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2017.06.28

辛いものを食べると健康になる?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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暑くなるとなぜか辛い物が食べたくなる方も多いのではないでしょうか。汗をかきながら辛い物を食べると、頭も体もシャキッと冴える気がしますよね。実は、そんな辛い食べ物を食べる習慣がある方は、総死亡リスクが低いという可能性があるのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、ブログに執筆、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「石原藤樹のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今日ご紹介するのは、2016年のBritish Medical Journal誌に掲載された、辛い食事を食べる習慣と、生命予後を含めた健康への影響についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

辛いものは健康に良いのか?

カプサイシンは代謝を活発にし、抗肥満や抗酸化作用があると報告されているが、根拠は不十分

辛い物は健康に良いのでしょうか?

唐辛子などに含まれるカプサイシンという成分は、代謝を活発にする作用があり、抗肥満作用や血圧降下作用があるとされています。また、抗酸化作用や抗炎症作用が見られるという報告もあり、感染症や生活習慣病の予防に有効な可能性があります。
腸内細菌叢に影響を与えて、その作用を活発化させるというような研究結果もあります。

ただ、こうした研究は実験レベルのものか、比較的少人数での疫学データが殆どで、その根拠はあまりレベルの高いものではありません。

辛い食事と健康の関連を、中国の350万人のデータで分析

辛い食事の摂取習慣と健康への影響を検証

そこで今回の研究では中国において、1年当たりの人数に換算して350万人以上という、大規模な成人の疫学データを活用して、アンケートによる辛い食事(spicy foods)の摂取習慣と、生命予後を含めた健康への影響を検証しています。

週に3回以上辛い物を食べている人は、週1回以下の人に比べ死亡リスクが14%減少

その結果辛い食事を週に1回未満しか摂っていない人と比較して、

1から2回摂っている人は、総死亡のリスクが10%(95%CI:0.84から0.96)、
3から5回摂っている人は14%(95%CI:0.80から0.92)、
6から7回摂っている人は14%(95%Ci:0.82から0.90)、

それぞれ有意に低下していました。

アルコールを飲まない人だと、さらにリスクが減少

この辛い物を食べることによる死亡リスクの低下は、アルコールを飲まない人でより高く、辛いものを週に6から7回摂っている人は、1回未満しか摂っていない人と比較して、

癌による死亡リスクが8%(95%CI:0.85から0.99)、
虚血性心疾患による死亡リスクが22%(95%CI:0.67から0.89)、
呼吸器疾患による死亡リスクが29%(95%Ci:0.62から0.81)、

それぞれ有意に低下していました。

食べ過ぎない程度に辛いものを楽しむ習慣を

この結果はやや微妙なもので、本当にカプサイシンなどの摂取と生命予後に、関連があるのだとすれば、摂取量が多いほどリスクが低下しても良さそうですが、結果は必ずしもそうはなっていません。

ただ、カプサイシンと健康との関連については、これまでにも多くの研究があり、今回の非常に大規模な疫学データは、それを一定レベルサポートするものとは言っても良さそうです。
ほどほどに辛いものを食べる習慣は、それほど健康上悪いことではなさそうです。

参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36