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2016.11.18

EDの原因は肥満・血管老化?妻も知るべき夫のカラダ

KenCoM公式ライター:藤澤未央

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男性の夜の悩みと軽視されがちなED(勃起機能障害)。実は、このEDは血管老化による生活習慣病のサインになっていることをご存知ですか?「最近夜が頑張れなくて」というアナタ、もしかするとそれは病気の前触れかもしれませんよ。今回は誤解されがちなEDについて、まじめに向き合ってみました。男性だけではなく、ご主人の健康が気になる奥様も必見ですよ!

夜の生活が上手くいかない・・・夫の健康に異変が?

「最近夜の生活がうまくいかない。」
「昔のように、最後まで頑張ることができない。」
そんな悩みを持つ中年男性が近年増えてきています。いわゆるED(勃起障害)ですね。

全くダメという人もいれば、数回に1度しか成功しない、まだ最後までもたない、長続きしないなど、人によって程度は様々ですが、日本人の3人に1人はEDの症状を抱えているともいわれています。

いまさらそんな機会もないし、そんなことで悩んでいるなんて人に知られたくないし…と、あまり表ざたにならないEDですが、軽視するのはやや危険かもしれません。EDの原因は様々ですが、ある種の病気の前兆ということもあるんです。では、詳しく見ていきましょう。

EDは血管が老化しているサインかも?

「陰茎動脈」は動脈硬化の障害を受けやすいという説も

EDになる過程やメカニズムには様々な説がありますが、EDをただの勃起障害とみるのではなく、動脈血管の障害と捉える見方があります。

実は、陰茎内部の動脈径は1~2mmほど。心臓の動脈径が3~4mm、頸動脈径が4~5mmということを考えると、動脈の中では異例の細さと言えますね。

書籍『できる男の活力マネジメント』(朝倉匠子)によると、
「陰茎の動脈は心臓の動脈や頚動脈に比べかなり細いので、動脈硬化の障害を最初に受けます。つまりEDの症状がみられるということは、陰茎の動脈が狭くなっているということであり、それは同時に、ほかの動脈も狭く、硬くなっている疑いがあるわけです」
と帝京大学医学部泌尿器科・主任教授 堀江重郎氏の講演内容が書かれ、EDの原因のひとつとして動脈硬化が挙げられています。

同書によるとEDは、「生活習慣病のファーストサイン」と位置づけて注意する必要があるということ。

EDはメタボと根深い関係にある

男性ホルモンの低下は、肥満を引き起こす

また、知っておきたい事実が、男性ホルモンの低下と、肥満、EDは密接に関係しあっているという事実です。男性ホルモンは年を重ねていくにつれ分泌量が減少します。30代を過ぎると分泌量が下がりますので、性欲が減退する場合があることは否めないでしょう。

性欲の減退だけではなく、男性ホルモンが低下すると肥満になりやすくなります。男性ホルモンには筋肉を作ったり、内臓脂肪を抑えたりするなど「スリムな体をキープする」という役割があるので、40代50代の男性に小太りの人が多い背景にはホルモンの影響もあるのです。

さらに、メタボ男性は男性ホルモンが少ないという研究結果もあり、またメタボになると動脈硬化を抑制する効果のある「アディポネクチン」というホルモンが出にくくなることも明らかになっていいます。前述のとおり動脈硬化はEDの一因となりえるため、肥満を回避することはEDを防ぐことにつながるのです。

加齢とともにおこる男性ホルモンの低下と肥満、そしてEDは深い関係にあるということです。

EDを遠ざけるライフスタイルとは

動脈硬化や男性ホルモン低下は、数あるEDの原因の中のひとつです。しかし、動脈硬化にならないよう食生活を見直し、男性ホルモン低下を防ぐために運動やストレスをためない工夫をすることは、どんな男性にとっても健康的。では、どのような生活を心がけるのが良いのでしょうか。

血管を痛めない食生活を

動脈硬化は、EDの原因のひとつに過ぎませんが、ほかの生活習慣病をも引き起こすため、動脈硬化を遠ざけるよう意識を向けていくことは健康な生活を送る上で欠かせないでしょう。

中性脂肪の摂りすぎに注意

HDLコレステロールとLDLコレステロールとのバランスが崩れると動脈硬化になりやすいのはご存知でしょうか。中性脂肪が増えると、HDLコレステロールが減少する一方で、LDLコレステロールが増加し動脈硬化が進行していきます。

脂質の摂りすぎは良くありません。脂身の多い肉は控え、植物由来の不飽和脂肪酸もバランスよく摂りましょう。

高血圧、糖尿病などで血管を傷つけない

国立循環器病研究センターのホームページによると、高血圧、糖尿病が刺激となって血管の内側を傷つけるとの内容が、示されています――。
「高血圧や糖尿病や感染などが刺激になって、内皮細胞が傷害されると、血中の単球(白血球)が内皮細胞にくっつくようになります。さらにこの単球は内皮細胞の間から潜り込み、『マクロファージ』と呼ばれる状態に変身します」

