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2017.04.12

女性従業員が約9割!ワコールの健康経営とは?【訪問!健康企業/健保vol.1・前編】

KenCoM編集部

創業1946年、京都の名門企業ワコールの本社ビル

創業1946年、京都の名門企業ワコールの本社ビル

今回から新連載「訪問!健康企業/健保」として、健康経営に関わる企業・健康保険組合の取組みを、インタビュー形式でご紹介していきます。

第1回は、創業者塚本幸一氏の掲げる“相互信頼の経営”の下に、長きにわたって従業員と良好な関係を築いてきた、1946年創業・京都の名門企業ワコール。40年以上前に健康保険組合を立ち上げ、社員の健康を守ってきました。
昨今健康経営に注目が集まる中、ワコールは、1業種1社の「健康経営銘柄」に2年連続で選出されました。今回は株式会社ワコールより保健事業を受託し、主体的に取り組むワコール健康保険組合の常務理事・柏木裕之氏に、健康保険組合の具体的な取り組みと今後の課題、さらに今後のビジョンを語っていただきます。

<お話を伺った方>

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(右)ワコール健康保険組合 常務理事 柏木 裕之氏
(左)ワコール健康保険組合 健康開発チーム 課長 保健師 須山 有輝子氏

乳がん撲滅の先進企業ワコールの受診率向上施策

乳がん罹患者ゼロに向けて

――今日はお時間いただき、ありがとうございます。ワコール健康保険組合さんのこれまでの取り組みと、今後の方針・課題等についてお話を伺いたいと考えております。 まずは、2年連続の健康経営銘柄、選出おめでとうございます。

――これまでの取組みで、子宮がん・乳がん検診にの受診率向上を推進してこられたと聞いておりますが、その背景を伺えますか?

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元々、弊社は下着メーカーとして、1974年から乳がんを経験された方のための「リマンマ事業」に取り組んでいます。乳房を手術された方向けのインナーウェアや水着の開発を行っており、さらに2002年からピンクリボン活動を中心とする乳がん撲滅運動を本格的に進めてきました。とはいえ、株式会社ワコール全社員5,513人のうち、年間10人程度の乳がん罹患者が出ています。やはりできるだけ早期発見したいということで、予防のための検診受診率100%を目指した様々な取り組みを進めてきました。

”3いらず”の取り組みで、受診しやすい環境を整える

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――40年以上も前からですか!受診率向上のためには、具体的にはどのようなことをやって来られたのでしょうか?

まず、”3いらず”と言って、大きく3つの方針を置いています。
それは、(1)お財布いらず(一時的な個人払いはない)(2)お手間いらず(定期健診のついでに職場で受診できる)(3)お休みいらず(就業時間中の受診が可能で、それに対する上司や男性社員の理解もある)と、受診環境を整えることです。

健康診断のオプションとして追加でき、また補助金を支給しているため、基本的には自己負担はゼロです。また2009年10月に自社で乳がん検診車AIOを購入したため、事業所に横付けして就業時間内に受診でき、検診のために休暇を取る必要もありません。
そうやって利便性を上げることで、受診しやすい環境づくりを進めつつ、一方で、産業医の婦人科の先生による子宮頸がんセミナーを実施し、検診受診のための啓発活動を行ったりもしています。

さらに、乳がん検診はマンモグラフィーは痛みがあるというイメージで敬遠する人もいるため、40代以降はマンモグラフィーとエコー検診ですが、20・30代についてはエコーのみの実施を推進しています。

2009年10月に購入された乳がんの検診車AIO

2009年10月に購入された乳がんの検診車AIO

――受診しやすい環境を整える、というのは重要なことですね。現状の受診率はどの程度でしょうか?

2015年度の実績で、乳がんの受診率が82%、子宮がんの受診率が65%でした。

――今後、この受診率をさらに上げていく上での課題は何でしょうか?

