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2017.08.02

血圧180mmHgってどのぐらい?健診結果の“ヤバさ”を理解していますか?【順天堂大学・福田洋先生インタビュー②】

KenCoM編集部

前回の記事ではヘルスリテラシーを身につけることで、なぜ健康になれるのかをご紹介しました。情報力は格差を解消するツール、ヘルスリテラシーは、手近にお金をかけずに健康になれるスキルとのことでしたが、では、具体的にどうやってヘルスリテラシーを身につけ、実践していけばよいのでしょうか?

今回はヘルスリテラシーについて具体的な数値や例を挙げつつ、引き続き順天堂大学の福田先生にお話しいただきます。

▼前回の記事はこちら

<お話を伺った方>福田洋先生

順天堂大学医学部総合診療科准教授・福田洋先生

順天堂大学医学部総合診療科准教授・福田洋先生

■福田洋(ふくだ・ひろし)先生:
山形大学医学部卒業。1999年順天堂大学大学院医学研究科(公衆衛生学)修了・博士(医学)取得。現在、順天堂大学医学部総合診療科准教授。臨床医の業務を行う傍ら、都内の複数の企業の産業医も担当し、職域を対象とした効果的な生活習慣病スクリーニングと健康教育プログラムの開発や評価など「働く人々」の健康を中心に研究を行う。「ヘルスリテラシー」に関する講演も多数。近著は『ヘルスリテラシー :健康教育の新しいキーワード』(大修館書店)。

健診結果の本当の“ヤバさ”がわかりますか?

血圧180mmHgを例えてみると

▼図1:最高血圧180mmHgってどのぐらい?(出典:東京法規出版『人間ドック健診で手に入れる健康ライフ』福田洋監修より一部改変 ※1)

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――ヘルスリテラシーはまず健康診断から、と伺いましたが、さらに具体的な数値の見方を教えていただけますでしょうか。

たとえば、体温を測って37度くらいだと大抵の人は「熱はあるけど大したことはない」と判断しますが、39度だと「今日は会社を休まないと・・・」なんて思いますよね。病院を受診した後、家で寝ていると思いますし、身体もかなり辛いはずです。例えば、健診で血圧180mmHg、中性脂肪1000mg/dlの社員さんと面談すると、臨床医の感覚としては39度の高熱の人を診たのと同じくらいのくらい“危ない(ヤバい)”印象です。

血圧200mmHgは、20cmの高さから鉄の塊を落とした時の衝撃のさらに2倍

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例えば血圧の200mmHgがどれぐらいの圧力か考えてみましょう。200mmは20cm、Hgは水銀です。昔の血圧計は水銀柱を使っていました。水銀の重さはなかなか想像できないので、直径1cmの鉄球(Fe,比重は7.9g/cm3)で考えてみます。200mmFeは鉄球を20㎝持ち上げて落とした圧力です。水銀の比重は13.6g/cm3。つまり200mmHgは20cmの高さから鉄の塊を落とした時の衝撃の約2倍の圧力です。それが、体の中の細い血管にもかかっているということです。私はよく講演で腕時計を20cmの高さから落として見せるのですが、実際にそれをやってみると結構な音がします。

▼写真:中性脂肪1000mg/dlの血液はドロドロ(撮影:福田洋)

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また中性脂肪が高い血液を実際に見た人は少ないと思います。中性脂肪1000mg/dlの血液を遠心分離機にかけると、写真の右側のように豚骨ラーメンのような脂で濁った血漿が見られます。(左は中性脂肪が正常な方の血漿)

このように具体例で考えると、その状態がどれだけ怖いものなのかを実感しやすいです。

本当にすごいのは、このような状態が体で一時的に起きても、ヒトの体はそれに対応できているということです。血管が柔らかければ、一時的に血圧が高くなっても耐えられますし、肝臓や筋肉の働きで中性脂肪も代謝されています。誰かに危ないと脅されるのではなく、自分の体の仕組みやすごさに気づくことが大事です。

「この状態は”危ない(ヤバい)”」と実感して、考え方や行動を変えることが出来るのも、“ヘルスリテラシー”です。ヘルスリテラシーが身につけば、本当なら今すぐ病院に行かなければならない状況を放置している人も、病院へ行くことができるかもしれません。また、情報が読み解けるようになると、健康のことを知るのが楽しくなってきます。

元気でなりたい自分でいるために

健診データはダイナミックに変化している

――では実際に、健診結果を改善していくためにどうすればよいでしょうか?

