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2024.03.02

女性の多くが悩んでいる。尿もれを予防&改善する骨盤底筋トレーニング【簡単!身体メンテ】

kencom公式:理学療法士・石田佑也

筋肉や関節の柔軟性を高めることを目的にした運動をストレッチングといいます。有酸素運動や筋力トレーニングとは違って、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防に効果的かどうかはまだエビデンスが十分ではないですが、習慣的なストレッチやヨガが血圧低下につながったり、柔軟性の高い人は動脈硬化になる確率が低いことがわかっています。またストレッチ以外にも、セルフメンテナンスで身体のコリや疲れを緩和することも重要です。

本連載『簡単!身体メンテ』では、理学療法士の石田佑也さんに体の悩みを解消するセルフメンテナンスの方法を教えてもらいます。

実は、尿もれに悩む女性は多い

Adobe Stock

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今回のテーマは女性の尿もれです。走ったり、重いものを持ったり、くしゃみをしたりした拍子に思いがけず尿が漏れてしまう。これを、腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)と呼びます。

ある研究では、40代の女性の1〜5割は尿もれの経験があると答えています。(※1)女性は出産、加齢、生理などによって、骨盤底筋(こつばんていきん)が緩むことによって、腹圧性尿失禁が起こりやすくなるのです。

尿もれを予防するには骨盤底筋を鍛えよう!

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骨盤底筋の上には、膀胱や尿道、子宮などの内蔵器があり、これらをコントロールしており、腹部を下から支える重要な筋肉です。。骨盤底筋の機能不全が起こると、膀胱や尿道、子宮を支えたり、コントロールすることができなくなり、尿もれに繋がります。さらに骨盤底筋の機能不全は血流低下も引き起こし、尿道や膀胱近辺に痛みが生じることもあります。

骨盤底筋は、インナーユニットと呼ばれ、腹横筋、多裂筋、横隔膜、骨盤底筋の4つの筋肉から構成されています。この4つの筋肉のうち1つでも機能不全が起きると、ユニットとして全ての機能が低下してしまいます。

女性の場合、出産、加齢などによってこれらの機能が低下して、尿もれが起こりやすくなると考えられています。そのほかにも、猫背により腹横筋が短縮して出力発揮ができなくなったり、反り腰によって多裂筋が短縮、もしくは横隔膜が下制しなくなるなど、姿勢が悪くなると骨盤底筋の機能が低下してしまうこともあります。

この悪循環を改善するために、骨盤底筋を意識して働かせることができればよいのですが、骨盤底筋は意識的に収縮させるのが難しい筋肉です。そもそも骨盤底筋が不活性になる原因は、その他のインナーユニットが機能不全になっていること。ですから、骨盤底筋そのものではなくて、機能不全になっている“原因”に対して改善トレーニングをする必要があります。

鍛えるべきは、横隔膜・ 内転筋・大殿筋

骨盤底筋を活性化させるためには

1. 横隔膜(呼吸するときに骨盤底筋と連動している)
2. 内転筋(内閉鎖筋は骨盤底筋と繋がっている)
3. 大殿筋(肛門括約筋を経由して骨盤底筋と連動している)

この3点をを鍛えることです。これらがきちんと機能する身体づくりを行いましょう!

尿もれ改善のためのエクササイズ

#01 横隔膜の機能改善エクササイズ

©yuya ishida

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【やり方】
1. 膝を立てた状態で床に寝ます。
2. 両手を天井に向けて伸ばします。
3. 膝と股関節が90°になるように両脚を持ち上げて、この状態をキープしたまま深呼吸を1分間続けます。

3セット行いましょう。

深呼吸は、4秒かけて吸って、4秒かけて吐くことを意識します。両手両足を上げた状態は、“3month position”(生後3ヵ月の赤ちゃんの姿勢)と呼ばれており、最も横隔膜が下制しやすい状態を作れます。下腹部も収縮しやすい状態で、腹横筋にも刺激を与えて機能回復を促進することができます。

#02 内転筋の機能改善エクササイズ

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【やり方】
1. 床に座り、横向きになります。左肘を肩の真下の床に付け、左足(身体の下側)を膝と股関節を90°に曲げて、右足(身体の上側)の膝を90°に曲げます。
2. 右腕を上に上げます。
3. 前方のものを取るようなイメージで体を前方に伸ばします。逆側も同様に行います。

左右10回ずつ行いましょう。

動かしているのは腕ですが、骨盤が前に回旋することで、下側の内転筋への刺激になります。腕だけでなく、骨盤や体幹も前方に回すように身体を動かすのがポイントです。

#03 大殿筋の機能改善エクササイズ

©yuya ishida

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【やり方】
1. 床に寝転がり、椅子などに足をのせ、膝と股関節が90°になるポジションになります。
2. 踵で軽く椅子を押し、お尻を持ち上げます。

1セット10回、2セット行いましょう。

椅子を使うことで、通常のヒップリフトよりも骨盤を後傾させやすく、お尻(大殿筋)へ刺激を与えやすくなります。ポイントは腰ではなく、お尻を下から浮かせていくこと。負担がかかりやすい腰椎の反りも抑えることができます。

症状が軽いうちから対策しよう!

軽い尿もれは、骨盤底筋の機能低下のサインかも知れません。今回ご紹介した3つのエクササイズは、骨盤底筋を活性化させることができるため、尿もれの予防や改善、血行不良による尿道や膀胱近辺に痛みの改善が期待できます。症状が軽いうちにトレーニングを始めましょう。

最後に、生理中の尿もれは、ホルモンバランスの影響も受けています。生理に関してもし下記のような症状があれば、エクササイズではなく、医療機関で受診しましょう。

・ふらつきまたは失神や気絶などの突然の意識消失(たとえ短時間であっても)
・危険なレベルの低血圧(収縮期100以下、拡張期60以下)
・突然のひどい痛み(特に吐き気、嘔吐、大量発汗、または興奮を伴う場合)
・発熱または悪寒
・閉経後の性器出血

また、これ以外にも尿もれで困っていたり、生活に支障が出てしまっている方は、泌尿器科に相談してみましょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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石田佑也(いしだ・ゆうや)
理学療法士・ランニングシューズマイスター・医療美容系ビデオグラファー
「1分1秒ベストなコンディション」をテーマに東京・神奈川を中心にアスリートからビジネスパーソン、キッズまで1万人以上のコンディショニングを行う。東京オリンピックメディカルトレーナーに選出され、世界のトップアスリートのコンディショニングにも携わる。ウェブメディアで理学療法士×シューフィッター×陸上競技選手の3つの視点からランニングシューズについての記事執筆、ウェブメディアの運営も行う。2021年から医療・美容系ビデオグラファーとしての活動も開始。健康経営のためのピラティス動画などの制作も行う。

制作

文・写真:石田佑也

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