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2016.10.07

【津下先生のメタボの本質⑧:養生訓】江戸時代と現代、命をうばう病気は?

津下一代

江戸時代の偉大な儒者であり、自然科学に広く通じていた貝原益軒。益軒の時代には飢饉のときに備えて脂肪を蓄えられる人が生き残りました。しかし、飽食の現代ではその能力がかえって寿命を縮めることにつながります。
糖尿病・肥満を専門とし、厚生労働省における「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定にも携わる、あいち健康の森健康科学総合センター・センター長 津下一代先生が、メタボに悩むあなたに知ってほしい基礎知識をわかりやすくご紹介する連載記事です。

江戸時代の健康おたく?「養生訓」を残した貝原益軒

没後300年を迎えた貝原益軒(かいばらえきけん)さん。
乳幼児死亡を除いて計算すると、平均寿命50年の時代に84歳まで生き抜き、晩年に完成させた養生訓は、今でも役立つ教訓が豊富です。若いころは存在は知れど関心持たずでしたが、人生後半になると、天が定めた命(天年)という話が気になるものですね。

益軒さんは寿命の上限を100歳とし、60歳以上を長生きと考えています。50歳未満で亡くなる方が多かったので、養生してせめて60歳以上まで生きようと促しています。300年後の世では9割以上が60歳に到達しようとは、益軒さんもさぞや驚いていることでしょう。

脂肪蓄積、血液凝固も飢饉に備えたからだの機能

人生50年時代は低栄養、感染症、外傷による失血死などが主な死因でした。飢饉(ききん)のときも餓死しないよう脂肪を蓄える能力を持つ人が生き残りました。出血してもすぐに血を固め、血圧が低下しないよう血管を収縮させる機能を私たちは持っています。外部からの菌を退治する免疫機能が感染症から身を守ってくれます。

こうした脂肪蓄積や血液凝固、昇圧反応、血管炎症。全て動脈硬化の原因です。体は病気になる素質も持ち合わせているので、病気に近寄らないよう生活習慣に気をつけることが今は大切なのです。

<著者プロフィール>

記事画像

■津下一代(つした・かずよ):
あいち健康の森健康科学総合センターセンター長兼あいち介護予防支援センター長(現職)。
医学博士、日本糖尿病学会専門医・糖尿病療養指導医、日本体育協会公認スポーツドクターなどの資格をもち、糖尿病、肥満、スポーツ医学の専門医として活躍。日本肥満学会理事、日本人間ドック学会理事、厚生労働省にて日本健康会議実行委員会委員をつとめ、「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定に携わる。主な著書に「しなやか血管いきいき血液―健康寿命をのばすために知っておきたい65のはなし」「図解 相手の心に届く保健指導のコツ―行動変容につながる生活習慣改善支援10のポイント」など。その他、「NHKきょうの健康 コレステロール・中性脂肪対策のごちそう術」の監修も務める。

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