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2017.10.24

近年急増中の大腸がんはどんな病気?早期発見で治せるのか?【大腸がんの専門家・上野先生インタビュー#1】

kencom公式ライター:桶谷仁志

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大腸がんは、罹患者数・死亡者数ともに急速に増加しており、国立がん研究センターが発表した「最新がん統計」では、部位別の死亡者数では男性で3位、女性で1位となっている。これほどまでに増えてきている要因を探るべく、がん研有明病院の上野雅資先生(消化器センター消化器外科大腸外科部長)にインタビュー。大腸がんの特徴とがん検診のポイントについて伺った。

大腸がんはどんな病気?

治療がしやすい「紳士的ながん」

――大腸がんを発症する人が増えていますが、どんな要因があるのでしょうか?

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いくつかの要因が考えられます。ひとつ目は、寿命が延びたこと。ふたつ目は食の欧米化です。大腸がんは欧米では以前から多い病気だったため、ここ何年かで日本で発症する方が増えてきたのは、ライフスタイルの変化が大きいと考えられます。

みっつ目は、一般的に馴染みが薄いため、早期発見に至っていないという点です。かつて日本におけるがんのイメージは、亡くなる方の多かった胃がんかと思います。そのため、大腸がんを発症した方が先祖におらず、自分とはあまり関係ないだろうと考えている人が多いのではないでしょうか。日本では10数人(男性11人、女性14人)に1人の確率で大腸がんに罹患していることを考えると、大腸がん検診の受診率が40%程度なのは、たいへん低い数値といえるかと思います。

さらに、がん検診で再検査の通知がきても、精密検査を受けられない方も一定数います。大腸がんという病気の拡大に対して、多くの人の意識がついていけてないのだろうと考えられます。

――なるほど。治療はできるのでしょうか?

見つけるのもそう難しくはないですし、見つけさえすれば、かなり進行してしまっても治療ができる「紳士的ながん」なのです。例えば、ステージⅠは97%、Ⅱは90%が手術だけで完治します。ステージⅢでも80%以上が治ります。ステージⅣで、大腸から肝臓や肺に遠隔転移していても、30%ほどの方が治るのです。「がんは治らない」というネガティブイメージだけが進行してしまい、検診を受けない、もしくは検診で精密検査となっても動かないとあっては非常にもったいない。

早期発見を考えるなら検診を活用するのが第一です。

大腸がん検診はいつ受けるべき?

40歳を越えたら大腸内視鏡検査を受けよう

――大腸がんの検診で一般的なのは便潜血検査です。この検査で早期発見できるのでしょうか?

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便潜血検査については、乳がんのマンモグラフィーや胃の内視鏡のように大腸を見ているわけではないので、発見精度の観点からみると限界があります。大腸は直径5センチくらいありますから、腫瘍が大きくならないと、中で便でこすれて出血が起こらない可能性があります。

便潜血で陽性反応が出ている場合、がんが進行していることがありますが精密検査に訪れない方が3割ほどいらっしゃいます。「怖い」だったり、若い方だと「痔かな?忙しいから後にしよう」と思われたりするようです。

CTを使った検査もありますが、でっぱりの出ない表面型がんは見つけづらく、多少の放射線被爆があるのがネックです。

そうなると多少高額にはなりますが、大腸内視鏡検査を受けるのが現状は一番確かです。

―― 大腸内視鏡はどのような頻度で受けるべきでしょうか?

40歳を越えたら1度受診したほうがいいでしょう。その際に、異常ナシとされた方は、2~3年に1回受診すればいいでしょう。大腸がんの前身であるポリープが発見された方の場合は、手術してとった後、再発リスクの観点から年に1回は大腸内視鏡を受けるべきです。

他にも受けておいたほうがいいと思われるのは、大腸がんのリスクを高めると言われる糖尿病のある方です。生活習慣においては、「肥満」「たばこ」「運動不足」「アルコール」「赤身肉・加工肉」も関連性があるとされているので、40歳を越えたら大腸内視鏡を受けて、自分の大腸がどのような状態なのかをチェックするのは意義があります。

他にも大腸がんの3~6%は家族集積性「リンチ症候群」があるといわれています。家系として大腸がんを発症される方が多い場合は、患者さんご家族含めて遺伝子検査を行い、発症リスクをみます。もし、リスクがあると分かったら定期的に大腸内視鏡の検査をしましょう。

大腸がんの前身・大腸ポリープとは?

