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2023.05.30

54歳から要注意?ながら歩きができない=認知機能低下サイン【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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毎日時間に追われている現代人は、料理を作りながらテレビを見る、音楽を聴きながら本を読むなど、一度にふたつの動作をすることで時間を有効活用する方も多いのではないでしょうか。そんな行動は,
認知機能にどんな影響があるのか気になりますよね。

今回ご紹介するのは、the Lancet Healthy Longevity誌に、2023年3月付で掲載された、物を考えながら歩くことと、認知機能低下との関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

ディアルタスク機能は早期低下しやすい

デュアルタスク(二重課題)というのは、同時に2つの課題を実施することで、典型的なものは、「歩きながら話をする」というような、ながら歩きです。

これは歩くという行動を実施しながら、脳の別の部分を動かして会話をしている訳で、ただ歩くだけよりも、脳はより高度の作業をしているのです。

認知機能は加齢に伴い誰でも低下しますが、こうしたデュアルタスクの機能は、より早期から低下すると考えられています。この機能が低下すると、歩くだけなら普通の速度で安定して歩けるのに、話しながら歩こうとすると、歩く速度が不安定で遅くなったり、停まってしまったりします。

これまでの研究で、話しながら歩けない人は、その後転倒するリスクが高かったり、認知機能が低下するリスクが高い、ということが分かっています。ただ、そうしたデータは主に65歳以上を対象としたもので、それより若い年齢でもそうしたことが言えるのかについては、あまり明確なことが分かっていませんでした。

歩行と計算で検証

今回の研究はスペインにおいて、脳の健康について調査した疫学データを二次解析したものですが、40から64歳の年齢において、歩きながら簡単な引き算をしてもらうデュアルタスクを施行して、通常の歩行との比較を行っています。

その結果54歳を超えると、徐々にデュアルタスクによる歩行の不安定さが増加し、それが認知機能低下とも相関していることが確認されました。

ディアルタスクの低下は認知機能低下のサイン

このように、一般に54歳を超えるとデュアルタスクの機能は低下し、それが認知機能低下の極初期の兆候として、有用な可能性が示唆されました。

くれぐれも危険のない場所で行う必要がありますが、歩きながら別の作業が出来るかどうかを、定期的にチェックすることは、認知機能の低下の初期のスクリーニングとして、重要であることは間違いがなさそうです。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36