2017.03.10
【休日さんぽ】家康が始めた日本橋。鰹節専門店・道具屋など老舗を巡る
3月も中旬を迎え、いよいよ本格的な春の季節がやってこようとしています。暖かな風を背に受け、新年度に向けて気持ちを新たにされている方もいるのではないでしょうか。
今回の【休日さんぽ】のテーマは、そんな時期にピッタリな日本橋。古い江戸の歴史が潜むこの町は、昔から多くのモノを生み出してきたため「はじまりの町」と呼ばれているんです。昨年には「コレド室町2」「コレド室町3」などの新たな商業施設が開業され、より幅広い年齢の方々が楽しめる町へと変貌を遂げました。
また日本橋には江戸時代から続く老舗も多く、今も人々から愛されています。今回はそんな老舗の中から、伝統と革新を融合させて今なお進化を続ける名店を、日本橋の歴史と合わせてご紹介します。
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徳川家康の時代より続く日本橋の歴史
現在架けられている日本橋は1911年に完成した20代目。国の重要文化財にも指定されている。
1601年、徳川家康は全国支配のため、江戸を中心とする五街道の整備を始めます。「日本橋」はそれらの街道の起点として、江戸幕府が開かれた1603年に架けられました。
京都・三条大橋と江戸・日本橋を結ぶ「東海道」
日本橋は、京都の三条大橋と結ばれた東海道のスタート地点です。東海道は徳川の本城がある江戸と朝廷のある京都との連絡をスムーズに行うために整備され、その後参勤交代によって交通量が増えると、宿場施設や関所などが置かれるようになりました。
すべての日本道路の起点となる「日本国道路元標」
江戸時代に五街道が定められてからは、日本の道路は日本橋が起点となっている
1873年には、明治政府により7国道の起点としても定められました。各地の「東京まで○○km」と書かれている多くの道路標識の距離などは、ここを基準に表示されているんです。
100年以上の歴史を誇る日本橋の老舗3選
このように大変な盛り上がりを見せた日本橋には、江戸時代から現代に至るまでの長い間、商売をしてきた老舗が数多くあります。ここからは、再開発が進み近代的になっていく町の中に、今なお生きる3つの名店をご紹介いたします。
1.にんべん:300年以上、日本の味を守ってきた老舗
創業者である伊兵衛は、店の屋号を「伊勢屋伊兵衛」とし、暖簾印に伊勢屋と伊兵衛のイ(にんべん)をとり、商売を堅実にするためのお金(かね)と合わせて「カネにんべん」としました。
最初にご紹介するのは1699年創業、日本の味を守り抜いてきたかつお節専門店「にんべん」です。
「”かつお節で出汁をとる”ってなんだか難しそう」というイメージを払拭し、かつお節の手軽さや美味しさ、温かさを伝えるべく300年以上もの間、かつお節業界において挑戦をし続けてきた歴史を持ちます。
お店の中にはかつお節の美味しそうな柔らかい香りが漂っており、胸いっぱいに息を吸うとだしの香りで空腹が刺激されます。
左:白だし ぬれおかき 右:木枯鰹節 江戸レッシング 煎り酒
日本人の和食を食べる機会を増やすために、時代の常識にとらわれることなく型破りな商品開発を続けている「にんべん」。
店内には「ぬれおかき」や「だしおこげ」などのお菓子も販売されています。また、にんべんのかつお節レシピ本には、だしを使った定番料理の他に、かつお節を使ったおやつのレシピも掲載されています。こうした一風変わった商品は、どれもまずはだしへの興味を持ってもらうためのもの。その先には、かつお節の魅力を知ってほしいという想いが込められています。
2010年には店舗の横に、気軽にだしを楽しめる「だし場」 をオープン。もともとは40代・50代のお客さんが多かったのですが、こうした気軽に立ち寄れる場所をつくったことで幅広い年代の方がお店を訪れるようになりました。
1杯100円で味わえるカップ入りの本格だしを中心に、月ごとに変わる「だしスープ」、炊きたてのご飯にかつお節をたっぷりとかけた「かつぶしめし」など、旨味たっぷりの健康的な食事を提供しています。
「日本橋だし場」は料理の提供スピードも早く、値段もリーズナブルで利用しやすい。
発酵食品であるかつお節は、手間ひまをかけて丁寧に作れられる伝統的な日本食材。炊きたてのふっくらとしたご飯と、かつお節の旨味が凝縮されたスープを一緒にいただけば、日本食の優しい味わいを感じるとともに、健康的な食生活を体験することができそうです。
2.日本橋 木屋:美しい日本の道具に触る。楽しさを知る。