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前回もお話ししましたが、健康診断の結果というのは、ダイナミックに変化する体の状態の一瞬を切り取ったスナップショットです。ですから、健康診断の前に1週間体を気遣った生活をするだけでも実は変化が出てくるものなんですよ。

具体的な例を出すと、γ-GTP(※肝臓の解毒作用に関係する酵素で、この値が上がると脂肪肝や肝炎が疑われる)については、多くの場合、お酒を控えれば1〜2週間くらいでが下がります。もしそれでも数値に変化がないなら、肝炎などの病気が潜んでいる場合もありますから、病院で診てもらいましょう。

減塩・減量・運動・節酒でそれぞれ血圧は5mmHg下がる

▼図3:生活習慣修正による降圧の程度(出典:『高血圧治療ガイドライン2014』,日本高血圧学会 ※2)

※DASH食=Dietary Approaches to Stop Hypertension 米国で研究された野菜、果物、低脂肪乳製品、食物繊維を多く摂り、肉類や砂糖を減らす食事法

※DASH食=Dietary Approaches to Stop Hypertension 米国で研究された野菜、果物、低脂肪乳製品、食物繊維を多く摂り、肉類や砂糖を減らす食事法

高血圧の治療というと、降圧剤を内服する、というイメージですが、薬以外にも血圧を下げる方法はあります。減塩・減量・運動・節酒などの行動が血圧に良い影響がありそうということは知っていますが、1つ1つの生活習慣が血圧を5mmHg下げる効果があると知ると、具体的に考えられるようになります。(※編集部注:ご自身の血圧のコントロール方法については主治医の先生とご相談ください)

また、私たちの研究では、体重を1kg減らせば内臓脂肪面積は約10cm2減少することがわかっています(※4・5)。それがわかると「ちょっとやってみるか!」と思えますよね。情報を知るということはやる気につながり、行動にもつながります。ですから「知る」ということが健康につながるんです。

次の健康診断までに良い数字に

誰だって「悪い数値」は見たくないものです。元気でなりたい自分でいたいですよね。
ですから、前回の健診結果も確認しつつ、日々の行動に気をつけて、次の健康診断までに「良い数値」を出していけるようにしましょう!

メタボ対策の3つのポイント

――メタボを改善するためのポイントを教えていただけますか?

1、体重を測ること

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まずは、毎日の体重測定が重要です。自分の体重を知ることは自分の身体を知ることになりますし、数値で見ることで自分へのプレッシャーにもなります。毎日自分の体重の変化を確認することにより、食事や運動について振り返り、気をつけることにもつながります。

2、偏った食べ方をしない

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食事の時に偏った食べ方をしないことも大切です。例えば、ダイエットしたいからといってリンゴばかり食べたり、炭水化物を全部やめたりという極端なやり方はお薦めできません。栄養バランスが取れた食事をすることがまず重要です。お肉を食べたら野菜も食べる、といったことを心がけてください。

3、食後に運動をする

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食後1~2時間後に行う運動が食後高血糖を抑え(出典:『糖尿病診療ガイドライン2016』※3)、その結果余ったエネルギーによる内臓脂肪の蓄積を予防する効果があると考えられます。多忙な働き盛りほど、遅い夕食のあと寝てしまいます。要するにエネルギーが余った状態(中性脂肪が上昇し、内臓脂肪が蓄積します)にしないことが大事で、もちろん食べ過ぎないことも重要です。運動の内容は、軽くストレッチでも、器具を使った筋トレでも、ランニングでも何でもOKです。とにかく続けられることが大事なので、無理をしない範囲で運動を続けてください。

――なるほど。まず体重計に乗るところから始めたいと思います!(次回に続きます)

今回はヘルスリテラシーを活用した、具体的な健康法を教えていただきました。具体的な例や数値を知ると「これは何とかしなければ」という実感も湧いてきますね。「正しい情報を知ること」が自分の健康につながっていくというお話は、とてもわかりやすく納得できたのではないでしょうか。

そしてみなさんが気にされている「メタボ」を改善する3つのポイントも教えてもらいました。どれも毎日できる簡単なことなのでぜひ実施してみてください。まずは体重計へ!
次回は福田先生がなぜ“ヘルスリテラシー”に注目するのか、先生の過去の話などから紐解いていきたいと思います。小さい頃から情報を発信することが好きだったという福田先生。健康教育に興味を持ったのは一体何故なのでしょうか?

(取材・文・撮影)KenCoM編集部

※4 長南愛子,三輪真也,山下真理子,原田健,花里恵里,志村麻衣子,泉真理子,吉原有紀,野口佐奈江,場集田寿,高谷典秀,福田洋,高谷純司,高谷雅司: 集団型メタボリックシンドローム改善プログラム修了後の追跡調査. 人間ドック 25:618-625, 2010.

※5 Aki Hiuge-Shimizu, Ken Kishida, Tohru Funahashi, Yuko Ishizaka, Rie Oka, Minoru Okada, Shizu Suzuki, Norihide Takaya, Tohru Nakagawa, Toshiki Fukui, Hiroshi Fukuda, Naoya Watanabe, Tohru Yoshizumi, Tadashi Nakamura, Yuji Matsuzawa, Minoru Yamakado & Iichiro Shimomura: Absolute value of visceral fat area measured on computed tomography scans and obesity-related cardiovascular risk factors in large-scale Japanese general population (The VACATION-J study). Annals of Medicine, 44: 82-92, 2012.