さらに、上記のような状態で、高コレステロールの状態となることについては、
「血液中のコレステロールが多すぎると、この『マクロファージ』が“呼び寄せ役”になって、脂肪物質がどんどん取り込まれてたまり、内膜が厚くなってきます」とあり、高血圧、高血糖が動脈硬化のきっかけにもなっていると言えます。

地中海食はおすすめの食事スタイル

では血管を痛めないバランスのよい食事って、どんなもの?と難しく思うかもしれません。
理想的な食生活の参考として、ユネスコの無形文化遺産にもなっている「地中海食」という、洋食でありながらメタボ改善にも良いとされている食文化があります。

【地中会食の定義】

・油脂類は主に「オリーブオイル」を用いる
・植物性食品が豊富
・加工度を最小限に留めたその地域で育てられた新鮮な食材を使う
・少しか、適量の乳製品を食べる
・卵は週に4個未満

などのいくつかの定義があります。旬の植物性の食品を中心に、上質な脂質などもバランスよく食べる食事として世界から注目を集めています。

小太りを防ぎ、夜の生活に強くなる運動を

男性ホルモンは加齢とともに減り続けるのは、前段でも述べたとおりです。男性ホルモンが減ると、性欲が減退したり、メタボ体形になってしまったりと、いいことはほとんどありません。

男性ホルモンの分泌をキープするための1つの策として、「運動」があります。先ほど「男性ホルモンは筋肉を作る効果がある」ということをお伝えしました。でも逆に言うと、「筋肉をつけると男性ホルモンを分泌することができる」のです。筋肉量があると男性ホルモン量が増え、筋肉が減少すると男性ホルモンの量も減る。つまり。筋肉量と男性ホルモンの分泌量は密接な関係があるのですね。

では、具体的にどんな運動をすればいいのでしょうか。男性ホルモン量を増やすための運動は、体の1部を鍛えるようなものではなく、「全身に筋肉をつける」ようなものがおすすめです。

より多くの部位の筋肉を使った方が、男性ホルモンの一種「テストステロン」の分泌が増えるという研究もあるので、ジムでのウェイトトレーニングよりは、最近流行りのボルタリングのような全身運動の方がいいでしょう。

そこまでやるのは無理…という方は、自宅でのスクワットも効果がありますよ。スクワットはセックス時に使う腰の筋肉「大腰筋」を鍛える効果もありますので、強靭な夜の生活をキープするためにもおすすめです。ぜひ習慣にしておきたい運動の1つですね。

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ストレスにはもちろんご注意

男性ホルモンが減少していく40代50代の男性は、なにかとストレスにさらされている、または家庭の問題が顕著化してくる年代です。

例えば、職場では板挟みの中間管理職、家庭では育児と介護のはざまで居場所がない、趣味にお金を割くほどのお小遣いもなく、妻や子どもからもあまり相手にされない…、など、いろいろな立場のツライお父さん像が見えてきます。

実は、男性ホルモンはとてもストレスに弱いもの。ストレスがかかると、男性ホルモンの分泌量が減るといわれています。男性ホルモンが減るから太り、太るからますます不健康な生活に陥ってしまうこともあります。

この悪循環を断ち切るには、ストレスをためない工夫をすることが1番です。職場でのストレスをすべて取り去るのは難しいと思うので、そのストレスを早めに解消する習慣を持ちましょう。

仕事帰りにバッティングセンターでボールをかっ飛ばすのもいいですし、お気に入りのウイスキーで奥様と晩酌するなんていう楽しみもいいと思います。また、寝る前にぬるめのお風呂にゆっくり入浴するなど、意識してリラックスした時間を持つことで、ストレスを明日に持ち越さないようにするのがおすすめですよ。

ストレス解消に最も効果があるのは、奥様との夜の楽しみ…でしょうか。EDが心配で最近疎遠という方もいるかもしれませんが、最後まで到達しなくても肌の触れ合いを感じるだけで不思議と気持ちがほぐれていくと思いますよ。

奥様の協力も大切です。ダンナ様がたとえEDであっても、そこはあまり気にせずにハグを楽しむくらいの気持ちでいると、ダンナ様の気持ちに傷をつけることはないですよ。
昔のように…を求めるのではなく、ありのままの今を受け止めることが、家庭内を円満に築いていくコツです。ぜひ、お試しください。

夜の夫婦円満は、健康の証

年だからとあきらめがちなEDを改善するには、体と心の両方から見ていく必要があります。

また、EDを遠ざける生活を心がけることは、夜の夫婦生活を充実させるだけではなく、スリムで筋肉質な体を維持する効果もあります。調の変化には常に気を配っておきましょう。

運動、食事、ストレス解消。できることから行動していくことが大切です。そうすれば、いつまでも現役な夫婦生活を楽しみながら、スリムで健康な体まで手に入れるなんてオイシイ話も、夢じゃないかもしれませんよ。

参考文献

<著者プロフィール>

■藤澤未央(ふじさわ・みお): 
IT関連での勤務後、出産を機に退職。現在は子育ての傍らフリーライターとして活動中。主に、人間関係のコミュニケーション術や子育てノウハウ系の記事を得意とする。大切にしていることは「誰にでもわかりやすく、人の心に寄り添うライティング」。

<監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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