ってきました。

加藤友康(かとう・ともやす)先生

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国立がん研究センター 中央病院 婦人腫瘍科長(希少がんセンター 併任)

1983年東京医科歯科大学医学部卒業。1985年国立がん研究センター婦人科に入局。がん専門病院で数多の経験・研究を積み重ねてきた、婦人科がんの名医。手術治療を専門としている。モットーは「がんには厳しく、患者さんには優しい手術」。著書多数。日本産科婦人科学会 専門医・指導医、日本婦人科腫瘍学会 専門医・指導医、日本臨床細胞学会 細胞診専門医・教育研修指導医、がん治療認定医、女性ヘルスケア専門医。

子宮頸がんは「頸部の入り口付近にできるがん」

婦人科がんで最も多いのが子宮がんです。子宮がんは、一般的に子宮体がん(子宮内膜がん)と子宮頸がんの二つに分けられます。
子宮体がんは、内側の胎児が宿る場所にできるがん、子宮頸がんは、膣の奥の突き当たり部分(頸部)にできるものです。
妊娠中、体部は胎児のベッドの役割をするのに対し、頸部は粘液でふたをしてウイルス感染を防いだり、早産を防ぐ役割をする部分になります。(下イラスト参照)

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子宮頸がんになりやすいのは一般的に30~40代の女性で、がんになると頸部が赤くただれていきますので、性交渉の際に不正出血をして気が付く方もいらっしゃいます。

ちなみに、女性検診の一種である子宮がん検診というのは、子宮頸がんの検査のことです。
約20年ほど前に、作家の堺 典子さんが子宮検診を受けていたのに子宮体がんになってしまったことを受けて、「子宮は一つ、子宮がんは二つ」という啓蒙のためのキャッチコピーが生まれたという背景もあります。
女性の方には、特に知っておいてもらいたいですね。

発生原因は「性交渉によるウイルス感染」

子宮頸がんの約95%は、ヒトパピローマウイルス(以下HPV)からの感染によるもので、遺伝や食事からではなく、外的な要因です。ただし、HPV感染=子宮頸がんではありません。
性交渉経験のある女性の約8割は、実は一過性で感染していますが、多くの場合は感染しても自己免疫で排除されます。
うち10%が持続して感染、その中の10%が異形成(※)という細胞が変化する状態、さらに段階を経て上皮内がんになり、その後子宮頸がんになります。

しかし、異形成や上皮内がんが見つかっても、自然に正常な状態に戻る人もよくいます。進行してしまう人との差は、免疫機能の高さが関係しているのではと言われていますが、まだはっきりとはわかっていません。
進行は、感染から発症までに早くても3~5年、一般的には10年ほどかかると言われているため、子宮頸がんは定期的に検診を続けていれば早期の段階で見つけることができるわけです。
あまり知られていませんが、喫煙も子宮頸がんの危険因子の1つです。HPV感染が確認された場合、控えることをオススメします。

※細胞が正常では見られない形態に変化してしまう状態。形態変化の一種。

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また、男性がHPVを持っている場合ですが、がんになる可能性は女性に比べて1/25程度と極めて低いのです。
ただし、肛門での性交渉で肛門がん、オーラルによる性交渉で喉にポリープができることもあるので注意が必要です。

HPVは皮膚や粘膜に感染するウイルスで、約150種類のうち腫瘍を作るのが15〜16種程度います。その中でも特にがん化を促すのが16型、18型と言われる種類。
HPVが感染する範囲は広いため、コンドームでは予防できないと思ってください。

子宮頸がんの診療と治療方法

異形成の段階であれば、細胞診と組織検査による経過観察をしていきます。がんが疑われるレベルや上皮内がんであれば、円錐型に切除することで病変を取り除くことが可能です。
しかし、それ以上の進行が見られ子宮頸がんになってしまうと、リンパ節に転移する可能性も高く、全摘出が必要になります。
近年では、妊娠したかもしれないと思った人が婦人科に行って、異形成が見つかったり、頸がんを罹患していたことがわかったという事例が多いです。異形成でしたら急速に進むものではないので、子宮を残して治療できる可能性が高く、妊娠もできます。
上皮内癌の場合は経過を見ながらの妊娠となり、頸部だけを切除する方法もあります。

しかし、さらに進行してしまっている場合は、中絶をして子宮を全摘出という場合もありますので、これから妊娠・出産を考えている女性はやはり検診を定期的に受けるよう、強くおすすめします。

20代以降は早期発見を可能にする検診へ

実は子宮頸がんは、若いうちにワクチンを接種することである程度予防することも可能です。
2013年4月から国の推奨によりワクチン接種が無料でしたが、副反応があることが問題になり、現在では予防接種実施医療機関への自己受診が必要となりました。
また、性交渉を経験する前に接種する必要があるため、中学1年生での接種が一般的になります。

昨今、性交渉の初体験年齢が若年化していることに伴い、子宮頸がんの発症年齢も若年化し、20代でも増えています。もし予防接種をお考えなら早めに済ませておくとよいでしょう。

すでに性交渉の経験がある女性は、定期的に検診を受けてください。子宮頸がんの死亡率は検診を受けることにより下がることが実証されています。
検診頻度は、20歳以上の方は2年に1回、不特定多数の男性と関係があるなど、性交渉にアクティブな方などは1年に1回の検診をおすすめします。

検診は、市区町村が費用を一部負担してくれる対策型がん検診から始めるのがいいでしょう。検診自体は、市区町村が勧める街の病院や検診センターなどで受けていただければ問題ありませんが、がんに詳しい産婦人科医さんがいらっしゃるところを選べたらよりいいですね。

検診は、綿棒やブラシなどで頸部をこすって細胞を採取し、検査します。
内診台での検診が恥ずかしいからと、自己採取をされる方もいるのですが、ほとんどの場合が頸部まで届いておらず、正しく検査することは難しいのが現実です。自分自身の安全のためにも、ぜひ受診するようにしてください。
また、検査後に精密検査が必要と判断された方は、専門の大きな医療機関で検査することができます。

子宮頸がんは早期発見・早期治療が重要

子宮頸がんは、妊娠・出産を考えた女性にとっては怖い病気に映るかもしれませんが、定期的な検診により早期に発見しやすい病気でもあります。
早期の段階で適切な処置を受けることで治る病気でもありますので、女性の方はまずは意識して検診に行ってみましょう。

また、オーストラリアでは女性だけでなく、男性に向けてもHPVワクチンを提供するなど、性別を問わず、子宮頸がん撲滅に動いています。
男性も、女性だけの問題と思わず、大切なパートナーと一緒に総合的ながん検診を受けてみてはどうでしょうか?

取材協力

参考文献

取材・文・撮影 KenCoM編集部

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