2023.11.23
野菜のうま味とスパイスで塩分30%オフ。食物繊維も豊富な牛丼【減塩ごはん】
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、健康な日本人の成人男女が目標とするべき食塩摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満。でも実際の日本人の食塩摂取量の平均値は10.1gで、平均2gを上回っている状況です。さらに2024年度国民健康づくり計画『健康日本21(第3次)』からは、食塩摂取量の目標値を7g未満に定めることが明らかになっています。
塩分を摂りすぎると高血圧のリスクが高まります。日本人の3人に1人は高血圧といわれており、特に注意すべき生活習慣病です。減塩を習慣化することにより生活習慣病予防はもちろん、未来の健康づくりを行うことができるのです。
本連載『減塩ごはん』では、定番レシピを減塩しながら美味しく仕上げるレシピを管理栄養士の磯村優貴恵さんに教えていただきます。
野菜プラスでヘルシー仕上げなのに食べ応えじゅうぶんな牛丼
手軽に食べられて満足できるメニューといえば丼物。中でも人気の牛丼ですが、味が濃いめなことが多い上、野菜が少なく栄養も偏りがち。今回のレシピでは減塩しながら、きのこやネギをたっぷりと加えることで食物繊維もプラスでき、満足感やうま味をアップします。
材料(2人分)
牛肉(切り落としか薄切り) 150g
玉ねぎ 1/2玉
まいたけ 1/2パック(50g)
こねぎ 3本
生姜 1/2片
酒 大さじ2
しょうゆ 大さじ1.5
【調味料】
だし汁 100mL
みりん 大さじ1
砂糖 小さじ1
ごはん 茶碗2杯分(300g)
七味唐辛子 少々
塩分量(1食あたり)
塩分量:2.1g
一般的なレシピの塩分量:3.0g
※このレシピは、一般的なレシピと比較すると、約30%減塩になります。
※食塩無添加のだしパックを使ってとっただし汁を使用しています。
主な栄養成分(1食あたり)
エネルギー 556kcal
たんぱく質 17.1g
脂質 25.4g
炭水化物 68.6g
糖質 64.7g
作り方
1. 牛肉に日本酒を加えて軽く揉みこむ。まいたけは手で小房に分け、玉ねぎは半分に切って薄切り、こねぎは斜め切り、生姜は千切りにする。
2. 鍋に【調味料】と玉ねぎ、まいたけ、生姜を入れ、蓋をして中火にかける。煮立ったら弱火にし、玉ねぎが透き通るまで5分ほど煮る。
3. 蓋をあけ、中火にして牛肉を入れほぐすように混ぜ合わせる。半分くらいの牛肉の色が変わったら、しょうゆを回しかけてこねぎを加え、牛肉に火が通るまでさらに2分ほど加熱する。加熱中にアクが出てきたら取り除く。
4. 器にごはんを盛り、3をのせて仕上げに七味唐辛子を散らせば完成。
このレシピのポイント
#1 まいたけで食物繊維をプラス
まいたけには食物繊維がたくさん含まれているため、丼物のように栄養が偏りがちなメニューにプラスするのに、おすすめの食材です。歯ごたえのある食感が薄切り肉と似ていることもあり、かさまし食材としても役立ちます。また、うま味成分も多めです。
#2 煮込んだ玉ねぎの甘さで味わいが増す
煮込むことで辛味成分が揮発し、自然な甘みが出てくる玉ねぎ。牛丼のような甘みのある味付けの料理は、玉ねぎが本来持っている甘みを活かすことで、調味料が少なくても美味しく仕上がります。
#3 牛肉の臭みのカバーには生姜や酒を活用!
生姜や酒は、牛肉独特の臭みを抑える効果があります。また、赤身の肉は長時間加熱すると硬くなりやすいため、火にかけるのは最後にしましょう。さっと軽く火を通すことで硬くなりすぎずに仕上がります。
#4 だしの塩分に注意
だしパックや顆粒だしは手軽で重宝しますが、食塩が多く添加されているものがあります。今回のレシピに使ったのは、食塩無添加のだしパック。裏面の表示をしっかりと確認して、塩分が少ないものを選ぶようにしましょう。
【減塩豆知識】アクセントの七味唐辛子は風味を確認して
Adobe Stock
仕上げに振りかける七味唐辛子は、柚子の皮やこしょう、山椒などの日本独特なブレンドスパイスです。スパイスは料理のアクセントとなり、減塩レシピでも満足感が高まります。
七味唐辛子は毎日使うものではないためあまりがちで、開封してから時間がたってしまうことも。色があせたり香りが飛んで本来の力を発揮できないこともあります。香りや辛味は料理の大切なアクセント。使う前に風味の確認をしっかり行いましょう。
美味しく続ける!減塩ごはんの10箇条
その1. 旨味を活用
昆布、かつお、しいたけ、のりなどのうま味食材を活用することで、少ない塩分でも美味しく食べることができます。
その2.酸味で満足感を
酢、レモン、梅干しなどの酸味は刺激にもなり、料理にメリハリが出て塩分が少なくとも満足感の高い仕上がりになります。
その3.香りを感じられる1品プラス
レモンやすだちなど、香りのよい柑橘系を使用するほか、焼いた時の香ばしさ、温かい湯気とともに広がる香りを意識して調理をすると、満足感が高まります。
その4.スパイスで刺激をプラス
カレー粉、山椒、黒こしょうなど、スパイスを使いましょう。塩分控えめだと、どうしても始めは物足りなく感じてしまう方もいます。そんなときには、スパイスの刺激を上手に活用して、料理の味を引き締めたり、風味を引き立てましょう。
その5.とろみで味をまとめる
料理にとろみを持たせることで、舌の上に乗っている時間が長くなり、味をしっかりと感じることができます。とろみは片栗粉や小麦粉はもちろん、米やじゃが芋などの芋類でもつけることが可能です。
その6.“かける”から“つける”へ
醤油やソースを上からかけるとついかけすぎたり、必要以上に食材に染みたりすることで結果として塩分の摂りすぎに。小皿に少量の醤油(ソース)を出し、それをつけながら食べるという方法で調味料をどのくらい使ったか視覚的にもわかりやすく、塩分の調整に役立ちます。
その7.加工食品は控えめに
ソーセージやベーコンは保存性を高めるためにも、多くの塩分が含まれています。一度にたくさん食べ過ぎないように注意が必要です。
その8.献立にメリハリを
減塩すると最初は味気なく感じてしまうことも。だからこそ、食べるものすべてを減塩すると食の楽しみが半減してしまうかもしれません。まずは、メインは減塩、副菜はいつも通り、など1食の献立の中でもメリハリをつけることで、無理なく減塩を続けることができます。
その9.表示確認を習慣化
梅干し・だしパック・味噌など同じ食材でもメーカーや種類によって塩分濃度は全く異なります。まずは、買い物するとき、商品の裏側にある食品表示を見ることを習慣化しましょう。
その10.減塩商品を活用
最近は様々な商品で、減塩タイプがあります。例えば、醤油、みそ、料理酒、缶詰など。「塩分の計算が難しい」「忙しくて考えていられない!」という方は、いつも手に取っている商品や調味料を減塩タイプに変えることで、手軽に減塩生活を始めることができます。
記事情報
引用・参考文献
『八訂 早わかりインデックス 食材&料理カロリーブック』主婦の友社
著者プロフィール
磯村優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆、食育講座など幅広く活動中。
制作
文・レシピ・写真:磯村優貴恵