2024.03.28
市販の合わせ調味料に頼らなくても簡単。中華のごちそう、えびのチリソース炒め【減塩ごはん】
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、健康な日本人の成人男女が目標とするべき食塩摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満。でも実際の日本人の食塩摂取量の平均値は10.1gで、平均2gを上回っている状況です。さらに2024年度国民健康づくり計画『健康日本21(第3次)』からは、食塩摂取量の目標値を7g未満に定めることが明らかになっています。
塩分を摂りすぎると高血圧のリスクが高まります。日本人の3人に1人は高血圧といわれており、特に注意すべき生活習慣病です。減塩を習慣化することにより生活習慣病予防はもちろん、未来の健康づくりを行うことができるのです。
本連載『減塩ごはん』では、定番レシピを減塩しながら美味しく仕上げるレシピを管理栄養士の磯村優貴恵さんに教えていただきます。
市販の合わせ調味料に頼らないえびのチリソース炒め【減塩ごはん】
子どもから大人まで大好きな中華料理の定番といえば、プリプリのえびのチリソース炒め。中華料理は塩分が高くなりがちですが、調味料を一工夫するだけで、おいしく減塩できます。
材料(2人分)
冷凍むきえび(大) 10尾
エリンギ 1本
長ねぎ 1/2本
生姜 1片
にんにく 1片
日本酒 大さじ1
油 大さじ1/2
顆粒鶏がらスープ 小さじ1/2
水 100mL
【調味料】
トマトペースト 大さじ1
スイートチリソース 大さじ1
【水溶き片栗粉】
水 小さじ2
片栗粉 小さじ1
塩分量(1食あたり)
塩分量:1.4g
一般的なレシピの塩分量:2.2g
※このレシピは、一般的なレシピと比較すると、約36.3%減塩になります。
主な栄養成分(1食あたり)
エネルギー 124kcal
たんぱく質 9.1g
脂質 3.4g
炭水化物 13.8g
糖質 11.6g
作り方
1. えびは解凍して背ワタをとり酒を揉みこむ。エリンギはひと口大の乱切りに、長ねぎ、生姜、にんにくはみじん切りにする。
2. フライパンに油、にんにく、生姜を入れ弱火にかけ、香りが立ったら長ねぎを入れ中火で炒める。
3.長ねぎがしんなりとしたらエリンギとえびを加え炒め、えびの表面に火が通り白くなったら水と顆粒鶏がらスープを加えて全体を混ぜ、そのまま2分ほど加熱する。
4.【調味料】を加えて全体を混ぜ、ふつふつと沸いたら弱火にしさらに2分ほど加熱したのち、【水溶き片栗粉】を回し入れ全体を混ぜ合わせる。
5. さらに1分ほど加熱してとろみがついたら、器に盛って完成。
このレシピのポイント
#1 香味野菜はゆっくりじっくり火を入れる
にんにくに含まれているアリシンという臭いの元となる成分は、弱火でゆっくりと加熱することでアホエンやジチインという成分に変わり、香ばしさを生み出します。
はやる気持ちを抑えてじっくり作ることがおいしさの秘訣です。
#2 エリンギで栄養もプラス
定番のえびのチリソース炒めに入っていないエリンギは、乱切りにしてエビと似たようなプリっとした食感に仕上がり、かさ増しに。栄養面でも優秀で、腸内環境を整える食物繊維を補い、塩分排出に一役買ってくれるカリウムも補えます。
#3 冷凍むきえびの塩分に気をつけよう
冷凍のむきえびには、塩分が含まれており、メーカーによって食塩相当量が異なります。今回は100gあたりの食塩相当量が0.9gのものを使用した場合の栄養価を算出しました。意外な食材にも塩分が含まれていることがあるので、お店で選ぶ際には注意しましょう。
【減塩豆知識】調味料の種類を減らせば減塩しやすい
