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2017.05.24

急激なダイエットは心疾患リスクを上げる【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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短期間で体重を落とす厳しいダイエットに成功したものの、数か月後には悲しくもリバウンド…。あなたにもそんな経験はありませんか?実はそんな急激な体重変化が、心臓に負担を強いているかもしれません。

クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、ブログに執筆、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生。石原先生の人気ブログ「石原藤樹のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今日は、2017年4月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、体重の変動が心臓に与える影響についての論文についてご紹介します。

▼石原先生のブログはこちら

急激なダイエットやリバウンドのリスクとは?

体重変動が大きいと、虚血性心疾患のリスクに

肥満が心筋梗塞などの心血管疾患のリスクであることは、多くの疫学データで立証された事実です。その一方で体重の変動が大きいことも、虚血性心疾患のリスクとなることが報告されています。

これは体重の急激な増加は勿論のこと、急激な減少やダイエット後のリバウンドなども、その振り幅が大きければ病気のリスクになるのでは、という意味合いです。ただ、実際に心筋梗塞などを起こした患者さんにとって、その後の体重変動がどのような影響を与えるのか、というような点については、これまでにあまり精度の高いデータが存在していませんでした。

心疾患患者に対する体重変動の影響は?

4.9年の観察期間において、狭心症や死亡のリスクなどが増加

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今回の研究はTNT研究という、大規模な臨床研究のデータを活用して、心筋梗塞や狭心症の患者さんにおける、体重変動の影響を検証しています。

元になっている臨床試験は、狭心症や心筋梗塞の明確な既往があり、血液中のLDLコレステロールは130mg/dL未満と、それほどの上昇はない患者さんを対象として、スタチンの上乗せ効果を検証したものですが、そこで登録された9509名の中央値で4.9年という観察期間中の、体重の変動幅と虚血性心疾患の予後との関連が検証されています。

その結果、他の心血管疾患の危険因子や平均体重、体重の変化量で補正した結果として、体重変動の標準偏差が1増加する(つまり体重の数値のばらつきが大きくなる)毎に、狭心症や心筋梗塞のリスクが4%、その死亡リスクが9%、それぞれ有意に増加していました。

平均変動幅が最も大きいグループで、死亡リスクは2.24倍

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体重の変動の大きさを5分割すると、最も変動が大きい群の平均の変動幅は3.86キロで、最も変動の少ない群(平均の変動幅0.93キロ)と比較して、

狭心症や心筋梗塞のリスクが1.64倍(95%CI;1.41から1.91)
心血管疾患のリスクが1.85倍(95%CI;1.62から2.11)
死亡リスクが2.24倍(95%CI;1.74から2.89)
心筋梗塞単独のリスクが2.17倍(95%CI;1.59から2.97)
脳卒中のリスクが2.36倍(95%CI;1.56から3.58)
糖尿病の新規発症のリスクが1.78倍(95%CI;1.32から2.40)

それぞれ有意に上昇していました。

特に心疾患のある方は、急激なダイエットはNG

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このように体重の大幅な変動は、それ自体が独立した心血管疾患のリスクである可能性が、心筋梗塞や狭心症の患者さんで示されたことは、体重などの生活指導に当たるスタッフにとっては重要な知見で、一部で流行っているような短期間で急激なダイエットは、その後のリバウンドのリスクも考えると、こうした患者さんでは推奨されないということは、認識をしておくことが重要だと考えられます。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36