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2024.02.01

白と緑で栄養価が違うって知ってた?血液サラサラ効果も期待できる長ねぎを徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を、管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

2月の旬野菜は“長ねぎ”です。関連記事では、長ねぎを美味しくいただくレシピもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

食卓に欠かせない長ねぎは冬が旬

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寒い季節といえば鍋料理、それに欠かせないのが長ねぎ。調理のしやすさ、他の食材との合わせやすさから、鍋料理以外にも使い勝手が良い食材として、食卓でもおなじみです。長ねぎは通年出回っていますが、本来の旬は11月から2月頃の寒い時期。この時期に摂りたい栄養成分が豊富な野菜です。

【栄養】緑色部分と白い部分は栄養価が違う!

Adobe Stock

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長ねぎの白い部分と緑の部分では、含まれる栄養素量が異なります。栄養成分表には部分別の栄養価が掲載されていませんので、以下で紹介する栄養価は、白色部分は根深ねぎの、緑色の部分は葉ねぎのものをご紹介します。

長ねぎの緑の部分は、葉身(ようしん)と呼ばれ、比較的絡みが強いです。白い部分は、葉鞘(ようしょう)と呼ばれ、甘味が強く火を通すととろっとした食感になります。

ビタミンC

ビタミンCはアスコルビン酸ともいわれ、コラーゲンの生成に必須の栄養素です。また、メラニン色素の生成の抑制、強い抗酸化作用を持ちます。風邪予防の免疫力アップにも効果が期待できる栄養素です。

多くの哺乳動物は体内でビタミンCを合成できますが、人は合成することができないため、食事から摂る必要があります。ビタミンCが不足すると、肌荒れ、血管がもろくなる、顔色が悪くなる、鉄分の吸収が悪くなり貧血になりやすくなる、等が挙げられます。

長ネギの葉鞘には14mg、葉身には32mgのビタミンCが含まれています。ビタミンCは大量に摂っても尿として排出されてしまうため、少しずつこまめに摂るのが良いとされています。長ねぎは、少しずつ料理に加えて食べられるのでビタミンCの摂取しやすい野菜です。

注意点は、茹でるとビタミンCが溶け出し、半分ほどの量になってしまうこと。スープなどであれば、汁ごと食べて溶けだしたビタミンCを余すことなくいただきましょう。

βカロテン

β-カロテンは小腸壁でビタミンAに変わる、前駆体(ぜんくたい)と呼ばれる物質です。抗酸化力を持ち、有害な活性酸素を消去するため、老化やガンの抑制効果が期待できます。

β-カロテンをもとに身体の中で変換されるビタミンAは、皮膚や喉、鼻、肺、消化菅などの粘膜を正常に保つ働きをします。そのため、感染症予防や免疫力の向上に役立っています。不足すると感染症にかかりやすくなったり、夜間など暗いところで目が見えづらくなる夜盲症になりやすくなったりすることが知られています。

長ネギの葉鞘には、β-カロテンが100gあたり82μg、葉身にはなんと100gあたり1,500μgが含まれています。これをビタミンAに換算するとそれぞれ100gあたり7μg、120μgとなり、葉身に多く含まれていることがわかります。ビタミンAの1日の摂取推奨量は30歳から64歳の成人男性で900μg、成人女性で700μgですから、葉身を食べることで、効率よく摂取することができるのです。

なお、β-カロテンは脂溶性で水に溶けない性質で、油と一緒に調理したり摂取すると吸収率が一層高まります。

カリウム

カリウムは、ナトリウムの排出を促す作用があり、様々な研究によって血圧低下や脳卒中の予防につながることが分かってきています。積極的に摂ってほしい栄養素ですが、腎臓機能に障害がある方は注意が必要です。

1日の摂取目安量は18歳以上の男性で2,500mg、女性で2,000mgですが、目標量は18歳以上の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上。長ネギの白い部分にはカリウムが100gあたり200mg、緑の部分には100gあたり260mgが含まれています。

長ねぎに含まれるカリウムは熱を加えても成分に影響がありません。炒め物などにするとかさが減り、生のままでは食べるのが難しい量でも無理なく食べることができます。

カルシウム

カルシウムは体内に最も多く存在するミネラルで、体重の1~2%を占めています。このうち99%は、骨や歯などの硬い組織に存在しています。残り1%のカルシウムは、血液や筋肉、細胞に分布し、細胞の情報伝達、筋肉の収縮、神経の働きをサポートするなど大切な役割を担っています。

カルシウムは、乳製品などに多く含まれることで知られているので、長ねぎに含まれていることを意外だと思われる方も多いのではないでしょうか。葉鞘にはカルシウムが36mg、葉身には80mgが含まれています。

カルシウムは日本人に不足しがちな栄養素です。もともと体内への吸収率があまりよくない栄養素であることに加え、日本の伝統的な和食にはカルシウムを多く含む乳製品を使ったメニューが多くないことも不足する一因。ちりめんじゃこやしらすなど、小魚を積極的に摂ることで補いたい栄養素です。

