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2017.01.19

「食べ続けると痩せる肉」の知られざる正体|牧草飼育牛と穀物飼育牛の違いと体への効果

東洋経済オンライン

肉質は赤身が多く、肉本来のかみ応えと香りが楽しめる(写真:筆者撮影)

肉質は赤身が多く、肉本来のかみ応えと香りが楽しめる(写真:筆者撮影)

食べれば食べるほど、やせる牛肉

最近、焼き肉業界で、ある牛肉がひそかに話題を呼び始めています。自然の環境で放牧され、牧草のみで飼育された牛のことで「グラス・フェッド・ビーフ」(牧草飼育牛)と呼ばれています。

このグラス・フェッド・ビーフこそが「食べ続けるとやせる」といわれる牛肉で、肉質は赤身が多く、肉本来のかみ応えと香りが楽しめます。私も何度か食していますが、いわゆる、霜降り牛肉の脂肪の入り方をしておらず、切断面がきれいな赤身を主張してきて、非常にかみ応えがありました。これが牛本来の肉の味と高い香りなのかとかみしめつつ、深い味わいを楽しむことができました。

一方、まだまだ流行の端緒ということもあり、うま味を残すおいしいグラス・フェッド・ビーフは高価だと思われています。理由は、主要輸入先のオーストラリアからのデータを見れば一目瞭然で、まだまだ冷凍物が多く、うま味の残る冷蔵物の輸入が少ないからです。冷凍することで、肉の細胞膜が壊れやすく、解凍時に壊れた細胞膜から水分(うま味)が抜けることがよくあります。いわゆる、ドリップといわれる現象です。

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これがはやり始めているのは「やせる」「体に良い」という時代にマッチしたキーワードが先行しているからです。牛はもともと草だけを食べて生きる反すう動物で、4つの胃袋を持ち、何度もかみ返しながら牧草を消化します。日本で輸入可能なグラス・フェッド・ビーフの主産地であるニュージーランド、オーストラリアは、豊富な降雨量に恵まれ、長い日照時間等、牧草が育つには絶好の環境です。グラスフェッドは、ストレスのない環境での自然な飼育方法が牛本来の効果を引き出しています。

一方、普段、われわれが食べている牛肉は「グレイン・フェッド・ビーフ」(穀物飼育牛)と呼ばれ、穀物で飼育されています。日本では、霜降り牛肉を生産するために、牛舎内のさくに入れ、高カロリーの穀物飼料を与えて運動を制限し、人工的に太らせる飼育が主流です。

「肉塊UNO」の宇野オーナーにかわり店舗を切り盛りする弟の宇野店長もグラスフェッドビーフで減量に成功した(写真:筆者撮影)

「肉塊UNO」の宇野オーナーにかわり店舗を切り盛りする弟の宇野店長もグラスフェッドビーフで減量に成功した(写真:筆者撮影)

グラス・フェッド・ビーフ、グレイン・フェッド・ビーフのどちらが良いというのはありませんが、今回はすでに流行の兆しをみせるジビエとともに、今年の牛肉流行キーワードになると予測するグラス・フェッド・ビーフについて解説しましょう。本寄稿については、グラス・フェッド・ビーフをリーズナブルに提供する「肉塊UNO」(港区西新橋)宇野オーナーへのインタビューをベースに執筆しました。宇野オーナー自身も糖質制限を前提に、グラス・フェッド・ビーフを毎日食することにより、2カ月で体重を78キログラム→68キログラムへと健康的に10キログラム減量した実績を持っています。

宇野オーナー自身がグラス・フェッド・ビーフを食べてどのようにやせたのか? たいへん興味のあるところです。食事の一例としては、朝食は果物とゆで卵、昼食は焼き魚と小鉢などの定食、夕食はグラス・フェッド・ビーフ500~600グラムと野菜です。断糖ダイエットではなく、あくまで糖質制限をしたということで、たまにはパンやご飯などの炭水化物も摂取し、適度の運動も欠かしませんでした。2カ月継続した結果として、肌がきれいになり、安眠で疲れづらく、体調良好、おまけにやせる肉体を手に入れることができたといいます。

毎日食べていたグラス・フェッド・ビーフ (写真:筆者撮影)

毎日食べていたグラス・フェッド・ビーフ (写真:筆者撮影)

やせる効果の中心的な役割を担っていたのが、毎日食べていたグラス・フェッド・ビーフです。摂取することで、減量、美容、脳機能の改善、病気予防(がん予防や糖尿病の改善)にも効果的だといわれています。人類が古来から食してきた牛肉はグラス・フェッド・ビーフであり、グレイン・フェッド・ビーフと比較しても高い栄養価を保有しています。ストレスなく自然に育ったグラスフェッドが牛肉の持つ本来の効果を発揮するのもわからなくありません。

