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2023.09.07

抗酸化作用で錆びにくい身体へ。ナスを徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を、管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

9月の旬野菜は“ナス”です。関連記事では、美味しい旬のナスを味わうレシピもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

いつでも食べられるナスの旬は夏から初秋

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ナスといえば、つやのある紫色ですよね。この色素はナスニンといわれる成分によるもので、強い抗酸化作用があります。もうひとつ注目したい独特の成分が生活習慣病の予防が期待されているクロロゲン酸。さらに、ナスは93%が水分で非常に低カロリーで、血糖値上昇を緩やかにする食物繊維や、塩分を排出するカリウムが豊富です。

ポリフェノール(ナスニンとクロロゲン酸)

食事摂取基準に記載はされていませんが、ファイトケミカル(※)であるナスニンやクロロゲン酸が含まれています。ファイトケミカルは大きく分けて3つの注目グループがあり、カロテノイド・ポリフェノール・硫黄化合物があり、ナスニンやクロロゲン酸はポリフェノールのグループに属します。ポリフェノールはほとんどの植物に存在する色素や苦みの成分で、人に有益な働きをするものとして注目されています。

ナスニンはナス特有のアントシアニン系の色素で血栓予防や血液の流れをよくするといわれています。さらに抗酸化作用により、細胞のサビを取り除く効果が期待できます。

ナスを切ると黒く変色することがありますよね。それはクロロゲン酸の作用によるもの。クロロゲン酸はコーヒーなどに含まれる成分です。コーヒーを毎日飲む人は飲まない人に比べ肝がんや直腸がんにかかるリスクが低いという研究発表があり、この効果がクロロゲン酸ではないか、と言われています。ほかに血糖値の抑制や生活習慣病の予防などにも期待されている成分です。

※ファイトケミカル、とは植物が作り出す化学物質の事。植物が紫外線や虫等から自分を守るために作りだす、色素や香気成分、アクなどの成分の事を指します。ファイトケミカルは体内で抗菌作用、免役力向上など良い働きをしてくれることが分かっています。代謝の仕組みや摂取基準はまだ研究途中ですが、第7の栄養素として注目されている成分です。

カリウム

カリウムは体液の浸透圧を調整したり、神経や筋肉の情報伝達にも関係している重要なミネラルです。特筆すべきはナトリウムの排出を促す作用です。日本人のカリウム摂取量は不足傾向にあります。積極的に摂って欲しい栄養素ですが、腎臓機能に障害がある方は注意が必要です。健康な人の場合、摂取量を増やすことによって血圧低下、脳卒中予防につながることが様々な実験や疫学調査により分かってきています。

カリウムは汗で排出されてしまうため、多量の汗をかくと浸透圧の調整がうまくいかず脱水症状を起こすこともあります。通常の健康な状態でバランスの良い食事をしていればカリウムは欠乏しません。しかし下痢・嘔吐などで大量に損失すると、浸透圧調整機能が崩れたり、食欲不振などを引き起こすこともありますので注意が必要です。

【選び方】美味しいナスの特徴は?

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【美味しいナスの特徴】
・全体の紫色が均一
・皮にハリがある
・ヘタの切り口がみずみずしい
・持つとずっしりと重いもの

紫色が濃いほうがナスニンが豊富な傾向です。そして、ナスは非常に水分が多い野菜ですから、皮のハリが失われていると古くなっている可能性があります。

また、ヘタの部分の棘がしっかりと立っている物、触ると痛いような物が新鮮とされています。本当に新鮮なものは指に刺さることもあるので、気を付けてください。

ナスの種類

長ナス、米ナス、丸ナス、水ナスなどいろんな種類のナスがあります。旬の時期は普段見かけないものも出回りますので、それぞれの特徴を理解して旬を味わい尽くすのもよいですね。

中長ナス:定番で使い勝手も良い

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長さが12~15cmほどの長卵形ナスで、もっとも市場に流通し日本全国で栽培されています。ハウス栽培ものも多く、年中見かけるのはこの品種です。

ほどよいやわらかさと扱いやすい大きさで人気の種類。揚げ、焼き、炒め、蒸し、と調理法も選びません。幅広い料理に利用することができます。

丸ナス:甘みがあり煮崩れしにくい

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大ぶりで丸い形が特徴的で、京都の賀茂ナスが代表的です。果肉はきめ細かく甘味がありしまっています。

半分に切って揚げて田楽にしたり、煮崩れしにくいので煮物にも向いています。

米ナス:皮が固く調理しやすい

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丸ナスと米ナスの見分け方で一番の特徴はへたの色にあります。米ナスはアメリカのナスを改良したもので、大ぶりで、ヘタが緑色です。

