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2017.05.31

極真カラテ王者の肩は柔らかかった!“一撃”の裏側とは?【元気をつなぐリレーNo.4】

KenCoM編集部

「空手で肩こりを改善したい」「ダイエットしたい」…と、健康を目的に空手を習う人が中高年の方に増えているそうです。

スポーツなどでその道を極めようとしている人や、健康づくりを支える人にお話を聞く、「元気をつなぐリレー」第4弾は、元ラガーマンの極真空手全日本4連覇王者、そして空手の指導員でもある藤井将貴さんにお話を聞きました。

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ラグビーと空手、2つのハードなスポーツで鍛えた体は意外にも柔らかかった?!
強さの秘訣は「自在に動ける体の使い方」にありました。空手で勝つためにはいかに体を使うのか?藤井さん直伝の体を柔らかくする体操や、年齢問わず付き合える武道・空手の魅力に迫ります。

<お話を伺った方>

■藤井将貴(ふじい・まさき)さん
・極真武道空手連盟 極真拳武會 黒帯二段
2013年~2016年 全日本空手道選手権大会 争覇戦 優勝/2015年 全日本ウェイト制空手道選手権大会 真剣勝負ルール 89kg超級・優勝/2015年 カナダ国際大会 争覇戦・優勝

勝利の方程式は「いかに体を使うか」

ラグビー × 空手の経験が生み出す強さ

――元ラガーマンの藤井さん。2つのスポーツを経験した良さは?

高校卒業後、ラグビー留学のためニュージーランドに滞在したのですが、向こうではシーズンごとに複数のスポーツをやるのが一般的なんです。2つ3つのスポーツをやる中で両方で結果を出す選手も多数いました。「一方の体の使い方を、もう一方に活かす」という発想で、私もまさにその考えで空手を続けてきました。中学から高校そして留学中のラグビーで身に付けた「走る」「ぶつかる」といった総合的な力が空手に活かされています。

個人競技の空手では経験できないチームプレーをラグビーで経験出来たのも良かったです。元々運動が出来たワケではなかったこともあり、先輩についていこうと練習も必死でこなしていました。

強い腹筋、バランス感覚、柔軟性など空手の技を通して得られる体の使い方は幅広い。

強い腹筋、バランス感覚、柔軟性など空手の技を通して得られる体の使い方は幅広い。

全力でパンチすれば勝てるワケではない

――空手にシフトして全日本4連覇。何を極めようとしていますか?

「体の使い方を極めること」を試行錯誤しています。試合では、思いっきりパンチする以上に「相手が予想しない動き」が勝敗を分けることもあるんです。

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首をひょいっと上に動かして、相手に「上から攻撃が来る!」と思わせたタイミングで下を蹴ったり、わざと速い動きを続けて相手も速く反応して来たタイミングで、ゆっくりと技を出すとか。

それには狙った時に、当てたい場所、角度で攻撃できること。もちろんスタミナや打たれ強さを養うために激しい練習も行いますが、思うように体が動かせることも大事なんですよ。

勝てる体の使い方とは?

――健康目的で空手をはじめる大人が増えているとか。空手で勝てる体の使い方とは?

一般の方から選手まで、空手において大切にすべきは「呼吸」「柔軟性」「バランス感覚」「強い腹筋・背筋」などのポイントです。これらを意識するのとしないのとでは技の威力が全然違います。

呼吸:速く吐きながら出すパンチは強い

技の基本は「吸って吐く」ことなんです。実際にやって頂くとわかるのですが、「はーーっ」と長くゆっくり息を吐きながらだと、速いパンチは出せませんよね。でも、「はっ」と強く短く出すと速いパンチが出せます。吸って吐いて、吸って吐いてを繰り返す。呼吸する筋肉を使うだけでも体のあらゆる部分が動きます。

速く吐きながら出す技は、威力が増す。

速く吐きながら出す技は、威力が増す。

柔軟性:鋼の一撃は、しなやかな体から

たとえば極真会館の松井館長など、名選手の方々の体も柔軟性に優れています。大人で肩や背中が硬い人は多いですよね。体がよく動いて健康になり、さらに空手も強くなれたら理想的だと思います。

体が自由に使えるようになるには、柔軟性が大切なんです。

藤井さんの肩甲骨は自在に動き、柔軟性があることがわかる。「立甲」というポーズをやって頂きました。

藤井さんの肩甲骨は自在に動き、柔軟性があることがわかる。「立甲」というポーズをやって頂きました。

バランス力:ブレない技を出す力の元

柔軟性が高まり「背中を丸めて伸ばす」動きが出来ると、脚を前にグッと出すことができるのでキックも威力が増すんです。

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体の動きが悪いと軸が取れず、試合中ここぞという時にバランスが崩れます。技のブレを改善するためには、まず壁に寄りかかって蹴りをゆっくり出しながら軌道を確認。手を離して速くやっても同じ動きができるように練習することもあります。

ゆっくり蹴りを出して軌道を確認。速く動かしても同じ動きができるように練習する。

ゆっくり蹴りを出して軌道を確認。速く動かしても同じ動きができるように練習する。

腹筋・背筋:腹筋は体のエンジン

さらに技のブレを改善するには、腹筋と背筋が安定することも大切。要は土台作りなんですが、腹筋が弱くて背骨がぐらついたらクッションになってパンチ力が減るので、そこを固められるのは威力につながります。「腹筋は体のエンジン」。私も先生に「腹筋が動かないと体が動かないから腹筋を鍛えなさい」と言われてきました。

肩こりも改善できる!空手家直伝体操

――日常生活に無い動きが鍛錬につながりそうです。自宅でも出来る、肩や背中を柔らかくする方法を教えていただけますか?

