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2023.10.05

低カロリー野菜!冬野菜の代表格・白菜を徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を、管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

10月の旬野菜は“白菜”です。関連記事では、白菜をたっぷり美味しくいただくレシピもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

調理しやすく大量に食べられる冬野菜の代表格

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くせがなくやわらかい食感で煮たり、漬物にしたり、炒めたりと大活躍する冬野菜の代表的存在の白菜。貯蔵性が高く、野菜が不足しがちな冬場に大活躍します。白菜は内葉、外葉、芯など部位によって、味わいや栄養が異なります。料理の際にはそれぞれの特徴を活かしましょう。

【栄養】低カロリーで栄養満点

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂) イラスト:Adobe Stock

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂) イラスト:Adobe Stock

白菜は、他の野菜と比較しても100gあたりのエネルギーが少ない低カロリー野菜です。体重が増えやすい冬場の頼もしい味方です。また、ビタミンCやカリウム、食物繊維を含み、栄養面でも優れています。

ビタミンC

ビタミンCはアスコルビン酸ともいわれ、コラーゲンの生成に必須の栄養素です。また、メラニン色素の生成の抑制、強い抗酸化作用を持ちます。風邪予防の免疫力アップにも効果が期待できる栄養素です。

多くの哺乳動物は体内でビタミンCを合成できますが、人は合成することができないため、食事から摂る必要があります。ビタミンCが不足すると、肌荒れ、血管がもろくなる、顔色が悪くなる、鉄分の吸収が悪くなり貧血になりやすくなる、等が挙げられます。

白菜100gには、ビタミンCが19mg含まれます。白菜は食べやすい野菜ですから、1日に必要なビタミンCの量100mgにも大きく貢献してくれます。

カリウム

カリウムは体液の浸透圧を調整したり、神経や筋肉の情報伝達にも関係している重要なミネラルです。特筆すべきはナトリウムの排出を促す作用。日本人のカリウム摂取量は不足傾向にあります。積極的に摂って欲しい栄養素ですが、腎臓機能に障害がある方は注意が必要です。

健康な人の場合、摂取量を増やすことによって血圧低下、脳卒中予防につながることが様々な実験や疫学調査により分かってきています。

カリウムは汗で排出されてしまうため、多量の汗をかくと浸透圧の調整がうまくいかず脱水症状を起こすこともあります。通常の健康な状態でバランスの良い食事をしていればカリウムは欠乏しません。冬場は大量の汗をかくこともないので安心ですが、下痢・嘔吐などで大量に損失すると、浸透圧調整機能が崩れたり、食欲不振などを引き起こすことも。風邪などの感染症時は注意が必要です。

食物繊維

少し前まで、食物繊維は、人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体と定義され、食べ物の役に立たない部分として評価されていませんでした。しかし、現在では研究が進み、食物繊維摂取量と主な生活習慣病の発症率または死亡率の関連を検討した疫学研究のほとんどで、負の相関(摂取量が多い方が発症率・死亡率が下がる)が見られる貴重な栄養成分であることが分かっており、第六の栄養素と言われるほどになっています。

厚生労働省が出している日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日あたりの食物繊維の目標量は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上ですが、現代人は不足傾向。

食物繊維は、腹持ちが良くなり、食べすぎ防止、空腹を感じにくくなる効果も期待できるため、積極的に摂りたい栄養素のひとつです。白菜100gには1.3gの食物繊維が含まれています。白菜は調理次第でたっぷりと食べやすい野菜ですから結果的に多くの食物繊維を摂取することが期待できます。

【選び方】美味しい白菜の特徴は?

