2023.08.19
背中、硬くなってないですか?首と腰の痛みを背中ストレッチで解消しよう【簡単!身体メンテ】
筋肉や関節の柔軟性を高めることを目的にした運動をストレッチングといいます。有酸素運動や筋力トレーニングとは違って、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防に効果的かどうかはまだエビデンスが十分ではないですが、習慣的なストレッチやヨガが血圧低下につながったり、柔軟性の高い人は動脈硬化になる確率が低いことがわかっています。またストレッチ以外にも、セルフメンテナンスで身体のコリや疲れを緩和することも重要です。
本連載『簡単!身体メンテ』では、理学療法士の石田佑也さんに体の悩みを解消するセルフメンテナンスの方法を教えてもらいます。
背中が硬くなるってどういうこと?
©️yuya ishida
近年のライフスタイルから、デスクワークの継続による肩こりや腰痛に繋がる大きな要因になる不良姿勢が増えています。
人間の背骨は頚椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個と細かく存在しています。それぞれが関節で繋がっているため、人間は曲がったり反ったり回したりと身体を自由に動かすことができます。
しかし、猫背の影響で背骨の関節が動きにくく、硬くなってしまうことがあります。やっかいなのが、動かしやすい関節と動かしにくい関節がはっきりしてしまうことです。
例えば、こんなことを経験したことはありませんか?
「身体を反っただけなのに腰が痛い」
「上を向いただけなのに首の後ろが痛い」
本来、背骨はひとつひとつが動くものですが、猫背などで背骨が動きづらくなると、背骨の中でも動かしやすい部位だけが過剰に動いてしまい、首や腰に負担をかけてしまうのです。
本来、それぞれの関節がしっかり動いていれば、極端に負担がかかることはありません。動かして痛いということは、もしかしたら背骨の関節が硬くなっていることのサインかもしれないのです。
今回は、身体を支え、いつでも自由に動かすために重要な役割を果たす背骨の動きについてご紹介します。
痛みがでやすい2つの部位。原因は胸椎の硬さにあるかも
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特に首と腰の痛みの原因になりやすいのが、胸椎の硬さです。胸椎は、図にあるように頚椎の下の部分から腰椎の上までの部分を指します。
首の痛みを感じる場合の胸椎の硬さチェック
ふと上を向いたときに首の後ろ側が痛い時はありませんか。そんな方は、頭部が前方にある状態で、胸椎が硬くなっている可能性があります。
【チェック方法】
上を向く動作をする。
首に痛みが出る場合、胸椎の硬さを疑います。胸椎が硬く、頭部が前方位の状態だと、頚椎の上の部分だけで伸展をしてしまうので、そこだけに負担がかかり、痛みが出てしまうのです。
正常にスムーズな頚椎の伸展動作ができている場合は、少し胸を張るような状態で胸椎も伸びていることを感じられるでしょう。
本来なら、頚椎と胸椎がバランスよく伸展してくれるので、極端に負担のかかる部位はない動きです。猫背の人は特にこの胸椎というのが伸びにくくなってしまい、頚椎だけがメインで動いてしまい、負担が強くなってしまいます。
腰が反りやすい場合の胸椎の硬さをチェック
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人間には、安定させたい関節と動かしたい関節が決まっていて、頚椎や腰椎は安定させたい、胸椎は動かしたい関節です。ですから、可動性を重視した関節の動きが制限されれば、本来は安定性を重視している関節が動かざるを得なくなり、負担となります。
【チェック方法】
身体を反らせる。
腰だけが反ってしまっていたら、胸椎の硬さを疑います。反って痛みがある場合、誰かに腰骨を抑えてもらって痛みが変化すれば、それは腰椎の反り過ぎになります。
頚椎も腰椎も、感覚的には動かしやすい関節ですが、上記のチェックで痛みを感じる方は、胸椎の動きが伴っていない可能性があります。大切なことは「胸椎がしっかり動かせること」です。
この後紹介する、胸椎をしっかり動かすエクササイズで胸椎をしっかりと伸ばして可動域を増やしましょう。
胸椎をしっかり動かすエクササイズ
#01 キャットバック
