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2017.04.06

心が忙殺される…。あるビジネスマンの人生を変えた“30分の出来事”【マインドフルネス・前編】

KenCoM編集部

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毎分毎秒新しい技術や情報が生まれ、仕事や暮らしを取り巻く環境は常に変化しています。
ストレス社会といわれている中、企業や組織のリーダー格にあたるビジネスパーソンを中心に注目を集めているのが“マインドフルネス”です。
仕事の現場に必要とされるメンタルトレーニングとはどんなものなのか?
その魅力を知るために、マインドフルネスの第一人者である荻野氏にお話を伺いました。

<お話を伺った方>荻野淳也氏

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■荻野淳也(おぎの・じゅんや)氏
マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事。
外資系コンサルティング会社コンサルタント(管理会計、組織開発)、ベンチャー企業役員を経て独立。ミッションマネジメント、マインドフル・リーダーシップ、マインドフル・コーチングという軸で、リーダーや組織の本質的な課題にフォーカスし、その変容を支援している。2013年にマインドフルリーダーシップインティテュート(MiLI)を設立した。

燃え尽きかけていたビジネスマンの「人生を変えた30分」

初めての瞑想で感じた「驚き」

――最初にマインドフルネスとの出会いを教えてください

忘れもしない2005年9月最終週の土曜夕方。友人に誘われてヨガスタジオに行った時の出来事です。
レッスンの終盤で30分の瞑想の時間があったんですね。インストラクターのいう通りに一連の動作を終えると、自分の中に衝撃的な変化が起こりました。
それまで悩みごとだらけだった心が軽くなり、さらには頭もスッキリして、目に映る景色がビビッドに見えてきたのです。

「これは何だ!?」と本当に驚きましたね。

――30分の瞑想で荻野さんに何が起こったのですか?

瞑想によって注意力が散漫になっていた心理状態がキレイに整理されました。いわゆる『マインドフルネス』の状態です。

少し当時の状況をお話すると、仕事に対するモチベーションが著しく低下し、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥っていました。ネガティブな思考になりがちで、日々何かに追い詰められるように感じていたのです。

――モチベーション低下の原因とは?

仕事の目標がなくなっていました。
2003年にIPOを目指していたベンチャー企業のIPOプロジェクトの担当になり、約1年間は文字通り無休で、1日平均16~20時間は働いていました。そうして会社は2004年7月に記録的な速さで上場。その時の達成感はすさまじいものがありましたね。
しかし、その後に続くタスクの多さから、少しずつモチベーションが下がっていたのです。

――上場はゴールではなく、新しい始まりだった。

その通りです。
器用貧乏な性格もあって、上場後になるとIRからシステム開発、営業サポートまで、膨大な量の仕事を担当するようになっていました。
1年ぐらいは業務を遂行していたものの、いつからか「部下から仕事が遅れているといわれたらどうしよう」「社長から叱責を受けるのではないか?」と、自らにプレッシャーをかけていて。自分が対処できるギリギリの状態でしたね。

その時にリフレッシュの一環として訪れたのが、冒頭でお話したヨガスタジオです。たった1度の瞑想で、忙殺されかけていた頭の中が整理されるマインドフルネスの状態を経験することができました。

――人生の転機になったようですね。

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はい。
当時は今ほど働き手のメンタルの問題が騒がれていませんでしたが、水面下では自分と同じように悩む人たちがいるはずだと考えたのです。
こうして会社を退職し、ヨガスタジオに転職。当時は周囲から驚かれましたね。企業向けにトレーナー派遣のサービス、ビジネス向けヨガプログラムの開発などに携わるようになりました。

マインドフルネスがビジネスにもたらす効果とは?

脳を”再起動”してクリアな心で仕事と向き合う

リーダークラスの人材は、常にタスクや責任に追われ、脳内はタスクだらけになります。だからこそ瞑想を取り入れ、意識的に脳を整理する時間が必要だと考えました。
マインドフルネスとは自分の意識がフラットな状態。つまり、物事を的確に理解し、判断できる状態です。だからこそリーダー格の人材が、いつも「フラットな自分」でいられれば、重要な決定事項や失敗の許されないタスクに対しても適切な処理ができるため、組織全体の生産性のアップにつながります。

――脳が散らかるとは具体的にどういう状況なのでしょう。

身近な物に例えると、パソコンを使う際にアプリケーションを沢山使うと動作が鈍くなりますよね?これはパソコンの脳であるメモリの容量がいっぱいになった状態。そんな時は再起動をして、一度リセットをしてあげると思います。脳もパソコンのメモリと同じで、瞑想によって再起動することができます。
ヨガでの瞑想の後も同じように脳が再起動されて、自分が対処すべき問題に向き合うことができる状態になった。
それこそがマインドフルネスなのです。

――『脳を再起動する』確かにビジネスの現場に必要なキーワードになりそうです。

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しかし、ヨガスタジオの仕事をしている際に、ビジネスの現場に浸透しづらいという課題にぶつかりました。そこで気づいたのが『科学的根拠』です。女性はヨガとの親和性が高く体感値として受け入れてもらいやすいのですが、男性には受け入れてもらうための材料が不足していました。

――男性でヨガに通っている人は少ない。

そうなのです。
しかし、そんな状況を打破するものがなんとGoogle社にあったのです。

――マインドフルネスとGoogle???気になる続きは「後編」へ!(4/7公開)

世界最高峰の企業に成長したグーグルで行われる「心のトレーニング」とは?「脳の再起動」「リーダー人材のストレス問題」など、覚えておきたいキーワードが満載です。

ぜひご一読ください!

(取材・文・撮影:KenCoM編集部)

参考文献

世界のトップエリートが実践する集中力の鍛え方 ハーバード、Google、Facebookが取りくむマインドフルネス入門
著者:荻野 淳也, 木蔵シャフェ君子, 吉田 典生

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