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2017.10.14

胃がんの約70%が治る?発見から治療の知識【胃がんの専門家・比企先生インタビュー#2】

KenCoM公式ライター:桶谷仁志

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国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターによると、これまでの統計から見た2017年度の胃がん罹患予測は男性1位、女性3位となっている。しかし、胃がん検診の受診率は男女ともに5割を切っているのが現状だ。
前回に続き、がん研有明病院の比企直樹先生(消化器センター消化器外科胃外科部長/栄養管理部部長)にインタビュー。ABC検診やピロリ菌検査によって、胃がん発症リスクがあると診断された後に受診すべき、『内視鏡検査』を中心にお話を伺った

胃がんの初期症状で、胃痛や吐き気などは無い

胃がんリスクが高いと分かったら定期的に検診を受けよう

――胃がんになったら、どんな初期症状があるのでしょうか?

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基本的にがんというのは、症状が表面に出ません。胃がんの場合も、胃痛・吐血・吐き気・むかつきといった症状はあまり無く、これらは潰瘍もしくは胃炎によるケースがほとんどです。そのため、「症状が無いから胃がんではない」という認識は大きな間違いです。

胃がんの診断をすると、「信じられない」と驚かれる患者さんは多くいらっしゃいます。症状がないからこそ、現在では早期がんを見つけるなら内視鏡による精密検査がベストです。もし「ABC検診」で要精密検査となった人、ピロリ菌除去をした人であれば、精密検査をし、がんが無かったとしても、1年に1度は内視鏡の検査を受けたほうがいいと思います。

――潰瘍や胃炎で精密検査をしてみたら、早期がんが見つかることもあるといいます。

イメージです

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このケースは、がんの周りに潰瘍や胃炎ができたといった場合です。潰瘍や胃炎の症状が気になって受診した際に、念のため内視鏡で細かく検査をしておこうとなって、偶然早期の胃がんが見つかることもあります。

診断されたらどうする?ステージとは何を見ている?

診断で大切なのは「深さ」と「転移」

――胃がんと診断されたらどんな治療をするのでしょうか?

※参考文献より

※参考文献より

胃がんは、進行度に合わせた治療を行います。ここで医師が見ているのは、がんの深さとリンパ節への転移の程度で、Ⅰ期からⅣ期までのステージに分類します。
胃の壁は、バームクーヘンのような層構造になっています。内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜の5層になっています。転移が無い場合、がんは浅いほど症状が軽くなるため、内視鏡で粘膜だけをとって治療することができます。これは胃がんの中でも1番軽い治療で、全身麻酔がなく入院も1週間程度です。

注意すべきはリンパ節への転移です。

――がんの転移とはどのようなことが起きているのでしょう?

胃の周りのリンパ節は、簡単に言ってしまえば、細菌やがん細胞と戦うリンパ球の基地のようなものです。リンパ球ががん細胞に負けると、転移するという仕組みです。そして胃がんの場合、転移の診断が非常に難しい。CT検査やPET検査(注)でも陽性反応が出づらいのです。転移がはっきり分かるぐらい腫瘍が大きくなっていたら、かなり進行した状態になります。

例えば、これまでの統計から見て、リンパ節転移の可能性が10%ならどうするか?ということです。広がりやすい2cm以上の未分化がんや深い胃潰瘍がある場合は、リンパ節転移の可能性は高くなります。そのため、転移がまだはっきりと分からなくとも、”少しでも転移の可能性があるなら、粘膜からリンパ節まで全部とって治す”というのが、胃がんの外科的な治療の考え方なのです。

(編集部注:PET検査とは特殊な検査薬でがん細胞に目印をつけ、がんの早期発見を目的とした検査)

胃がんが治る確率とは?

胃がん全体で約7割、早期胃がんなら約9割以上

――最も気になる「治る」ことについてはいかがでしょうか?

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もし万が一、胃がんと診断されたとしても、ステージを問わず胃がん全体の約7割は治ります※。早期胃がんに関して言うなら、適切な治療を行えば95%治ります。リンパ節転移がなければ、より可能性は高まります。ネガティブイメージをお持ちの方が多いのですが、胃がんは治すことができる病気なのです。

しかし、外科的な手術が難しいのが「遠隔転移」が認められた場合です。これは肝臓や肺、脳などの他の臓器やリンパ節への転移のことで、遠隔転移が確認されるとステージⅣとなり外科的な手術ができません。そのため、抗がん剤などを使った化学療法に切り替えることになります。さまざまな新しい化学療法の選択肢も出てきています。

決して悲観的になりすぎず、可能性があるということを覚えておいてください。

(※2016年1月に国立がん研究センターより公表された、10年生存率のデータを元にしています)

仮に胃がんが見つかっても術はある

がん研究はめざましく進展し、検査から治療まで新たな手法が次々と生まれている。例えば胃がん検診では、細くなったファイバースコープや麻酔によって痛みが抑えられたり、鼻からの内視鏡検査も導入されたりと、以前よりも楽に検査ができるようになった。さらに、拡大内視鏡などの精密な画像技術により、以前より早期がんの診断能が進歩している。

今後の更なる発展を期待しつつ、がん検診を最大限に活用することが私たちのベストプラクティスだ。

比企直樹(ひき・なおき)先生

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がん研有明病院消化器外科胃外科部長・栄養管理部部長・機器開発センター長兼任

【プロフィール】1990年 北里大学医学部卒業。1999年 東京大学大学院医学系研究科(外科学専攻)修了後、東京大学医学部付属病院胃食道外科助手などを経て現職。日本内視鏡外科学会技術認定医、日本外科学会指導医、日本消化器学会指導医、日本がん治療認定医療機構日本がん治療認定医、日本静脈経腸栄養学会理事。

取材協力

参考文献

比企直樹 『新版 よくわかる最新医学 胃がん』 主婦の友社(2017年7月)

<著者プロフィール>

■桶谷 仁志(おけたに・ひとし)
1956年北海道生まれ。早稲田大学卒。20代半ばからトラベルライターとして国内のほぼ全県と海外30数カ国に取材し、雑誌、新聞等に寄稿。2000年には副編集長として食のトレンド雑誌「ARIgATT」を企画、創刊。03年から雑誌「日経マスターズ」(日経BP社)で最新医療を紹介する「医療最前線」を約3年間、連載。日経BPネット「21世紀医療フォーラム」編集長も務める。現在は食、IT、医療関連の取材を幅広く手がける。著書に『MMガイド台湾』(昭文社)『パパ・サヴァイバル』(風雅書房)『街物語 パリ』(JTB)『乾杯! クラフトビール』(メディアパル)など。

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