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2017.05.23

その靴、合ってないかも?プロが教える靴選びのコツ【健康と靴・前編】

KenCoM編集部

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仕事や遊び、買い物など、外出時に欠かせない靴。多くの人は、量販店や専門店、インターネットで気に入ったものを購入しているのではないでしょうか。実はその選び方が間違えているかもしれないんです。そこで今回は、靴選びの専門家"シューフィッター"として20年以上のキャリアを持つ武田さんに「健康と靴の関係性」をお聞きしました。何が間違えていたのか?ぜひご一読ください。

<お話を伺った方>武田 剛さん

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『一般社団法人足と靴と健康協議会』が認定するバチェラー(上級)シューフィッター。大手流通企業に所属し、靴の販売やプライベートブランドのシューズ開発、スーパーバイザーなどの経験をもつ。現在では職務と合わせて、後進のシューフィッター育成のためにフィッティングや足型計測などの実技指導を行っている。

ファッションだけじゃない!大切な靴の役割

靴のプロ・シューフィッターの仕事とは?

――シューフィッターはどんな知識を持っているのでしょうか?

シューフィッターは靴を合わせる『フィッティングの専門家』です。一般の販売員との大きな違いは、”健康を考えて靴を提案している”という点。足の解剖学から歩行分析、足に関わる疾患、靴の仕組みなどを学び、お客さんが必要とするシーンに合わせた商品を提案しています。あまり知られていませんが、全国で3000人強のシューフィッターがいるんですよ。

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――3000人も!健康を考えたフィッティングの考え方を教えてください。

歩行の際、靴は唯一地面からのストレスを守ってくれるものです。そのため、足に合っていないと、膝や腰を痛めたり、足の骨が変形したりする可能性があります。シューフィッターは、こうした健康リスクの予防をフィッティングから目指しています。

――足への負担はあまり意識したことがありません。

そうだと思います。疾患や怪我など、特別な事情が無い人にとって、靴を履いて歩くことは日常的なことですからね。例えば、沢山歩いた翌日に筋肉痛が出たり、足裏や腰に痛みが出たりすることってありませんか?それって足に合っていない可能性があるんです。

最近では特に、普段履きの靴の選定基準を間違えている方が多い印象を受けますね。それでは十分に靴の機能を発揮できてないんです。

勘違いしがちな「靴を選ぶ基準」

履き心地を重視した靴選びは○?それとも×?

手の平で足の高さを計測する武田さん。筆者の足と靴が合っているか見てもらいました

手の平で足の高さを計測する武田さん。筆者の足と靴が合っているか見てもらいました

――ちなみに私が履いている靴は合っていますか?

合ってませんね(苦笑)。

――ショック……。それはなぜでしょうか?

まず、紐を解かなくても脱げましたよね?その時点で、靴を固定できていませんし、足に対して少し大きめです!

――お店で合わせたつもりになっていました。

一般的な傾向として、やや大きめのものを選ぶ方が多いんですよ。毎日のライフスタイルから考えると、脱ぎ履きのしやすさを重視してしまうからでしょう。”歩く時に使うもの”という視点が、どうしても抜けてしまいがちなんです。歩いている時に何か痛みを感じたことがあれば注意するかもしれませんが、そもそも靴が合っているかを意識している方って少ないですよね?

――痛くないぐらいで選んでいますね。

そうなんです。私も以前は”お客さんが痛くないものを提案する”ことを意識していました。しかし、シューフィッターとなった今では”足の健康”を考えています。

靴を履いて歩くことは、毎日の食事と似ています。食生活を少し乱したぐらいですぐに健康を害するなんてことが無いように、合わない靴を履いたからとすぐ足に不調が起こることではありません。しかし、なんらかの症状が出てしまったら、医師に相談する必要があります。そうならないよう、お客さんの足に合った靴をコーディネートするのがシューフィッターの役目です。

実は怖い「足と靴のミスマッチ」

靴擦れや魚の目、将来の転倒リスクにつながるかもしれない

――靴が合わないことにより、どんな健康リスクが予想されますか?

比較的すぐに分かるのは、足腰の疲れや靴擦れです。そして、大きい靴を履いて歩行し続けると、皮膚がこすれて角質が硬くなり、タコや魚の目になる可能性もあります。もっと長期的に見たなら、足の変形や老後の転倒リスクが高まることも懸念されています。
(編集部注:合わない靴によって「外反母趾」や「ハンマートゥ」など、様々な足の障害が引き起こされるといわれています。「足と靴と健康協議会」公式HPより)

――怖いですね。転倒リスクが上がる理由とは?

高齢者の転倒には病気や運動不足など、さまざまな要因があります。靴から考えられるのは、筋力やバランス感覚が低下する可能性です。足の指は、歩行時に地面をけり出すような動きをしてます。それなのに靴の中で足が微妙に動いてしまうと、正しい歩行動作ができません。そんな状態が長く続くと、足の指の筋力が落ち、老後に転倒リスクが高まるかもしれないというものです。

(編集部注:2015年4月に公開された理学療法士協会の学術大会に寄せられた論文によると、中高年のバランス能力の低下に足指の力の低下が相関しているのではないかという研究が寄せられています。)

――足の動きが関係しているのですね。靴を選ぶ際に重視すべき点はなんでしょうか?

重視すべきなのは、靴を買う時にTPOを意識しておくことです!

――靴を選ぶのにTPO?この続きは後編で!

シューフィッター武田さんのお話から、靴と足の関係性が見えてきました。痛くないだけで靴を選んでしまうことが、健康リスクにつながるというのは新たな気づきではないでしょうか?インタビューの後編では、靴を購入する際に押さえておきたいポイントをご紹介します。靴を買うときに使える内容なので、ぜひチェックしてみてくださいね。

参考文献
参考

(取材・文・撮影 KenCoM編集部)

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