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2016.12.28

トヨタ式「子どもでもわかる」片づけの極意|ポイントは「使用頻度」と「動作経済」

東洋経済オンライン

生産性が高い環境づくりをしましょう!(写真:hanack / PIXTA)

生産性が高い環境づくりをしましょう!(写真:hanack / PIXTA)

職場が散らかり放題なのに、見過ごしたまま年を越そうとしていませんか? 散らかっていて何の問題があるの?と思う人もいるかもしれませんが、そこにはあなたの生産性を下げる重大な何かが潜んでいるかもしれません。

前回の記事では、まずは不要なものを捨てるための手順をご紹介しましたが、今回はいらないものを捨てた後、それらを最もスムーズに取り出せる状態にして保管するやり方について『まんがでわかるトヨタの片づけ』からご紹介します。

「主作業」の最大化が生産性向上の要

片づけをしようとする際、知っておくといいことがあります。それは、人の動きはおおむね4つに分けられるということです。具体的には、①主作業 ②付随作業 ③準備・後始末作業 ④ムダ・例外作業です。

仮に「テーブルの上のお茶を飲む」場合で考えてみましょう。この場合の①主作業は「湯のみに口を当ててお茶を飲む」、②付随作業は「湯のみを手元に引き寄せる」「湯のみを口元に移動させる」ということ。この動作に関連する③準備・後始末作業は「急須にお湯を注いで、湯呑みにお茶を入れる」というものです。 また、④のムダ・例外作業はたとえばですが「急須や湯のみを探す」といったことをさします。

これらは一連の動作のように見えますが、価値を生み出しているのは主作業の「湯のみに口を当ててお茶を飲む」だけ。職場でもいつもバタバタと忙しそうにしている人は、一見しっかり仕事をしているように見えますが、付随作業やムダ・例外作業といった余計な動作が多いだけかもしれません。生産性の観点では、主作業以外の作業は極限までゼロにすることが望ましいですよね。

前回記事で紹介したように、いらないものを捨てることでものを探すムダ(ムダ・例外作業の排除)をなくすのは当然重要ですが、それだけでなく、ものを置く場所や置き方を工夫することで必要なものをスムーズに取り出せるようにすること、つまり付随作業の最短化もとても大事なのです。

ものの置き場所については、使用頻度と動作経済で決めます。わかりやすく言うと、使用頻度が高いよく使うものは、動作経済上の最適な位置である「取り出しやすい場所に置く」ということです。

動作経済とは、高い生産性で作業を行うために研究されたもので、ものは手足や視線の動きに極力ムリがない場所に配置することが合理的という内容です。

手の動きという観点でいくと、片づけたり取り出したりする際に、ひっくり返したり場所の微調整をする必要がないようにします。目線の観点では、顔より上の位置という見えにくい場所にものを置く場合には、どう置かれているか分かりやすいようにします。たとえば本棚に縦置きで並べられている本のようなイメージです。目線より下の場所に保管する場合には、小分け箱や紙コップなどを使って、上からみてわかりやすいように保管します。

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こうした工夫をすることで、動作のムダがなくなるだけでなく、気遣いや迷いなどの精神的な負荷もなくなります。片づけはたった1回やっただけではすぐ元に戻ってしまいます。片づいた状態を保つには、定着のためのしかけが重要なのです。このようにやりづらさを極限までなくすことも1つです。 片づけの開始直後はやる気で何とか乗り切ることができたとしても、回数を重ねてくると「面倒くさい」が勝って、結局元に戻ってしまいがちです。

ものの置き方

次に、ものの置き方についてです。ここで知っていただくと便利なのが、三定(さんてい)というキーワードです。三定とは、定位置(決まった場所に)、定品(決まったものを)、定量(決まった量だけ保管する)を言います。

基本となるのは、文字で何をいくつ保管するのかを記載する方法です。しかし、前述したやりづらさを極限まで排除するという観点では、書いている文字を「読む」のではなく視覚や感覚で「見てわかる」ようにする工夫が重要です。