2017年4月で創業225年を迎える「日本橋 木屋」は包丁を中心に、日本の美しい道具・愛着の湧く商品を提供している。
続いてご紹介するのは220年以上もの間、包丁やハサミを中心に日本の暮らし道具を取り扱ってきた老舗「日本橋 木屋」です。
こちらの道具店では「日本橋 木屋」のスタッフが、自分たちの目で判断した確かな品質の商品だけを販売しています。和包丁と洋包丁がひとつひとつ丁寧に展示されている様子は、思わず見惚れてしまうほど。
また、日本橋木屋は創業1792年の老舗企業でありながら、日本の生活道具を守り、後世に伝えるために数々の挑戦をしてきました。いい道具ともっと向き合って、その楽しさに気づいて欲しいという想いから『日本橋木屋 ごはんと暮らしの道具』という日本道具を上手に使った暮らし方を提案している本の出版もしています。
そんな数ある挑戦のひとつが、こちらの「izutuki(いづつき)」という展示スペースです。
JCDデザインアワード2014金賞を授賞した「izutuki」では、大量生産ではないモノの良さを感じることができる。
izutukiは日本の道具をより多くの人たちに身近に感じてもらうことを目的としており、日本の四季や行事、生活の変化に寄り添うような美しい暮らしの道具たちを見て、触って、知ることができます。
道具にまつわるちょっとしたエピソードや解説などと合わせて楽しめる。
日本の道具たちが美術品のように洗練された並びになっている秘密は、商品が置かれている棚板にあります。この棚板は、商品の個性を生かすために、ひとつひとつの道具に合わせたサイズになっており、展示する位置に合わせて壁に差し替えるような設計になっているのです。こうしたところからも、木屋の徹底した道具へのこだわりと情熱を感じることができます。
こちらの「木曽からの贈り物」がテーマの展示は3月8日までとなっており、3月9日以降は「新生活」をテーマにした展示が行われるそうです。毎日の暮らしを豊かにしてくれる道具を見つけに、日本橋木屋を訪れてみてはいかがでしょうか。
3.榛原(はいばら):伝統×モダンの美しい和紙を楽しむ
伝統模様である「色硝子(いろがらす)」をモチーフにした外観はデジタルと煉瓦職人・瓦職人の技術が融合したもの。
最後にご紹介する日本橋の老舗は、1806年に創業してから200年以上、時代に流されることなく和紙を提供し続けている「榛原」です。
創業以来一貫して和紙を扱い、特に看板商品となった雁皮(がんぴ)紙は、滑らかで墨つきが良いと、文人・墨客を中心に愛されてきました。
店内には静かなBGMが流れており、ゆったりとした空間の中で、千代紙・便箋・うちわなど時代を超えて愛されてきた美しい和紙製品を眺めることができます。
榛原復刻図案 ぽち袋
「榛原特製 千鳥団扇」は美しい千鳥をかたどった涼やかで格式の高いうちわ。(4月14日~販売開始)
「ちいさい蛇腹(じゃばら)便箋 貝」は手のひらサイズのかわいらしい箱の中に、便箋とぽち袋が収められていてプレゼントにぴったり。
柄は和風ではあるものの、鮮やかな色味やデザイン性のある製品を眺めていると、改めて和紙の魅力に気づくことができます。伝統とモダンが融合した和紙を取り入れれば、暮らしに心地よさを運んできてくれるかもしれません。
「六角筆筒」榛原千代紙を折たたみ式の筆筒に仕立てた製品。机の上にひとつ置いておくだけで晴れやかな雰囲気に。
インターネットが普及し、メールやチャットなどで用事を済ませることができる時代、日本の伝統的な和紙を使った贈り物は相手の記憶に残る素敵なプレゼントになるはずです。
年度末は別れの時期でもあります。ひと手間かけた贈り物をしたいと思う方は、ぜひ榛原を訪れてみてはいかがでしょうか。
【おまけ】ちょっと時間ができたら福徳神社へ
「福徳神社」は貞観年間(859〜876年)よりこの場所に鎮座している歴史の深い神社。
もしも老舗を巡ったあとに時間が余っていれば、福徳神社へと足を運んでみてはいかがでしょうか。
徳川家康も参拝したことがあるこちらの神社は、別名を「芽吹(めぶき)神社」といいます。新年度、新たな芽生えと成長を祈願する場所としてはぴったりなんです。
春風暖かい日本橋を、歴史とともに歩く
江戸時代から何百年と続く老舗を巡り歴史とともに町を歩けば、日頃は体を動かす機会が少ない方でも、楽しみながらウォーキングに取り組めそうです。
春本番になると日本橋の各所では、春のイベントが数多く開催されるそうですよ。新年度に向けて気持ちを新たにするために「はじまりの町」日本橋を訪れてみてはいかがでしょうか。
(取材・文・撮影:KenCoM編集部)