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2017.04.17

人口減と高齢化のスピードはどう変わったか|最新版「将来推計人口」が示す日本の近未来

東洋経済オンライン

寿命が延びる中、健康で年金が信頼できればよいのだが…(写真:zon/PIXTA)

参照元:http://toyokeizai.net/articles/-/167847?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

寿命が延びる中、健康で年金が信頼できればよいのだが…(写真:zon/PIXTA)

4月10日、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が作成する「日本の将来推計人口(平成29年推計)」が、厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会人口部会で公表された。本連載記事「将来推計人口の怪、甘い出生率予測は禁物だ」では、公表が遅れていることに触れていた。

この将来推計人口は、2019年に実施が予定されている公的年金の財政見通しの検証に用いられる。結果を見ると、5年前の前回推計と比べて、わずかばかり明るい見通しとなっている。

人口減少の速度は前回推計より遅く


この連載の過去記事はこちら

前回2012年の将来推計人口では、日本の総人口は2060年には約8674万人、2110年には約4286万人となると推計されたのに対し、今回の将来推計人口では、2060年には約9284万人、2110年には約5343万人となるとの見通しが示された(出生中位・死亡中位推計の結果。以下同様)。前回推計よりも人口減少のスピードが遅くなる見通しだ。

また、日本の総人口が1億人を下回る年次は前回推計では2048年となっていたが、今回は2053年と5年遅くなった。これは、安倍晋三内閣が「一億総活躍社会の実現」を掲げていることを「忖度(そんたく)」した結果というわけではない。機械的に推計しており、根拠は比較的明瞭だ。近年における30~40歳代の女性の出生率実績の上昇等を受けて、推計の前提となる合計特殊出生率(推計初年から50年後)が、前回推計の1.35から1.44に上昇したことと、2015年の国勢調査の結果、推計の前提となる2015年の人口が前回2012年に推計していた人口予測を上回ったことが、大きく効いている。

さらに、社会保障給付の見通しを立てるうえで重要となる65歳以上人口比率(全人口に占める割合)は2015年の国勢調査では26.6%だったが、増加ペースが前回推計よりもやや緩和される結果となった。前回2012年の将来推計人口では2024年に30%を超え、2038年に35%を超え、2047年に38%を超え、2060年に40%を超え、2070年代以降は約41%で推移するとしていたのに対し、今回の将来人口推計では、2025年に30%を超え、2040年に35%を超え、2050年代に約38%となって、それ以降は同水準で推移するという。

75歳以上では医療や介護の1人当たり費用がより多くかかる。その全人口に占める割合は2015年の国勢調査では12.8%だったが、これも同様に増加ペースが緩やかになっている。前回2012年の将来推計人口では2020年に15%を超え、2025年に18%を超え、2035年に20%を超え、2051年に25%を超え、2060年代以降は約27%で推移するという推計となっていた。これに対し、今回の将来推計人口では、2021年に15%を超え、2026年に18%を超え、2039年に20%を超え、2055年に25%に達し、それ以降はほぼ同水準で推移するという。

2050年までの高齢化の進展はほぼ変わらず

つまり、高齢化のスピードは前回推計で見込んだよりも若干鈍化し、高齢者人口の割合が高くなるのもより遅くなるという結果である。高齢者の人口が全人口に占める割合が低いほど、社会保障財源の支え手がより多く、社会保障給付はより少なくて済む。21世紀の日本の財政負担は、5年前の前回推計に基づき予想していたほどは重くならない、といえる。

しかし、残念ながらその恩恵が及ぶのは21世紀後半、2050年代以降である。2050年代以降の高齢化の進展は前回推計ほど深刻ではないということが、今回の推計で明らかとなっただけであって、2050年までの30年近くは高齢化が進むことには、変わりない。今日、成人である人々は、高齢者が増えていくことに伴い、社会保障の財源負担が増えることと共存していかなければならない。

さらに、今回の将来推計では、"うれしい悲鳴"ともいえるデータが明らかになった。平均寿命の伸長である。

2015年の平均寿命は、男80.75歳、女86.98歳。前回2012年の将来推計人口では2035年には男82.40歳、女89.13歳、2060年には男84.19歳、女90.93歳という推計だったのに対し、今回の将来推計人口では2035年には男82.85歳、女89.20歳、2060年には男84.66歳、女91.06歳と伸びた。

21世紀後半は、「人生100年時代」といえる時代になるのかもしれない。ただ、より長く生きられても老後の生活資金をより多く備える必要があるし、健康で長生きできてこそ喜ばしい話である。人口推計では、各年齢の死亡率の推計をしており、それが健康状態と関連づけられなくはないが、ここで出されているのはあくまでも機械的な推計である。健康で長生きする、つまり健康寿命の延伸には、個人の努力と社会的取り組みの両方が必要だ。

将来推計人口では、平均寿命に注目が集まりがちだが、上記の平均寿命はその年のゼロ歳児の平均余命を意味するのであって、今すでに生を受けている者が平均であと何年生きるかを示す平均余命を意味するのではない。実は、将来推計人口では、各年齢における平均余命も推計している。

たとえば、2015年における65歳(1950年生まれ)の人の平均余命は、男19.41年、女24.24年である。各年における65歳の人の平均余命は、今回の推計によると、2025年(1960年生まれ)は男20.32年、女25.29年、2035年(1970年生まれ)は男21.02年、女26.11年、2045年(1980年生まれ)は男21.62年、女26.81年、2055年(1990年生まれ)は男22.14年、女27.42年、2065年(2000年生まれ)は男22.60年、女27.94年となるという。つまり、この50年間で、65歳の平均余命は、男で3.19年、女で3.7年も伸びるという。

保守的な見通しで公的年金の信頼性確保を

この人口推計を踏まえれば、老後に必要な生活資金を、個人や政府(公的年金制度)でどう役割分担をしながら確保するかが問われる。税や保険料の財源確保もままならない朝令暮改的な年金制度では、安心して老後の生活設計ができない。

目先の負担増や給付減を嫌って、いつまで経っても信頼されない公的年金制度であっては、過度な予備的貯蓄を国民に強いてしまい、消費の伸び悩みを引き起こす。誰のためにもならない。必要な年金改革は早期に実行して、信頼を高めることが求められる。

2019年に行われる年金の財政検証は、これに資するものであるべきだ。経済成長率や年金積立金運用収益率について高めの数字を想定して過度に楽観的な見通しを示すのではなく、保守的な経済前提を置いて、最悪でもこれより悪くはならないという公的年金支給額の見通しと必要な改革を提示することが、信頼をさらに高める近道である。

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土居 丈朗:慶應義塾大学 経済学部教授

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