やはり、「忙しい」「時間がない」「特に心配ない」という理由で受診をされない方がいらっしゃることです。そのためにも、なぜ検診が必要かについての啓発活動が大事だと思っています。

喫煙率の低下のための秘策とは?

補助金や禁煙外来など、ワコール独自の禁煙プログラム

(イメージ)

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――次に現状の喫煙率と、禁煙に対するこれまでの施策を伺わせてください。

全体の喫煙率は19.8%、内訳は外勤スタッフが19.1%、内勤スタッフが11.3%。女性が17.6%、男性が28.2%となっています。

禁煙プログラムについても様々な取り組みをしてきました。上限1.5万円として禁煙のための補助金を出していたり、社内に禁煙外来を用意し、禁煙補助薬や禁煙ガムを提供したりしています。また、実は徐々に喫煙ルームを減らしていったりもしています。

また、保健師からメールや面談、電話で個別の連絡とサポートも行っています。

――保健師のサポートとは具体的にどのようなものでしょうか?

組合員の健康への意識が1番上がるのは健康診断のタイミングなので、その機会を活用しています。そのため健康診断の医師の問診後に、全員、保健師との1対1の面談があります。

保健師10名のきめ細かな保健指導

――全員ですか!すごいですね。

直接コミュニケーションが取りやすい内勤の組合員には、健康診断時と健康診断結果のフィードバック時の面談があります。その際、喫煙者には禁煙のメリットと喫煙のデメリットをきちんとご説明し、同意をいただいた方には(産業医に許可をもらった上で)お試しのニコチンパッチをお渡ししたりもしています。

そこまでやっていても、なかなか禁煙できない方もいらっしゃいますが・・・とはいえ、喫煙率はここ5年で年1%ずつ下がってきました。

――なるほど。保健師の方々のサポートがかなり充実していらっしゃいますね。ちなみにその面談では、他にどのようなご相談があるのでしょうか?

(イメージ)

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体調面のご相談はもちろん、メンタルや仕事の悩み、家族の悩みなどありますね。保健師を10名配置しており、そのおかげもあって、現状では健保・事業所・社員が、密にコミュニケーションを取れる体制ができています。

外勤スタッフの健康支援が1番の課題

ただ、やはり課題は外勤のスタッフの喫煙率です。事業所での教育研修時に10分だけ健保の時間をもらって、啓発活動を行ったりしていますが、それでも本社とは離れた場所に位置する職場ですから小まめなコミュニケーションは難しく、本社のスタッフと比べると手薄になってしまいますね。

業界全体での禁煙への取り組みを!

百貨店などのスタッフの場合、職場で食堂と喫煙室が隣り合っていたり、喫煙率が高い環境でもあります。そのため、弊社だけで一生懸命禁煙を進めようとしてもなかなか難しく、百貨店さん、GMSさんや同業他社さん、アパレル企業さん等とともに、禁煙推進に取り組んでいきたいと考えています。
たとえば、接客マナーの1つとして、制服着用時は喫煙NGといったルールも作っていけたらいいなと思います。また施設全体で禁煙タイムを設けるというアイディアもあるかもしれません。

他に、禁煙補助薬を販売しているファイザーさんに、事務所で禁煙の啓発活動を行ってもらえないかと相談していたり、スマートフォンアプリの禁煙サポートプログラムを活用した、1人1人へのサポートを行いたいとも考えていたりもします。
ちなみに、外食企業さんでも喫煙率が高かったりするので、積極的に意見交換していますね。

――業界全体で進めようというのは、非常にいいですね!(次の記事に続きます)

女性従業員比率89%(2016年3月期・統合レポート2016より)というワコールでは、2002年からピンクリボン活動を実施していることもあって、乳がん検診受診率向上の取組みを社内でも積極的に行っているようでした。また、喫煙率の低下については、内勤者と外勤者との差をいかに埋めるかということが目下の課題とのこと。業界全体での禁煙推進の取組みにも期待したいところですね。

(取材・文・撮影:KenCoM編集部)

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