©️yuya ishida
【やり方】
1. 四つ這いもしくは、両手を椅子の座面に当てた状態で、みぞおちあたりが頂点になるように背中を大きく丸める。
2. その姿勢から頂点の部分を下におろすように反る。
3. ゆっくり胸を張るように反る。胸椎が伸展しているのを感じられたらOK。8カウントでゆっくりと上下運動するようにしましょう。
1日5〜10回行いましょう。
勢いをつけて行うと、先に腰が反ってしまい腰を痛める可能性がありますので、ゆっくり行いましょう。それぞれの工程の動作を維持してストレッチさせるような時間は不要です。丸める→反る→丸める→反るをテンポよく繰り返しましょう。
キャットバックは胸椎の屈曲伸展の運動になります。反り腰からの腰痛改善が期待できます。この動きがスムーズにできるようになると、本来動くべき胸椎の可動域が広がり、頚椎だけの伸展や腰椎だけの伸展がなくなって、痛みの原因を解消できるはずです。
#02 ソラシックツイスト
©️yuya ishida
【やり方】
右手を椅子の座面に当て、もう左手を後頭部に当てる。そこから右肘を動かすように下におろしたあと、右肘を上にあげるようにして、できるだけ天井方向に向かって大きく広げる。開く〜閉じるをそれぞれ8カウントずつ左右交互に行う。できるだけ腰を動かさないように注意する。
左右各5回ずつ行いましょう。
それぞれの工程の動作を維持してストレッチさせるような時間は不要です。しっかりと胸椎が伸びたことを確認して、腕を上下させましょう。
この動きで肩甲骨と胸椎の動きが促され、胸椎だけを使って身体を回せるようになり、腰椎への負担を軽減します。また、猫背の影響で身体が開きにくくなっている人には、胸の筋肉のストレッチにもなり、肩甲骨の動きの改善にも繋がります。
痛みが出るのは「頑張りすぎている」からかもしれません
慢性的な痛みの本質として知っておいてほしいこととして、痛みが出るところというのは、そこに負担がかかり続けているため
「頑張りすぎている状態」
だということです。そして別なところに
「サボっている状態」
があることも忘れないでください。首を動かしたときに痛いというのは、胸椎がサボって動いてくれないので、頚椎だけが頑張って動くために負荷がかかりすぎて痛みが出ているのかもしれません。腰を動かしたときに痛いというのは、胸椎がサボって伸びたり回旋してくれず、腰椎だけが頑張って動くので、負荷がかかり腰痛になる可能性が高まります。
首や腰が痛くてマッサージに行くけど、時間が経つと、なんでまた痛みが出るのかということを考えてみましょう。それは、サボっている部分が働いていないのでまた同じ部位が頑張り続けてしまうからかもしれません。大事なのは、サボっている部位をいかに動かしてあげるかです。サボっている部位が動くようになれば、頑張りすぎている部分の負担は減るので、ダメージは軽減するでしょう。
特に胸椎は姿勢の影響から硬くなりやすいうえに、動かす機会を作ってあげないと、感覚的に動かしやすい首や腰だけに頼りがちになります。ですから、背骨の中で最も大事になってくるのは胸椎になります。胸椎が自由に動くようになるだけで日常の動きが非常に楽になるはずです。
・胸椎を曲げたり伸ばしたりするキャットバック
・胸椎を開閉するソラシックツイスト
この2つを毎日習慣化すると、胸椎の伸びや回旋が出るようになり、頚椎と腰椎の過剰な動きが軽減します。
慢性疼痛の原因はまだ完全には解明されていませんので、上記の原因以外も考えられます。なかには重大な病気が潜んでいる場合もありますので、痛みが長引くときには、早めに医療機関を受診しましょう。
記事情報
引用・参考文献
著者プロフィール
石田佑也(いしだ・ゆうや)
理学療法士・ランニングシューズマイスター・医療美容系ビデオグラファー
「1分1秒ベストなコンディション」をテーマに東京・神奈川を中心にアスリートからビジネスパーソン、キッズまで1万人以上のコンディショニングを行う。東京オリンピックメディカルトレーナーに選出され、世界のトップアスリートのコンディショニングにも携わる。ウェブメディアで理学療法士×シューフィッター×陸上競技選手の3つの視点からランニングシューズについての記事執筆、ウェブメディアの運営も行う。2021年から医療・美容系ビデオグラファーとしての活動も開始。健康経営のためのピラティス動画などの制作も行う。
制作
文・写真:石田佑也