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2017.05.02

がんを予防するためにはどうすればいいのでしょうか?【KenCoM監修医コラム】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

日本人のためのがん予防法

がんのできる場所によって予防法は違う

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がんを予防するためにはどうすればいいのでしょうか?
がんと一口に言っても、その出来る場所や性質により、その予防法も異なっています。
たとえば、大豆に含まれるイソフラボンは、女性では肝臓がんの危険性を高める可能性がある、という報告が国立がん研究センターの研究結果の1つとして発表されましたが、同じイソフラボンが乳がんや前立腺がんを予防する、という別の研究結果も報告されています。(参考①)
このように同じ食品や生活習慣でも、がんの種類によっては予防になったり、むしろ危険を高めたりと、別の方向に働くという可能性があるのです。

日々こうした様々な健康情報がメディアでは流されていますから、一体何に気を付けて何を食べれば良いのかと、混乱をされている方も多いと思います。

男性で43%、女性で37%がんのリスクが下がる5つの生活習慣

がん予防のための生活習慣や食事などの研究は世界的に複数行われていますが、生活習慣には地域差が大きく、また遺伝にも人種要因が大きいので、国外での研究が日本でそのまま適応可能とは言えません。
そんな中で国立がん研究センターなどが主導で行っている、がん疫学調査のデータが、最近「日本人のためのがん予防法」として取りまとめられました。最新版は平成28年8月に更新されています。(参考②)ここではこれまでのデータの解析を元に、「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つの生活習慣を実践することにより、男性で43%、女性で37%しない場合と比較してがんになるリスクが低下する、としています。これまでのがんに関する健康情報の中では、最も科学的に信頼のおける指針であることは、間違いがないと思います。

それではどのように実践すれば良いのでしょうか?1つずつ見ていきたいと思います。

1、禁煙する

喫煙のがんへのリスクは、非喫煙者の1.5倍

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日本人の多目的コホート研究などの結果では、喫煙により肺がん、食道がん、膵臓がん、胃がん、大腸がん、膀胱がん、乳がんのリスクが増加する、とされています。
トータルに見たリスクの増加は1.5倍程度です。受動喫煙により肺腺がんや乳がんのリスクの増加も報告されています。(受動喫煙による肺癌リスクの上昇は1.3倍程度)
喫煙はそれ以外に動脈硬化性疾患のリスクを増やし、肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患の原因にもなりますから、がん予防のみならず、健康のためにはまずは禁煙なのです。

2、節酒する

アルコールは1日23g以下が推奨

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日本人男性では日本酒で1日2合を超えるくらいの飲酒で、がんのリスクの1.4倍程度の増加が認められています。特に食道がんと大腸がんではアルコールとの関連が深く、女性では乳がんとの関連が報告されています。アルコールは1日23グラム以下が推奨で、これは日本酒1合、ビール大瓶1本、ワインボトル3分の1、ウイスキーダブルで1杯くらいに相当します。

3、食生活を見直す

減塩/野菜・果物を摂る/熱いものは冷まして

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食事については、最初に触れたように1つの食材でも正反対の研究結果もあり、触れられているのは、減塩と野菜や果物を摂ることと、熱い食べ物は冷まして摂る、という3点のみになっています。

食塩摂取量の多い男性では胃がんのリスクが高いというデータがあり、適度な減塩が推奨されています。野菜と果物が欠乏しているとがんは増えるというデータがあります。ただ、野菜や果物を多く摂ることでがんが予防出来るかは明確ではありません。具体的な胃がん予防のための塩分量の指針もありません。熱いものをそのまま食べると食道がんと食道炎のリスクになることは、国内外を問わず確立された知見です。

世の中には沢山の食事とがんとの関連についての情報が溢れていますが、その割には日本最高峰の予防法の指標として、取り上げることが可能なものはこの3点しかない、というのは、ちょっと不思議な気もします。実際に国立がん研究センターの研究グループからは、多くのこれ以外の知見も得られているのですが、相互に矛盾するものもあり、またがんについては良くても、他の病気の原因になってしまいそうなものもあり、実際には間違いなく健康的でがん予防になる習慣というものは、それほど多くはないのが実際なのです。

4、身体を動かす

身体活動量が高いほど、がんのリスクは低下

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多目的コホート研究のデータによると、男女とも身体の活動量が高いほど、がんのリスクは低下していました。特に高齢者では、余暇に運動をする機会のあるなしで、より明確ながんのリスクの低下が認められました。がんの部位では男性で結腸がん、肝臓がん、膵臓がん、女性では胃がんにおいて、運動によるリスクの低下が認められています。
具体的ながん予防のための運動量は確認されていません。

5、適正体重を維持する

BMI値25を超えないこと

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BMIは体格の数値で、キログラムで換算した体重を、メートルで換算した身長で2回割って計算します。標準体重と言われているのは、22から23くらいで、25を超えると太り過ぎと判断されます。男性の場合BMIが21.0から26.9、女性の場合21.0から24.9で、がんのリスクは最も低くなっていました。

以上が5つの生活習慣ですが、日本人のがんの原因としてもう1つ重要なのは感染症です。

6、感染を防ぐ/除菌する

ピロリ菌除菌で胃がんリスクは3~4割減

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具体的にはB型やC型のウイルス肝炎は肝臓がんのリスクになり、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染は胃がんのリスクになります。ヒトパピローマウイルスは子宮頸がんのリスクになり、ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV-1)は成人T細胞白血病やリンパ腫のリスクになります。
このうち、感染が成立してから治療が可能なのはピロリ菌だけですが、現時点ではピロリ菌除菌の効果は、胃がんのリスクを3割から4割程度減らすレベルと考えられています。(参考③)

がんを予防するにはどうすればいいのか?

重要なものから、禁煙、感染予防、節酒

日本人での解析では、最もがんのリスクを減らせるのが禁煙で、次が感染予防、そして節酒という順番になっています。したがって、タバコを吸っている人は、何より禁煙することががん予防になり、次にピロリ菌やヒトパピローマウイルスの感染があれば、そのコントロールが重要になります。そして、アルコールは1日2合を超えるような飲酒習慣を避け、強いお酒をそのまま飲むことは避けるのが賢明です。
後は糖尿病や高血圧を予防するような生活習慣が、結局はがん予防にもなるのです。

皆さんも正しいがん予防の知識を身に着け、その効果と限界を知って下さい。

▼参考文献

① Kurahashi N, Inoue M, Iwasaki M, et al. Isoflavone consumption and subsequent risk of hepatocellular carcinoma in a population-based prospective cohort of Japanese men and women. Int J Cancer. 2009 Apr 1; 124(7): 1644-9.

③ Ma JL, Zhang L, Brown LM, et al. Fifteen-year effects of Helicobacter pylori, garlic, and vitamin treatments on gastric cancer incidence and mortality. J Natl Cancer Inst. 2012 Mar 21; 104(6):488-92.

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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