アリシン

長ねぎの香りは“アリシン”という成分によるものです。アリシンは長ねぎの他にも、にんにくや玉ねぎなど、香りの強い野菜に含まれ、糖質の代謝を高めるビタミンB1の吸収を高めたり、その効果を持続する働きがあります。

他にも血栓を予防するといわれており、血液サラサラ効果も期待できます。

【選び方】色がはっきり分かれて水分が多いものを選ぼう

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【美味しいねぎの特徴】
・葉先までピンとしていて弾力がある
・白い部分と葉身がはっきり分かれている
・白い部分の中身が詰まっていて重い

葉身は、畑で土から上に出ていた部分で、よく日に当たり育成したことを見分けることができます。緑と白、それぞれの部分の色がはっきりしているものがよいでしょう。また、葉鞘の巻きがしっかりしていて、触るとしまりがよく、弾力があるものが美味しい長ねぎだとされています。重みがあるということがこれも水分が多く新鮮な証拠でもあります。葉先までピンとしているのは、水分が失われず新鮮だという証拠です。水分が失われている長ねぎは、収穫から時間がたってしまっている可能性がありますので避けましょう。

【保存法】使う時のことを考えてカットして冷凍しよう

冷蔵保存する

野菜は生育状態に近い形で保存すると、鮮度を保ちやすいとされていますので、長ねぎを冷蔵庫に入れるときは畑で育っていたときと同じように立てて保存します。ただし、長ねぎは名前のとおり長いため、そのままでは冷蔵庫に入りません。野菜室に入れる前に、長さにカットしましょう。

冷蔵庫に入れた長ねぎが、気づいたらからからに乾いていた経験がある方もいるでしょう。長ねぎは水分が失われやすく、皮も硬くなりやすい野菜ですから、いかに水分をキープするかが上手に保存するカギになります。

カットした長ねぎは湿らせたペーパータオルで包んで保湿してください。もちろん全体を包むのが望ましいのですが、なるべく少ないペーパータオルで効果的にしたい場合、下部をペーパータオルで保湿するのが保管のコツです。そのうえでラップで巻き、切り口から水分が蒸発するのを抑え、最後に密閉袋に入れて冷蔵庫に入れましょう。

冷凍して保存する

左:1本を半分にしたもの 右上:小口切り 右下:みじん切り

左:1本を半分にしたもの 右上:小口切り 右下:みじん切り

そのまま冷凍

使い方が決まっていない場合は、冷凍庫にしまいやすい長さに切ってラップをし、密閉容器に入れましょう。調理に使うときは、凍ったままでも包丁で切ることができます。

カットして冷凍

長ねぎは冷凍に向いている野菜です。味噌汁に便利な小口切り、チャーハンや薬味、つくねなどに必要なみじん切り。長ねぎが必要なメニューは多数ありますが、使うのは少量のことが多く、その都度切るのが面倒だと感じている方も多いのではないでしょうか。

そんな時に便利なのが、用途に合わせて切って冷凍保存する方法です。解凍不要でそのまま使用できますし、凍ったままでも使いたい分だけ簡単にほぐれるメリットもあります。

上手なみじん切りのコツ

みじん切りにする際は縦に切れ目を入れるのが一般的ですが、あちらこちらにぴょんぴょんと向いてしまい切るのが大変だったことはありませんか。ここでは簡単に上手にできるみじん切りの方法をご紹介します。

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1. 根元を切り落としたら横向きに置き、斜め45度で半分程度の深さまで細かく切り込みを入れる。そのあと、裏返して同じように切り込みを入れる。

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2. 蛇腹(じゃばら)が出来上がる。

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3.端から細かく刻むとみじん切りの出来上がり。

【豆知識】あまった長ネギで作る栄養たっぷり簡単スープの作り方

あまった長ねぎを簡単に美味しく食べられる方法をご紹介します。冷蔵庫に残っている野菜なども一緒に使えば、無駄なく食品ロス削減にも役立ちます。参考にしてみてください。

【材料】

ねぎ 適量
お好みの野菜 適量(マグカップに入る程度)
削り粉 小さじ1
味噌 小さじ1
湯 100mL

作り方

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1.冷蔵庫に余っている野菜を電子レンジ調理可能なマグカップに入れる。保存していた長ねぎの白いところを好みの形に切る。緑の部分は繊維を断つように薄く切り、これらもマグカップに入れる。

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2.入れた材料の全体重量100gに対して電子レンジ600wで2分加熱する。じゃがいもやカボチャなど、火の通りの悪いものを一緒に入れた場合は100gあたり2分30秒などと長くするとよいでしょう。

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3.削り粉、味噌、湯を加え電子レンジでさらに30秒加熱する。

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4.味噌をよく溶いて出来上がり。

小腹が空いた時などに、手軽に長ねぎの栄養を摂ることができます。ぜひ試してみてください。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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