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2023.08.04

2型糖尿病の予防をするならどれくらい運動が必要?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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運動習慣は、さまざまな健康効果をもたらします。最近の研究によると、2型糖尿病の予防にもつながるのだそう。

今回ご紹介するのは、Diabetes Care誌に2023年6月付で掲載された、2型糖尿病の予防における運動の有効性についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

運動習慣が糖尿病を予防する?

習慣的に運動をすることが、健康に良いということは、多くの疫学データにより実証されている事実です。

ただ、たとえば2型糖尿病の予防目的、という観点で考えた時に、どの程度の運動でどの程度の効果が期待出来るのか、というような具体的な点についての、信頼性のあるデータは限られています。

最近毎日の歩数が活動量の目安とされることが多く、概ね1日5000歩から10000歩の範囲において、歩数が多いほど心血管疾患などのリスクが低下することは、国内外のデータにおいてほぼ一致している所見です。

ただ、これも糖尿病予防に限定して考えると、それほど明確な結論が出ているという訳ではありません。一番の問題は、こうしたデータの殆どが、対象者のアンケートの結果のみを、その情報源としているということです。

イギリスで9万人超の運動量と糖尿病発症リスクの関係を調査

そこで今回の研究では、遺伝子情報を含む医療情報を収集している、UKバイオバンクの医療データを活用して、90096名の一般住民に、3軸加速度計という、3方向の加速度を測定する特殊な機器(腕時計タイプ)を7日間装着して、日々の運動量(エネルギー消費量)を正確に測定し、その運動量と糖尿病の発症リスクとの関連を、比較検証しています。

7年を超える健康観察の結果、3軸加速度計のデータを元にして算出された、エネルギー消費量が多いほど、2型糖尿病の発症リスクは低下していました。

エネルギー消費量が5kj/kg/day高いと、糖尿病のリスクは、BMIで補正しない場合は19%、BMIで補正した場合11%有意に低下していました。これは早足で20分の歩行をする習慣と同等です。

少しの運動習慣を付加するだけで糖尿病の予防につながる

このように、今回の厳密な運動量の計測から、少しの運動を付加することにより、糖尿病の予防に繋がるということと、勿論無理はしないという条件付きですが、運動はすればするほど糖尿病の予防に繋がることが示唆されました。

今後こうしたデータが蓄積されることにより、科学的な糖尿病予防の手法が、明確に規定されることを期待したいと思います。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36