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【美味しい白菜の特徴】
・ずしっと重い
・葉先までかたく巻きがしっかりしている
・上部に弾力がある
・切り口が白い

カットして売られている場合は、葉がすき間なくギッシリと詰まっているか、断面が直線かもチェック事項です。切り口が盛り上がっているものは時間がたってしまっていますので避けましょう。

【保存法】涼しい場所で常温保存、小さくなったら冷蔵庫へ

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野菜は生えているときと同じ向きで保存すると長持ちする傾向があります。保存環境にかかわらず、白菜は立てて保存しましょう。

常温保存する

丸ごと購入してきたら芯は取らず、丸ごと新聞紙で全体を包んでください。冬の寒い時期は、冷蔵庫の野菜室でなくても、玄関やベランダなどの涼しい場所で保存できます。しばらくすると、外側の葉が変色してきますが、天然のラップとして水分蒸発を防ぎ、内側のおいしさを守ってくれます。

使うときには、乾燥している一番外側の葉は取り外せばOK。外から順に葉を外して料理に使っていき、小さくなったら冷蔵庫の野菜室へ。

冷蔵保存する

カットされているものは、芯があると葉が成長を続けて、鮮度が落ちるとされています。冷蔵庫に入れる前に、芯を少し切り落とすと良いとされています。

また水分の蒸発を防ぐため、キッチンペーパーでくるんでからラップをして、冷蔵庫で保存しましょう。

茹でて冷凍する

使いやすい大きさに切り、軽く茹でて水けを絞ってから密閉袋に入れて冷凍しましょう。
冷凍するとやわらかくなりますので固めに茹でるのがポイントです。

生のまま冷凍する

生のままでも冷凍保存がききます。

使いやすい大きさにざく切りしたものでも、細長い状態でもどちらでもOKです。密閉袋に入れて冷凍しましょう。

栄養面では生のまま冷凍するのがおすすめ

冬場になると大きな白菜が売られていて、一気に食べるのは難しいという家庭も多いと思います。常温でも保存可能ですが、長期保存なら冷凍することになります。その場合、どう言った形で冷凍すると良いのか、比較してみました。

記事画像

奥:生・長いまま冷凍
手前左:生・切って冷凍
手前右:茹で・切って冷凍

■味:茹でて冷凍の方が若干甘みがあり雑味がない
■見ため:加熱してからの方が皮に皺が寄り少しかさついている印象
■かたさ:生のままの方がシャキシャキ感が残る

味に大きな違いはありませんでした。

栄養面でいうと、茹でて水気を切るという時点でカリウムやビタミンCなどの栄養損失があります。また、ビタミンCは冷蔵保存よりも冷凍の方が壊れにくい傾向があります。

茹でた場合、水気を切って粗熱をとってから冷凍する必要がありますが、生だとその手間がありません。また、生のままはバラ凍結になり取り出しやすいというメリットがあります。

栄養面と手間から、白菜は生のまま冷凍するのが優れていると言えるでしょう。長いままか、カットするかは冷凍庫の大きさ、包丁、どんな料理に使いたいかにもよって変わります。長いままで冷凍したものは、1枚ずつ簡単に外すことができ、簡単に切ることができました。切り方をその都度変えたいという方は長いままで冷凍してもよいでしょう。ご自身の包丁の切れ具合と、ご自身のライフスタイルに合わせて使い分けるのがよいでしょう。

解凍するときは生のものは、100gあたり電子レンジ600wで1分15秒加熱が目安。茹でているものは硬さにもよりますがほぼ同じ時間で問題ないです。

【豆知識】白菜の黒点はポリフェノールだった

白菜の白い部分に黒いつぶつぶがついているのを見たことがある方も多いでしょう。実はあの黒点は、汚れでも傷んでいるわけでもありません。

黒いつぶつぶの正体は、ポリフェノール。ポリフェノールは、ファイトケミカルの一種で植物が作り出す物質のこと。ファイトケミカルとは、植物が紫外線や虫等から自分を守るために作りだす、色素や香気成分、アクなどの成分の事を指します。これらは、体内で抗菌作用、免役力向上など良い働きをしてくれることが分かっています。

代謝の仕組みや摂取基準はまだ研究途中ですが、第7の栄養素として注目されている成分ですから、人に有益な働きをするもの。黒点がついているからといって、「食べられるのかな?」と心配する必要はありません。しかし、苦みを持つ傾向にあるため、一度にあまりたくさんは食べない方が良いでしょう。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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