小学校入学前の子どもでも内容を理解でき実行できるような状態であれば、ハナマルです。

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たとえば「子どもでもわかる・できる」手法としては、イラストや写真に加えて、線の活用も有効です。これには、あるものの置き場を線で囲む場合もあれば、倉庫である場所以上に積み上げることを禁止するために基準を明示する場合にも使えます。たった1本の線でもその線があることで、その位置に何らかの意味があることがわかります。

たとえば、スーパーでレジ待ちの列が買い物客の動線を妨げないように、適切な場所に列を線で示している場合。この場合には、お店側から特別な指示やアナウンスがなくても、自然と線で示した場所に列ができます。もし長々と文章化した書類でお客さんにこのように並んでくださいと掲示した場合はどうなったでしょうか。おそらく、よほど意識が高い人以外は読むことはなく、店舗側の意図どおりにはならないでしょう。このように、ビジュアルとしての線には人の行動を変える力があります。たかが1本の線、されど1本の線、です。

チームでやるから、わかりやすい・やりやすいは重要

ここまでやるなんて何だか子どもっぽくてイヤだと感じるかもしれません。しかし、子どもでもわかるほどシンプルで理解しやすいしくみであれば、誰でもスムーズに理解でき、簡単にルールを守ることができます。

わかりやすくシンプルであることは、チームで取り組む際には特に重要です。関係者が多ければ多いほど、片づけに対する意識や理解度が低い人材がいる可能性も高まり、ルールの解釈の幅も広がり、片づけの継続が難しくなります。

前述の動作経済の項目では動作面でムリを生まないことの重要性をお伝えしましたが、心理面でも同じことがいえます。「面倒くさい」「難しい」「判断に迷う」などの心理面でのムリは、継続のハードルをどんどんあげます。

デスクやクローゼットといった個人の空間のみならず 、 備品コーナーなど複数名で使用する共有スペースについては、「子どもでもわかる・できる」を意識しつつしくみを作りましょう。

リーダーを明確にしつつ、取り組みは全員でやる

最後に、片づけを定着させるための3つのポイントをお伝えします。この記事は職場の片づけについての内容なのですが、家庭でも応用することが可能ですので、その場合は組織を家族という言葉に置きかえて読んでみてください。

1点目は、リーダーを明確にすること。最初はキレイになった場所も、いつしか元に戻ってしまったという経験は、みなさんにも一度はあるはずです。これを回避するためには、責任と権限をもったリーダーを立てることが効果的です。特に複数名での共有スペースは「誰かがやるだろう」という流れになりがちなので、特に重要です。加えて組織内での認知を高めるために、組織トップが総責任者となり、メンバーの前でリーダーに権限移譲をすることが効果的です。もし家庭であれば、父親・母親のいずれかが、特定の家族を「片づけ大臣」として任命するのもよいでしょう。

2点目は、全員で取り組むこと。例外をつくることは乱れにつながり、結果として組織全体の士気も低下します。キレイな道ではゴミのポイ捨てをしない人も、ゴミだらけの道ではついついポイ捨てをしてしまうのと同じです。実際に手を動かすことは、片づけを自分事として取り組んでもらう効果があります。さらに、清掃活動などを一斉に行うことで、「みんなで一緒に取り組んでいるんだ」という一体感も醸成できます。このような点でも、年末の大掃除を家族全員で取り組むことは非常に意味があるのです。



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3点目は、定期的に実施をすること。一度は理想的な状態になっても、時間が経てば新しいものは増えるし、ゴミやホコリもでてきます。職場であれば、大きなプロジェクトが終了するタイミング、年に数回ある長期休暇の前後や毎週の決まった曜日など、さまざまな設定方法が可能です。家庭であれば、毎年年末の大掃除がまさにこれにあたります。

職場でも家庭でも片づけに取り組むことが多いこの季節。単に、「すっきりとキレイにする」だけではなく、今よりももっと楽に必要なことができる(=生産性が高い)環境づくりへの一歩として取り組んでみてください。

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岡内 彩:OJTソリューションズ

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