皮が硬く、果肉も密で煮崩れしにくいので、詰めものをして煮たり、焼きものにしたりするのがおすすめです。丸ナスのように半分に切って揚げて田楽にするのも美味しいですよ。

水ナス:漬物など生食に

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ずんぐりとした卵型で、通常のなすより水分量が多く、大阪南部の泉州地方で生産されている「泉州水なす」が有名です。

皮が薄く、普通のナスよりアクが少ないため漬物や、塩もみして和え物にするなど生食に向いています。

【保存法】長期保存なら丸ごと冷凍が便利!

常温保存する

冬場、室温が寒い場合は常温でも2日程は保存可能です。ナスは水分が失われやすいので、密封袋に入れて保存しましょう。

冷蔵保存する

基本的には冷蔵庫で保存するのがおすすめです。もしナスに水滴がついているようでしたらそこから雑菌が繁殖していたむ原因になるので、注意して。冷蔵庫に入れる前に、水気を拭き取ってから密閉袋に入れます。ナスの適温は8~12度と言われていますので、冷えすぎない野菜室に入れましょう。

丸ごと冷凍する

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丸ごと冷凍するときはラップにくるみジッパー付き密閉袋に入れて冷凍しましょう。使うときはそのまま使いたい分を切って水にさらしてあく抜きをし炒め物や味噌汁などに使うことができます。

切って冷凍する

好みの大きさに切り、そのままジッパー付き密閉袋に入れて冷凍可能です。解凍するときのあく抜きが面倒な場合は冷凍前に行っておくとよいでしょう。その場合は水気をしっかりとのぞいてから冷凍するようにしましょう。使いたい分をそのまま使えるので便利に使えます。

揚げて冷凍する

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「揚げナスが美味しいのはわかっているけど、大量に食べるわけではないし、その都度揚げるのはちょっと…」という方におすすめしたいのが揚げて冷凍保存する方法です。

使うときに便利な大きさに切ったナスを揚げ、油を切ったら、クッキングシートを敷いたバットに並べ冷凍します。凍ったらジッパー付き密閉袋に入れましょう。こうすることでくっつくことを防ぎ、ばらばらの状態で取り出しやすく使いやすくなります。

使い方はパスタや和風ハンバーグのトッピング、煮物、和え物と万能!

おすすめの長期保存は丸ごと冷凍

ナスは、丸ごと凍らせても、そのまま切ることが可能。そのまま冷凍庫に入れるだけなので、手軽で使い勝手が良かったです。

もし、太く、切りにくい場合は電子レンジで30秒ほど加熱すれば柔らかく切りやすくなります。凍ったナスを切ると、断面がギザギザになってしまいますが、そのおかげで味が絡みやすくなります。

【豆知識】冷凍ナスを美味しくいただく!5分でできちゃうナスのめんつゆレンジ煮

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冷凍庫から取り出して5分後には完成する美味しいナスのレシピをご紹介します。生のナスよりも冷凍ナスのほうが味しみがよいようです。

ナスは1本80~100gと副菜の1品にちょうど良い量です。非常に低カロリーなので、ダイエットの時の副菜はもちろん、あと一品欲しい時に便利です。ナスのナスニンやカリウムもしっかり摂れるので栄養素的にも優秀です。

【材料】

冷凍ナス 1本
めんつゆ 大さじ1/2
水 大さじ1/2
お好みで 鰹節適量

作り方

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1. 冷凍したナスを1センチ厚さの輪切りにし、水に2分ほどさらし、あくを抜く。

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2. 耐熱容器にめんつゆ、水とナスを入れ、電子レンジ600wで2分加熱する。

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3. お好みで鰹節をのせれば完成!

カットして冷凍すると表面がギザギザにならないというメリットがあります。しかし、保存袋に入れるのにも気を使いますし、少し取り出しにくいというデメリットもあります。食べ切れなかった切ったものをもったいないから冷凍するというのならカットして冷凍するのも良いと思いますが、カットする手間と使い勝手を考えると丸のまま冷凍するのが便利だと思います。

ただ、ご自身の包丁の切れ具合と、とても大きなナスだとさすがに冷凍のまま切れない場合もあるかと思いますので、ご自身のライフスタイルに合わせて使い分けるのがよいでしょう。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

『一生役立つ きちんとわかる栄養学』飯田 薫子・寺本 あい・監修 西東社
『栄養の基本がわかる図解事典』中村丁次・監修 成美堂出版

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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