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2017.07.26

カルシウムはサプリメントより食事で!【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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コンビニなどでも手軽に手に入り、身近な存在となったサプリメント。栄養補給に利用している方も多いと思います。
でもそのサプリメントも使い方を誤ると、病気のリスクが増大することがあるそうです。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「石原藤樹のブログ」より、読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

本日ご紹介するのは、今年のJ Clin Hypertens.誌のレビューになります。(※1)
これは、カルシウムをサプリメントとして摂取することと、心血管疾患のリスクとの関連を解説したものです。

▼石原先生のブログはこちら

カルシウムのサプリメントが病気のリスクを高める?

日本人には足りていないカルシウム

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カルシウムやビタミンDをサプリメントとして摂ることは、世界中で広く行われていて、その理由は骨粗鬆症や骨折の予防と、高血圧症の予防が2つの柱です。日本の場合には必要なミネラル成分のうち、カルシウムだけが必要量の1日600ミリグラムを下回っているとして、国レベルで積極的な摂取の推奨が行われています。

ただ、最近になり特にサプリメントとしてカルシウムを摂ることが、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクを高め、生命予後にも悪影響を与えるのではないか、という疑念が多く寄せられるようになりました。

サプリメントの摂りすぎで心血管疾患のリスクが急増

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以前何度かご紹介したことがあるのは、2013年のBritish Medical Journal誌に掲載されたスウェーデンの疫学データで(※2)、6万人以上の中高年の女性の統計として、1日のカルシウムの摂取量が1400mg以上のグループは、少ないグループと比較して、心筋梗塞などの心臓病のリスクが2倍以上増加していました。

男性はサプリメントの影響を受けやすい?

同様の報告は他にもあります。
同じ2013年のJAMA Intern Med.誌に掲載されたものですが(※3)、アメリカで39万人弱の、50歳から71歳の男女を平均で12年間観察した結果として、男性で1日1000mgを超えるカルシウムを摂取している男性では、サプリメントを摂取していない男性と比較して、
心血管疾患のリスクが1.20倍(95%CI;1.05から1.36)、心臓病による死亡のリスクが1.19倍(95%CI;1.03から1.37)、とそれぞれ有意に増加していました。

心血管疾患による死亡には有意な増加はなく、女性での同様の検討では有意なリスクの増加は認めませんでした。更に食事からのカルシウムの摂取量が多くても、このような心血管疾患リスクの増加は認められませんでした。

この報告ではBritish Medical Journalのものとは異なり、女性ではなく男性でリスクが増加している、という結果になっています。

問題はサプリからカルシウムを1000mg以上摂る場合

食事で摂る分には影響なし

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より直近の2016年にも次のような論文が発表されています。
2016年のAm J Clin Nutr誌に掲載された論文ですが(※4)、アメリカの癌予防の疫学データを元にした解析です。

13万人余りの男女を平均で17.5年という長期に渡り観察した結果、1日1000mg以上のカルシウムをサプリメントで摂取している男性は、サプリメントを使用していない男性と比較して、総死亡のリスクが1.17倍(95%CI; 1.03から1.33)有意に増加していました。
しかし、女性では総死亡のリスクはサプリメント群で有意に低下していました。
食事由来のカルシウムの摂取量と、総死亡のリスクとの間には関連は認められませんでした。

1000mg以上摂ると心臓病のリスクが増加

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つまり、どうもサプリメントでカルシウムを、1000mgを超えて摂取することは、心臓病のリスクの増加に、結び付く可能性が高そうです。その影響はどうやら男性に強そうなのですが、スウェーデンの検証では女性にも認められています。

しかし、明確な差とまでは言えない上に、そのメカニズムも明確ではありません。

冠動脈へのカルシウム沈着とサプリメントの関係は

サプリメントの使用で石灰化病変が出現するリスクも

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最近注目すべき研究としては、冠動脈へのカルシウムの沈着と、サプリメントとの関連を見た次のような論文があります。

2016年のJ Am Heart Assoc.誌に掲載されたものですが(※5)、5448名を10年間観察した、動脈硬化に関しての疫学データの解析で、動脈硬化の指標として、心臓CTによる冠動脈の石灰化を利用しています。

カルシウムの摂取量をトータルで見ると、多いほど10年後の冠動脈の石灰化病変の出現は低いのですが、カルシウム量を補正した上でサプリメントの使用の有無で解析すると、サプリメントの使用により新規の石灰化病変出現のリスクは、1.22倍(95%CI;1.07から1.39)有意に増加していました。
このリスクの増加は、元のカルシウムの摂取量が不足していると、より大きなものになっていました。

サプリメントを飲む場合は量に注意

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つまり、どうやらサプリメントのカルシウムと、食品からのカルシウムの摂取とは別個に考えるべきで、食事からのカルシウムは多いほど健康に良いですが、サプリメントのカルシウムは、逆に心血管疾患のリスクを増加させる可能性があるのでは、ということを示唆する結果です。

何故このような現象が起こるのか、そのメカニズムは現時点では不明なので、この結果を鵜呑みにするのは時期尚早と思いますが、カルシウムのサプリメントの使用については、今後より慎重に考えた方が良さそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36