やせる体と健康な体に効果的な3つの理由

1. オメガ3という良質な脂質(グレイン・フェッド・ビーフの2~5倍)

代表格であるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(イコサペンタエン酸)は中性脂肪や悪玉コレステロール値を下げるだけでなく、血流を良くして代謝を改善させ、肌のハリを整え美肌効果があります。まさに良いことずくめの脂質です。

2. タンパク質が豊富

トリプトファンという体内で合成できない必須アミノ酸の一種を多く含んでいます。必須アミノ酸は9種類あり、グラス・フェッド・ビーフは多くのタンパク質を摂取できる貴重な食物です。この成分は気持ちを明るくし、安眠へと導く作用があります。

3. 共役リノール酸とカルニチンで脂肪燃焼(グレイン・フェッド・ビーフの2~5倍)

この2つがグラス・フェッド・ビーフの特徴であるやせる成分(脂肪燃焼効果)になり、豊富に含まれています。共役リノール酸は不飽和脂肪酸の一種で、体重を減らし、肝機能を向上させ、がんのリスクを低減します。カルニチンは脂肪酸体内燃焼に不可欠な物質であり、体脂肪燃焼やスタミナ源としての効果が期待されています。カルニチンは、脂肪酸をミトコンドリアに運搬する役目を担っており、体脂肪の燃焼を促進することで、ダイエットのサプリメントとして人気があります。草食動物由来の動物に多く含まれています。

今回はやせる体と健康な体に効果的な成分をご紹介しましたが、その他、ベータカロチン、ビタミンE、ビタミンB、鉄分も多く含有されています。

グラスフェッドビーフの効果的な食べ方

1日あたり300~500グラムの摂取が理想的(写真:筆者撮影)

1日あたり300~500グラムの摂取が理想的(写真:筆者撮影)

食べ続けて健康的にやせるために必要なのは、効果的な成分を持つグラス・フェッド・ビーフを継続的に食べ続けることです。継続することで、脂肪を燃焼させていくことになります。運動以外で筋肉量と脂肪の増減に大きく影響するのがタンパク質です。タンパク質が不足すると、原料不足で筋肉が減り、代謝が落ちて太りやすい体になってしまいますので、筋肉量の維持は必要です。このタンパク質を効果的に補充してくれているのが豊富な赤身量を誇るグラス・フェッド・ビーフなのです。グラス・フェッド・ビーフの摂取量の目安としては、1日当たり300~500グラムが理想的です。

やせることを考えるのであれば、合わせて糖質制限も必要不可欠なセットになります。糖質とは炭水化物から食物繊維を引いた残りの栄養素です。糖質と聞くと砂糖やお菓子を思い浮かべる人が多いようですが、主食と呼ばれるご飯、パンや麺類等にも豊富に含まれています。糖質制限食とはこのような炭水化物を極力控え、肉、魚、チーズ等の主成分がタンパク質、脂質の食品や葉物野菜を食べる食事法です。糖質制限の最大のメリットは、カロリー制限と違い、量を規制することもなく食べることができる点にあります。

シュラスコ方式で、じっくり火を入れて提供される(写真:筆者撮影)

シュラスコ方式で、じっくり火を入れて提供される(写真:筆者撮影)

塊肉を弱火でじっくり焼いていくのが、グラス・フェッド・ビーフの楽しみ方の1つです。「肉塊UNO」はシュラスコ方式で牛肉を提供するお店ですが、ランプとイチボは牛肉の状態に合わせて、60~120分程度、弱火でじっくり焼いていきます。通常のシュラスコ店が30分程度の焼き時間だとすると、いかにじっくり火を入れているかがわかります。

ただグレイン・フェッド・ビーフに比べると脂の含有量が少ないので、焼きすぎるとパサつく可能性があり、おいしくいただけません。じっくり火入れをし、レアからミディアムレアで食することをお薦めします。

脂がさっぱりしているので、塩とこしょうでいただくのも十分おいしいのですが、赤身肉にわさび、あるいはホースラディッシュという食べ方も非常にマッチします。

赤身肉が主流になることも?(写真:筆者撮影)

赤身肉が主流になることも?(写真:筆者撮影)

グレイン・フェッド・ビーフは、徹底した飼料の給餌方法、配合方法をマネジメントして育てられる、芸術品ともいえる牛肉です。ただ、牛肉をグローバルの観点からみると、以下の理由から長期的に赤身肉が主流になることも想定されます。

1. 霜降り(サシ)の入った肉を好むのはほとんどが日本というマイノリティな存在

2. 「東京でセルフ焼き肉がひそかに流行する理由」にも記載しましが、サシの多いA5ランクの牛枝肉自体もここ数年連続高騰

流行の兆しをみせる今年の前半こそ、肉好きにとってはグラス・フェッド・ビーフにトライする時期なのかもしれません。

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小関 尚紀:リーマン作家/MBA

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