首が硬いと肩が動きません。私も普段行っている、首から肩、背中を柔らかくする簡単なストレッチをやっていきますね。

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1・2.足は肩幅より少し大きめに開いて、手は膝につき背中を伸ばす。息を吐きながら下向く、息を吸ったら上を向く。

3・4.今度は、息を吸ったら横を向いて、息を吐いたら反対側を向く。

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1.右肩の後ろを右手で押さえて、左手で頭の右側をつかみ、頭全体を左にゆっくりと倒す。

2.押さえている手で、肩と首元が動かないようにする。

3.同じように反対側も行う。

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1.右手で左肩を抑え、左手で右手を上から押さえる。

2.首を右側にゆっくり倒し、首を伸ばす。

3.首を倒しても、肩が上がらないように押さえる。

4.反対側も同様に行う。

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1.手の位置を写真のように固定して、肩だけを上げて伸ばし、次に肩をぐっと下げる。

2.手の位置はそのまま変えずに、肩だけを前→真ん中→後ろに伸ばす。

3.手の位置は変えずに、肩だけを斜め前→真ん中→斜め後ろに伸ばす。

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これは私の個人練習のひとつですが、ヨガの「猫のポーズ」。肩や背中の柔軟性を高めるストレッチです。

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1.四つん這いになって、ゆっくり息を吸いながら背中を丸める。

2.息を吐きながら、背中を反らす。

3.これを何度か繰り返す。

質問のバトン:どんな特訓をしていますか?

――前回登場したボディメイクトレーナーの杉村さんからの質問です。「体の使い方を極めるため、どんな特訓をしていますか?」

今トレーナーの先生に指導頂いてるのは、木の棒の上に裸足で乗り、不安定な状態のままスクワットなどをする体幹トレーニングです。バランス力向上などが期待できるんですよ。

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このように、木の棒の上で腕立てのような動きもします。毎回教わるときには「四肢自在メニュー」などと名付けられたメモを先生に渡され、そこに書かれているオリジナルのトレーニングをやっていきます。まだまだ完璧に出来ないのですが“特訓”と言えばこれですね。

バランス‘木,S(キッズ)という、木を使った体幹トレーニングで筋力やバランス感覚をトレーニング。

バランス‘木,S(キッズ)という、木を使った体幹トレーニングで筋力やバランス感覚をトレーニング。

棒を使った運動は、子どもの稽古にも取り入れています。特に都会の子どもは、裸足で駆け回ることが少なく足の使い方の不器用な子が多いことが気がかりです。稽古では「バランス大会」をやり始めたりと、遊び道具になってしまっている棒を使った特訓ですが、楽しみながら体の使い方を覚えて空手にも活かしてくれたらいいと思っています。

「道」の付くスポーツは一生続けられる

46歳の大先輩との決勝戦!

――昨年の全日本大会。20歳年上の大先輩との決勝戦が印象的でした。いかがでしたか?

「凄い」のひとことです。私も大人の稽古を担当しているので分かるのですが、普通の46歳ってあんなに動けません。
極真空手の練習が1番過酷だったときの稽古をやりきってこられた世代の先輩です。10人単位で組み手をやり、大田区千鳥の道場から池上本門寺まで100段の階段を含めて10往復…といった激しい稽古をした後に空手の指導に行っていた時代。

大会で、先生は同じ大会に出場した若い2名の弟子よりも良い成績を出したわけですが、46歳の選手に現役で負けた現実を見て、練習に励んでくれたら…とおっしゃっていました。

84歳で黒帯を取られたおばあさん

――先輩たちのように、空手は10年、20年と続けられるのが良いですね。

先日、私の先生の道場で70歳を過ぎてから空手を始めた女性が、84歳にして黒帯をとられたんですよ。

「極真空手」というと、組み手で怪我もするけど「根性っ!!」と勢いで乗り切るような激しいイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。
ですが、私が大人の空手でイメージしているのは、殴るという動きの中でも「体のここが、こう動いて、こう力が伝わるから強いパンチが出せる…」と考え稽古することで体が上手く使えるようになる、そして日常生活にいい影響が出る、といった付き合い方。それが理想だと思うんです。

私も、まだまだ空手でやるべきことが山のようにあります。若者の私が言っても説得力がないかもしれませんが、「道」のつくスポーツは、年齢を重ねても一生かけてできると思うんです。健康のためや試合のため、自分に合った付き合い方ができるんですよ。

【編集部より】

――スポーツをする上で「試合で勝つこと」も重要な側面ですが、スポーツを通して体の使い方を覚えて体力がつき、さらに健康になれたらOK…こういったスタンスで臨めば、より長く付き合っていくことが出来そうです。今回のお話を聞いて、スポーツを通して体が使えるようになる楽しさや、スポーツを長く楽しむ喜びに触れることができました――。

取材協力

(取材・文/KenCoM編集部)

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