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2023.08.03

抗酸化作用があるリコピン豊富!トマトを徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を、管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

8月の旬野菜は“トマト”です。関連記事では、トマトの旨味をたっぷりと味わうレシピもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

食卓に欠かせないトマトの旬は初夏から夏にかけて

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年中出回っており、食卓に欠かせないトマト。日本に伝来したのは17世紀後半とされています。食用として急速に生産量が増加したのは1960年代前半から。野菜の中では比較的歴史が浅い方といえるでしょう。

初夏〜夏にかけて露地栽培のトマトは旬を迎えます。秋以降は価格も上がる傾向がありますので、安くて美味しい旬のトマトを今こそトマトを堪能しましょう。

【栄養】抗酸化作用豊富で美肌・アンチエイジング効果が期待できる!

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トマトの特徴といえば、鮮やかな赤色ですよね。この色素はリコピンといわれる成分によるもので抗酸化作用があると言われています。抗酸化作用とは、活性酸素から体を守ること。老化、がん、シワ、しみ、糖尿病や脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病の原因となる活性酸素の酸化を抑えてくれる効果が期待できるのです。

トマトには、リコピンのほかにもビタミンAの前駆体βカロテン、ビタミンC・E、カリウム等が豊富に含まれています。

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ちなみに、トマトとミニトマトではミニトマトの方が栄養価が高い傾向があることはご存知でしょうか、。ただし、ミニトマトとトマトのカロリー当たりの密度を見ると、栄養素に大差はない印象です。彩りに少量を使いたい時にはミニトマト、たっぷりと食べたい時は普通のトマトと使い分けるのも良いでしょう。

リコピン

食事摂取基準に記載はされていませんが、ファイトケミカル(※)であるリコピンも含まれています。ファイトケミカルは大きく分けて3つの注目すべきグループ、カロテノイド・ポリフェノール・硫黄化合物があり、リコピンはカロテノイドのグループに属しています。

カロテノイドはその中でもカロテン類とキサントフィル類に分かれ、リコピンはカロテン類に属します。これ自体が強い抗酸化作用を持ちますが、カロテノイド類の抗酸化作用は複数の色素をとると効果が上がるとされているため、βカロテンを含むトマトはより効果的といえるでしょう。

※ファイトケミカルとは植物が作り出す化学物質のこと。植物が紫外線や虫等から自分を守るために作りだす、色素や香気成分、アクなどの成分の事を指します。ファイトケミカルは体内で抗菌作用、免役力向上など良い働きをしてくれることが分かっています。代謝の仕組みや摂取基準はまだ研究途中ですが、第7の栄養素として注目されている成分です。

βカロテン

βカロテンは体内で必要に応じてビタミンAに代わる栄養素です。ではビタミンAに変化する前だと良い効果がないか、というとそうではありません。βカロテンはそれ自体で抗酸化作用を持ちます。紫外線や大気汚染、ストレスなどは活性酸素を発生させ、体をさびつかせてしまいます。βカロテンは、これらから身を守ってくれる効果があります。

ビタミンA

βカロテンから必要に応じてビタミンAが作られます。ビタミンAは視覚機能の健康を保つのに有効な栄養素です。目の網膜にある光を感じる物質であるロドプシンの生成に必要で、不足すると夜盲症などの異常が生じます。

また、のどや鼻、消化器などの粘膜を正常に保ち、細菌感染や乾燥防止に役立ちます。細胞の成長、分化にも不可欠です。脂溶性ビタミンなため、脂質とともにとると吸収率が上がります。

ビタミンC

ビタミンCはアスコルビン酸ともいわれ、コラーゲンの生成に必須の栄養素です。また、メラニン色素の生成の抑制、強い抗酸化作用を持ちます。多くの哺乳動物は体内で合成できますが、人は合成することができないため、食事から摂ることが必要となります。

ビタミンCが不足すると、肌荒れ、血管がもろくなる、顔色が悪くなる、鉄分の吸収が悪くなり貧血になりやすくなる等が挙げられます。

ビタミンE

末梢神経を広げ、血行を良くする働きもありことから肩こりや頭痛冷え性など、血行不良から生じる不調の改善にも期待される栄養素です。抗酸化作用が強く、細胞膜の老化防止にも期待ができます。

脂溶性ビタミンのため、食用油や種実類に多く含まれる傾向にあり、カロリーも必然的に上がってしまうのですが、トマトは低カロリーで、ビタミンEが摂れる優秀な野菜なのです。

