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2023.07.06

今こそ旬を楽しもう!とうもろこしを徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を、管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

7月の旬野菜は“とうもろこし”です。関連記事では、とうもろこしの美味しさをたっぷりと味わうレシピもご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

旬の今しか味わえない、生とうもろこし

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お店でとうもろこしを見かける時季になりました。季節に関係なく、たくさんの野菜が店頭に並んでいますが、生のとうもろこしは旬の時季にならないと出回らないため、旬を感じやすい野菜です。

一般的にとうもろこしと呼ばれているスイートコーンの旬は6月〜9月ごろ。缶詰や冷凍では味わえない豊かな香りと甘味を楽しんでいただきたいものです。栄養素から選び方、保存方法をご紹介いたします。

【栄養】食物繊維たっぷりで整腸作用も期待できる

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とうもろこしの主な栄養素は炭水化物です。粒の皮には、不溶性食物繊維が豊富に含まれるため、整腸作用が期待できます。胚芽の部分にはビタミンB1、B2、葉酸などのビタミン、カリウムや鉄などのミネラルも。またカロテノイドの一種であるゼアキサンチンという栄養素や代謝に大切な役割をはたしている亜鉛なども含まれています。

食物繊維

食物繊維は血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下や整腸作用など、現代人の多くの悩みを解決してくれる頼もしい存在。腹持ちが良くなり、食べすぎ防止、空腹を感じにくくなるという効果も期待できます。

日本人の平均食物繊維摂取量は、1950年頃には1人あたり1日20gを超えていました。しかし、近年は穀類・いも類・豆類の摂取量が減っているのと同時に、食物繊維摂取量も減少傾向にあり、どの世代でも14〜15g前後です。

生のとうもろこしには、100g中3gの食物繊維が含まれています。水に溶けずに吸収して腸を活性化して便通をよくする不溶性食物繊維が多く、特に実の皮部分に食物繊維が含まれています。

葉酸

葉酸はほうれん草の抽出物から発見されたビタミンB群の一種です。細胞の新生に深く関わっています。新しい細胞が作られるとき、細胞の遺伝子情報が集まりDNAを合成します。その時の補酵素として働いています。

新陳代謝促進や成長に欠かせない栄養素で、特に胎児に必要なため妊娠の可能性のある女性や妊婦にとって重要なビタミンです。また、最近の研究では動脈硬化を引き起こす危険因子の増加を防ぐことが示唆されています。

さらに、赤血球が作られるときにも必要なため“造血のビタミン”とも言われ、不足すると貧血、口内炎ができやすくなる、免疫力の低下などが挙げられます。

ビタミンB1

ビタミンB1は体内で糖質がエネルギーに変わる時に必要な補酵素として重要な働きをしています。摂取エネルギーの50%を糖質から摂っている日本人には重要な栄養素です。不足すると糖質の代謝がうまくいかなくなり疲れやすくなることも。また脳の中枢神経や手足の末梢神経の働きを正常に保つためにも働いています。不足するとしびれや反射神経の異常などもおきます。

ビタミンB2

ビタミンB2は脂質・糖質・たんぱく質を分解してエネルギーに変える反応をサポートする補酵素でもあります。エネルギー消費量が多い人ほど必要量も増えます。

また、爪や皮膚、髪等の細胞の再生に関与しています。そのため不足すると口角炎や口内炎、舌炎、皮膚炎、激しいかゆみ、髪のトラブルになることも。

カリウム

カリウムは体液の浸透圧を調整したり、神経や筋肉の情報伝達にも関係している重要なミネラルです。特筆すべきはナトリウムの排出を促す作用。日本人の摂取量は不足傾向にありますので、意識して摂って欲しい栄養素ですが、腎臓機能に障害がある方は注意が必要です。健康な人の場合、摂取量を増やすことによって血圧低下、脳卒中予防につながることが様々な実験や疫学調査により分かってきています。

カリウムは汗で排出されてしまうため、多量の汗をかくと浸透圧の調整がうまくいかず脱水症状を起こすこともあるので、夏の暑い時期は注意しましょう。

ゼアキサンチン

食事摂取基準に記載はされていませんが、カロテノイド(※1)であるゼアキサンチンも含まれています。

ゼアキサンチンは黄色・オレンジ・赤色の色素成分です、ほかにも果物や野菜や卵黄に含まれています。カロテノイドの一種ですがビタミンAに変わることはありません。人間の体では合成できない成分です。

網膜の黄斑部、色覚を認知する細胞の多いところに蓄積します。ピントを合わせたり、抗酸化作用を持っていると考えられています。

(※1)カロテノイドは主に黄色、赤色、紫色の脂溶性色素です。抗酸化作用があり、植物性、動物性ともにあります。

【選び方】美味しいとうもろこしの特徴は?