中華料理は複数の調味料を使うことが多く、今回のレシピでも、一般的には豆板醤、砂糖、酢、ケチャップなどを使います。また、最初から調味料を合わせた便利商品もありますが、減塩には向きません。
今回はスイートチリソースを活用して、使用する調味料の種類を最低限にしました。スイートチリソースはエスニック料理で使われる調味料のひとつ。甘味、酸味、辛味があり、えびのチリソース炒めの定番の味が再現できます。
さらに大さじ1杯あたりの食塩相当量は0.6gほど。えびのチリソース炒めでよく使われている豆板醤の食塩相当量は小さじ1杯あたりでおよそ1gなので、4割も減塩が可能なのです。また、ケチャップもトマトペーストに変えることで、トマトの濃厚なうま味を残しながら塩分をカットすることができました。
なお、スイートチリソースも豆板醤も現在は様々な種類があり、メーカーによって塩分に多少の違いはあります。使う前に表示を確認しておくとよいでしょう。
美味しく続ける!減塩ごはんの10箇条
その1. 旨味を活用
昆布、かつお、しいたけ、のりなどの旨味食材を活用することで、少ない塩分でも美味しく食べることができます。
その2.酸味で満足感を
酢、レモン、梅干しなどの酸味は刺激にもなり、料理にメリハリが出て塩分が少なくとも満足感の高い仕上がりになります。
その3.香りを感じられる1品プラス
レモンやすだちなど、香りのよい柑橘系を使用するほか、焼いた時の香ばしさ、温かい湯気とともに広がる香りを意識して調理をすると、満足感が高まります。
その4.スパイスで刺激をプラス
カレー粉、山椒、黒こしょうなど、スパイスを使いましょう。塩分控えめだと、どうしても始めは物足りなく感じてしまう方もいます。そんなときには、スパイスの刺激を上手に活用して、料理の味を引き締めたり、風味を引き立てましょう。
その5.とろみで味をまとめる
料理にとろみを持たせることで、舌の上に乗っている時間が長くなり、味をしっかりと感じることができます。とろみは片栗粉や小麦粉はもちろん、米やじゃが芋などの芋類でもつけることが可能です。
その6.“かける”から“つける”へ
醤油やソースを上からかけるとついかけすぎたり、必要以上に食材に染みたりすることで結果として塩分の摂りすぎに。小皿に少量の醤油(ソース)を出し、それをつけながら食べるという方法で調味料をどのくらい使ったか視覚的にもわかりやすく、塩分の調整に役立ちます。
その7.加工食品は控えめに
ソーセージやベーコンは保存性を高めるためにも、多くの塩分が含まれています。一度にたくさん食べ過ぎないように注意が必要です。
その8.献立にメリハリを
減塩すると最初は味気なく感じてしまうことも。だからこそ、食べるものすべてを減塩すると食の楽しみが半減してしまうかもしれません。まずは、メインは減塩、副菜はいつも通り、など1食の献立の中でもメリハリをつけることで、無理なく減塩を続けることができます。
その9.表示確認を習慣化
梅干し・だしパック・味噌など同じ食材でもメーカーや種類によって塩分濃度は全く異なります。まずは、買い物するとき、商品の裏側にある食品表示を見ることを習慣化しましょう。
その10.減塩商品を活用
最近は様々な商品で、減塩タイプがあります。例えば、醤油、みそ、料理酒、缶詰など。「塩分の計算が難しい」「忙しくて考えていられない!」という方は、いつも手に取っている商品や調味料を減塩タイプに変えることで、手軽に減塩生活を始めることができます。
『減塩ごはん』の連載は本記事が最終回です。ご愛読いただき、ありがとうございました。
記事情報
引用・参考文献
『八訂 早わかりインデックス 食材&料理カロリーブック』主婦の友社
著者プロフィール
磯村優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆、食育講座など幅広く活動中。
制作
文・レシピ・写真:磯村優貴恵