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2017.03.20

がん緩和ケアにおけるアロマテラピーとは?【インタビュー:心を癒す香りの力②】

KenCoM編集部

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運命のようなアロマテラピーとの出合いと、7年間の無月経に終止符を打った香りの不思議に魅せられて、製薬会社からアロマセラピストへの転身を図った熊谷千津さん。1995年の帰国後は、ホスピスで末期がん患者へのアロマテラピーのボランティアを始めます。
第2回のこの記事では、ホスピスでアロマテラピーが果たした役割について、お話を伺います。

▼前回の記事はこちら

<お話を伺った方>熊谷千津さん

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■熊谷千津(くまがい・ちづ)さん
公益社団法人日本アロマ環境協会理事・薬剤師・博士(農学)。
大手製薬会社に勤務の後、イギリスのTisserand Institute Holistic Aromatherapy Diploma コースに留学。ディプロマを取得し帰国後、緩和ケア病棟にてアロマセラピストとして活動する。2014年より公益社団法人日本アロマ環境協会常任理事。2児の母でもある。

ホスピスでの末期がん患者へのアロマケアの効果とは

最初はなかなか受け入れてもらえず、落ち込んだことも

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――ホスピスでのケアというのは、難しいお仕事ではないですか?

ちょうどがんの緩和ケアのニーズが高まってきたころで、診療報酬に緩和ケア病棟入院料が設けられた時期でした。ホスピスで「どう生きるか」が考えられ始めていたころです。

モルヒネで痛みを取ることはできます。痛みを取り去ることはとても大事なことです。でも、そこに「うれしいこと」「今日もいい一日だった」と思えることがあったら、もっと幸せな日々を過ごせるでしょう。

そんな中、ある医師の方が私に声をかけてくださり、病院でアロマトリートメントや、アロマスプレーを作ってお渡しする活動を始めることができました。
まだアロマテラピーの認知度が低い頃でしたので、実践に当たっては難しいこともたくさんありましたが、少しずつ受け入れてくださる方が増えていきました。

「アロマセラピストになってよかった」心から感じた大切な経験

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トリートメントの後は、本当に素敵な笑顔で「ありがとう」とおっしゃってくださる方が多かったです。おひとりおひとりとの出会いが「アロマテラピーを学んでよかった」「アロマセラピストになってよかった」と感じられる貴重な時間でした。

アロマセラピストなら対等に、気を遣わずにゆっくり話せる

アロマセラピストは、患者さんの介護をしたり治療をしたりする存在ではないため、患者さんにとって気を遣わずに比較的気軽に付き合うことができます。そのことが、よい関係性を築きやすい理由の1つなのかもしれません。

あるとき、テレビの方がホスピスでのアロマテラピーを取り上げてくださったことがあって、患者さんに「アロマは効きますか?」と尋ねました。それに対して「効くか効かないか、難しいことはわからないけれど、熊谷さんが来てくれると気持ちがリラックスできる」「病院は楽しいことが1つもないけど、いい香りがするとイライラがなくなって気持ちが楽になる」とおっしゃったことが忘れられません。アロマテラピーに関われて本当によかったと改めて感じた出来事でした。

患者さん自身が人をもてなす喜び

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またこんなふうにおっしゃる患者さんもいらっしゃいました。病室に精油を焚くようになると、お見舞いの方や主治医の先生が入室されるとき、「いい香りですね」と笑顔になってくれるんだ、と。
アロマテラピーは、患者さんの癒しのツールとしてだけではなく、患者さんご自身の「みんなに笑顔になってほしい」という気持ちをサポートする役割もあるのだと気づきました。
アロマセラピストが患者さんを癒してあげているわけではなく、アロマが介在して、その時間に癒しが起こるのだと思います。

研究の道へ。子育てしながらの学位取得まで

アロマテラピーのエビデンスの必要性を感じて

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――ホスピスでのボランティアは17年間続けられたそうですね。

はい。そして、アロマテラピーを続ける中で、やはり「エビデンスがないとアロマテラピーの魅力を伝えきれない」と思いました。そこで37歳のときに、一念発起して研究を始め、7年かけて農学の学位を取ったんです。

――ちなみに、その間、子育てもされてたんですよね?大変ではなかったですか?

そうなんです。子育てをしながら、ボランティアにも行きながら、研究を続けるのは本当に大変で。子どもにも、周りの方にもたくさん助けられながら、ほかの学生さんの何倍も時間がかかって、やっと学位を取得しました。

その後、3年前からは日本アロマ環境協会(AEAJ)の常任理事となり、各大学などと共同研究のかたちで研究を続けています。

――それにしても熊谷先生は、困難な環境でも全力で前進されますよね。その原動力は一体何でしょうか?

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やっぱりアロマが好きという気持ちだと思います。
先日、AEAJでアロマテラピーに関する市場調査を行ったのですが、アロマ市場は確実に広がっていることがわかりました。20年前はカウンセリングからトリートメント(マッサージ)がメインでしたが、今はアロマコスメや芳香浴も含めて、気軽に生活に取り入れられるものが広がっています。精油を購入できるお店も増えていますので、まずは1本好きな香りを見つけて、ぜひ多くの人にアロマの魅力を知っていただきたいですね。

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――今後アロマテラピーに期待されていることは何でしょうか?

医療費が今後もますます上がっていく中、アロマテラピーに期待されていることは、生きる喜びを提供することや、病気にならないように予防を行うことだと思います。

病気になる前に、病気にならないためにアロマテラピーを利用していただきたいです。特に認知症の予防、更年期障害の予防、メンタルの不調の予防が得意分野かなと思いますね。

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――アロマテラピーの活躍の場はまだまだ広がりそうですね!

困難にもくじけず、アロマテラピーの道を一心に進んだ熊谷さんのお話を伺いました。次回は、具体的なアロマテラピーの活用シーンと活用方法についてお話を聞きます。3月24日(金)公開予定です。

(取材・文・撮影:KenCoM編集部)

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▼第1回・第3回の記事はこちら

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