カリウム

カリウムは体液の浸透圧を調整したり、神経や筋肉の情報伝達にも関係している重要なミネラルです。特筆すべきはナトリウムの排出を促す作用です。日本人の摂取量は不足傾向にあります。積極的に摂って欲しい栄養素ですが、腎臓機能に障害がある方は注意が必要です。健康な人の場合、摂取量を増やすことによって血圧低下、脳卒中予防につながることが様々な実験や疫学調査により分かってきています。

カリウムは汗で排出されてしまうため、多量の汗をかくと浸透圧の調整がうまくいかず脱水症状を起こすことも。通常の健康な状態でバランスの良い食事をしていればカリウムは欠乏しません。しかし下痢・嘔吐などで大量に損失すると、浸透圧調整機能が崩れたり、食欲不振などを引き起こすこともあります。

【選び方】美味しいトマトの特徴は?

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・色が均一
・皮にハリがある
・ずっしりと重いもの

真っ赤に熟しているものほどリコピンが豊富な傾向にあるため、栄養価が高く、良品です。ヘタの緑色が濃く、ピンとみずみずしいかもチェックしてください。ヘタがしおれていたり、全体的に黄色っぽくなっていたりするものは、鮮度が落ちている証拠です。

【保存法】未熟なトマトは室温、完熟トマトは野菜室へ

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リコピンの含有量は完熟するにつれ増加します。リコピンとカロテンが増え、緑色のクロロフィルが消えていくことで赤色が目立っていくとされています。この変化は20度から25度で最も早く、10度以下、もしくは30度以上では赤くならず黄色くなるとされています。

追熟の最適な温度は21度。果実が均一に成熟し、着色が最もよくなるとされています。完熟トマトの場合は低温貯蔵が向いており、温度は8~10度、湿度は90~95%で4~7日ほどの貯蔵が可能とされています。

未熟なトマト:クーラーがついている室温で赤くなるまで追熟
完熟トマト:野菜室で冷蔵保存

購入してきたトマトがまだかたく、赤くなければクーラーがついている室温で赤くなるまで追熟するとよいでしょう。すでに真っ赤に熟したトマトであれば、トマト同士がくっつくと、その部分から傷みやすくなります。重ならないように並べ、ヘタを下にして野菜室で冷蔵保存します。熟した時が味も栄養もピークですから早めに食べるのが良いでしょう。

カットして冷凍保存する

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食べきれないときは冷凍保存がおすすめ。好きな形にカットして、保存袋に少し余裕を持たせた状態でいれ、冷凍します。冷凍したトマトは食感がやわらかくなるので、サラダよりもソース、スープなどの加工調理にむきます。

丸ごと冷凍する

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トマトもミニトマトも丸ごと冷凍してもOKです。生のまま丸ごと冷凍用保存袋に入れ、空気を抜いて、ヘタを下にするのがポイント。

【豆知識】冷凍トマトは皮がするっとむける!?

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トマトを冷凍する方はあまり多くはないかもしれません。でもたくさんいただいて食べきれない時は、ぜひ冷凍してみてください。

冷凍したトマトは凍ったまま水にさらすと簡単に皮がむけるというメリットがあります。しかも冷凍した状態でも切ることができるので、丸ごと冷凍しておけば、いろんな用途に使えます。

ちなみに凍ったトマトは、包丁を入れると皮がすべってしまうので、カットする前にまず皮をむきます。

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皮を剥いたら、あとは好きな大きさにカットして使えます。

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ただし、冷凍したトマトは食感がやわらかくなるので、サラダには不向きです。ソース、スープなどの加工調理に向いています。もうひとつ、冷凍ならではの使い方が、すりおろしです。冷凍なら簡単なんです。

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凍ったトマトをすりおろし器にかけるだけ。すりおろしたトマトは、少しはちみつなどをかけてシャーベットとして食べてもよし、ドレッシングと合わせてドレッシングにするのも良し。

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ミニトマトは、皮をむいて冷凍のまま白出汁に浸すとそれだけで美味しい一品が完成します。夏にぴったりなひんやりおかずです。見た目もかわいらしく、冷凍しているため味が短時間でしみこむというメリットもあります。

トマトは丸ごと冷凍するのが使い勝手がいいですが、ご自身の包丁の切れ具合と、とても大きなトマトだとさすがに冷凍のまま切れない場合があると思います。ご自身のライフスタイルに合わせて、使い分けるのがよいでしょう。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

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引用・参考文献

『一生役立つ きちんとわかる栄養学』飯田 薫子・寺本 あい・監修 西東社
『栄養の基本がわかる図解事典』中村丁次・監修 成美堂出版

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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