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皮がない場合
・実が先までぎっしりと詰まっておりすき間のないもの
・粒が大きくふっくらしていて揃っているもの

皮付きの場合
・皮は緑が濃い
・先端のひげが褐色あるいは黒褐色(完熟している証拠)

ひげは1本1本粒とつながっているので、ひげが多いものほど粒が多いということ。せっかくなら美味しい旬のとうもろこしを選びたいもの。スーパーに並んだたくさんのとうもろこしから、上記の特徴をチェックして新鮮で美味しいものを選びましょう。

【保存法】鮮度を保って甘さをキープしよう

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とうもろこしは鮮度が落ちやすい野菜です。収穫された時点から糖分がでんぷん質に変化し始め、甘みが薄れていくと言われていますので、上手に保存して、美味しく食べられるようにしたいですよね。

皮付きで冷蔵保存する

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皮付きのままラップでくるむかビニール袋に入れ、立てて冷蔵庫で保存しましょう。3日ほど大丈夫ですが、鮮度が落ちやすい野菜なので、できるだけ早めに消費しましょう。

加熱して冷蔵保存する

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すぐに使えるように加熱(栄養価を考えるなら電子レンジがおすすめ。後ほどご紹介します)して保存しましょう。使いやすい大きさに切り、好みの硬さに加熱してしっかり冷やしてから、保存容器に入れて冷蔵庫で保存しましょう。

生のまま皮付きで冷凍保存する

とうもろこしは生の状態で冷凍保存ができます。皮付きのままラップでくるみ、保存袋に入れて冷凍ができます。保存期間の目安は状態にも寄りますが1ヵ月以内に使いましょう。使うときは凍ったまま電子レンジで茹でることができます。

電子レンジ調理の場合目安は電子レンジ600Wで100gあたり2分半を目安に1本ずつ加熱し、様子を見ながら熱が通るまで、30秒ずつ加熱してください。

カットして冷凍保存する

1本ずつだと使うときに多すぎるなら、輪切りや実だけそいで、保存袋に入れて冷凍を。この場合も1本と同じように、1ヵ月以内に使いましょう。使うときは凍ったまま電子レンジで加熱するか茹でるだけでOK。

電子レンジ調理の場合目安は電子レンジ600Wで100gあたり2分半を目安にあまり多くない量で加熱し、様子を見て30秒ずつ足してください。そいだ状態ならば凍ったまま炒め物にもできます。

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実だけそぐ場合は、芯も冷凍するようにしましょう。葉酸やビタミンB群は胚芽に含まれているので芯に残る可能性があります。スープにするときにポンと入れると甘い出汁が取れて、美味しく、栄養価も高まります。

加熱して冷凍保存する

手軽に調理したい方には、加熱して冷凍保存もおすすめです。加熱の時は皮付きのまま電子レンジ調理をし、生のまま冷凍同様、輪切りにしたり、そいだ状態にするとよいでしょう。

保存は、茹でてから?生のまま?どちらが優秀?

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■味:生のままの方が若干苦味を感じるかも。大きな差はない。
■見ため:加熱してからの方が少しかさついている印象。
■かたさ:大きな差はない。解凍するときに茹ですぎないことがポイント。

保存前の下処理よりも、保存の形状が大切だと感じました。1本まるまるだと解凍するにも加熱するにも加減がわかりにくく、電子レンジでも解凍むらが起こるため、ところどころ加熱しすぎな部分がありました。

おすすめは生のまま、そいで芯も冷凍する方法です。使い勝手がとてもよく、味もよかったです。ご自身の生活スタイルに合わせて選んでみてください。

【豆知識】茹でるよりも電子レンジで調理して栄養価をキープ

100g中の栄養素 出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

100g中の栄養素 出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

とうもろこしは、茹でるよりも電子レンジでの加熱がおすすめです。なぜなら、水溶性の栄養素を逃すことなく、100gあたりの総合的な栄養価が一番高くなるのが電子レンジ調理だからです。

電子レンジで簡単!とうもろこしの加熱方法

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1. 皮を1枚残し、表面を洗って水けを切らずに、ラップでふんわりとくるみます。

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2. とうもろこし100gあたり、600Wの電子レンジで1分半を目安に加熱します。今回は286gでしたので、2.86(g)×1.5(分)=4.29(分)ですので、4分20秒となります。

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3. 加熱が終わったら、電子レンジから取り出して、触れるくらいまで放置します。とても熱いので注意してください。

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4. 皮をむいたら、完成!このようにふっくらと加熱することができます。ひげもむきやすいです。

皮を1枚残した状態で電子レンジで加熱することで、ややしっとりとした仕上がりになります。ぜひお試しください。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

『一生役立つ きちんとわかる栄養学』飯田 薫子・寺本 あい・監修 西東社

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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