「大腸ポリープ」は良性であってもがん化する可能性がある

――ポリープを切除しても毎年、大腸内視鏡検査を受けるべきなのでしょうか?

大腸のイメージ。がんがどこにできるかは分からない

大腸のイメージ。がんがどこにできるかは分からない

大腸内視鏡を肛門から挿入し、大腸の粘膜の状態をモニターカメラで調べます。そこで発見されるのが、大腸がんの前段階といわれる「大腸ポリープ」です。これは、いずれがんになることが分かっているため、必ず取らなければなりません。仮に良性で切除をした場合でも、また別の場所にできている可能性があります。

その後「ポリープを取ったから安心」と、しばらく検査を受けずにいた患者さんが、大腸がんになって訪れるケースがあります。「大腸がん」は腸全体にできるものですので、1度ポリープができたということは「できやすいのかもしれない」と注意したほうがいいですね。

内視鏡と聞くと怪訝な顔をされる方がいますが、今は非常に機器も技術も進歩したので、患者さんの負担はぐっと抑えられるようになりました。

――大腸内視鏡検査というと検査中苦しむイメージがあります。

イメージです

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当院の検査室では、大腸内視鏡の平均検査時間を出していますが、最近では挿入の平均時間は5分ほど。それくらい短時間で、大腸の奥まで内視鏡を挿入し、大腸全体の粘膜を検査することが可能になりました。私が医師になった20年以上前には、内視鏡の操作性が悪かったため、職人技のような技術が必要でした。現在は大きく様変わりして、苦痛は少ないし、穿孔などのリスクも非常に低い検査になっていますよ。

便潜血検査に加えて大腸内視鏡検査も検討してみよう

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大腸のがん検診は便潜血検査が主流だ。ところが、この検査では早期の大腸がんは発見しづらく、精密検査のアラートが出ていても医療機関にかからない方が一定数いるということが分かった。
「仮に早期の大腸がんだとすれば、見つけられれば治療する方法はあります。もし便潜血検査で陽性となっていて、便が出づらいなと感じられたら早めに医療機関に行ってください」とアドバイスをくれた上野先生。

大腸内視鏡の技術と機器は急速に進歩し、短時間で苦痛も少ない。自費診療の人間ドックでは2万円前後の費用が必要だが、40歳を過ぎたらぜひとも考慮してほしい。

上野雅資(うえの・まさし)先生

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がん研有明病院・消化器外科・大腸外科部長

【プロフィール】
専門は消化器癌とくに大腸癌の外科治療。消化器癌手術は約3000例、うち腹腔鏡大腸癌手術は約1500例を施行。
1983年 金沢大学医学部卒業、1987年 金沢大学がん研究所・外科にて学位取得。1987年 癌研究会附属病院(現・がん研有明病院)に奉職。2011年より現職。

資格:日本外科学会指導医・日本消化器外科学会指導医・日本大腸肛門病学会指導医

取材協力

参考文献

<著者プロフィール>

■桶谷 仁志(おけたに・ひとし)
1956年北海道生まれ。早稲田大学卒。20代半ばからトラベルライターとして国内のほぼ全県と海外30数カ国に取材し、雑誌、新聞等に寄稿。2000年には副編集長として食のトレンド雑誌「ARIgATT」を企画、創刊。03年から雑誌「日経マスターズ」(日経BP社)で最新医療を紹介する「医療最前線」を約3年間、連載。日経BPネット「21世紀医療フォーラム」編集長も務める。現在は食、IT、医療関連の取材を幅広く手がける。著書に『MMガイド台湾』(昭文社)『パパ・サヴァイバル』(風雅書房)『街物語 パリ』(JTB)『乾杯! クラフトビール』(メディアパル)など。

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