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2017.10.25

日本人でもコーヒーの健康効果は有効か【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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北風が冷たい日には、温かいコーヒーが飲みたくなりますよね。コーヒーには、実は死亡リスクを低下させる健康効果があるのだそうです。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「石原藤樹のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、今年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、コーヒーの摂取と死亡リスクとの関連についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

コーヒーに健康効果があるってホント?

コーヒーの抗酸化作用を認める報告は多々ある

コーヒーはカフェインを含み、常用性のある飲み物ですが、その一方で抗酸化作用のある生理活性物質を、多く含むという報告などもあり、また最近ではコーヒーを飲む人の方が、総死亡や心血管疾患のリスクが低下する、という報告が複数存在しています。

その代表的なものは、2012年のNew England…誌の論文で、以前記事でご紹介したことがあります。(※2 ※3)

40万人以上の健康調査において、コーヒーを沢山飲む人の方が、1割程度総死亡のリスクが低下した、という結果になっています。
日本の疫学データも2015年に論文化されていて、例の有名なJPHC研究の解析ですが、矢張り総死亡のリスクが1から2割低下した、とする結果になっています。

既存の研究は白人種のものが多く、人種によって効果に差があるかは不明

こうした知見からは、コーヒーには何らかの健康保持作用が、あるのではないかということが示唆されますが、その実態は必ずしも明らかではありません。

また、これまでの大規模な研究はその多くが白人種もので、上記のように日本でのデータもありますが、コーヒーの死亡リスク低下作用に人種差があるかどうかも、明確なものとは言えません。

コーヒーの摂取量と死亡リスクとの関連を検証

アメリカで18万人超の4人種を、平均16年かけて観察

今回の研究はアメリカの国立癌研究所の主導によるもので、ハワイとロスとカリフォルニアにおいて、45から73歳の、白人種以外にアフリカ系アメリカ人、ハワイの先住民、日系アメリカ人、ラテンアメリカ人種をトータルで185855名登録し、平均で16.2年の経過観察を行って、コーヒーの摂取と死亡リスクとの関連を検証しています。

観察期間中に58397名が死亡し、喫煙などの関連する因子を補正した結果として、コーヒーを飲む習慣のない人との比較において、毎日1杯飲む人は12%(95%CI;0.85から0.91)、2から3杯飲む人は18%(95%CI;0.79から0.86)、4杯以上飲む人は18%(95%CI;0.78から0.87)、それぞれ有意に死亡リスクが低下していました。

コーヒーの摂取量が多いほど、死亡リスクが下がるという結果に

この結果にはカフェインを含むコーヒーと、カフェインレスのコーヒーでは差はなく、ハワイの原住民ではコーヒーの摂取と、その後の死亡リスクとの間に有意差がありませんでしたが、それ以外の4人種については、個別にも同様の傾向を示していました。

具体的な死因としては、心疾患、癌、呼吸器疾患、脳卒中、糖尿病、腎臓病のそれぞれにおいて、コーヒーの摂取量が多いほど、そのリスクが低い傾向が認められました。

適度に楽しむならコーヒーは健康的な飲み物

このように、コーヒーの摂取量が多いほど、死亡リスクが低いという現象は、今回も確認され、ほぼ人種差に関わりなく同様の現象が認められました。

コーヒーには有害な作用もないとは言えませんし、どれだけ沢山飲んでも良いとは言えませんが、適度なコーヒーの摂取が決して健康の悪い習慣ではないことは、ほぼ確認されたと言っても良いのではないかと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36