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2023.05.04

胃腸を整える食卓の強い味方!キャベツを徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を、管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

5月の旬野菜は“キャベツ”です。関連記事では、キャベツの美味しさをシンプルに味わうレシピもご紹介しておりますので、合わせてご覧ください。

使い勝手がいいキャベツ

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炒め物や粉物、スープにサラダにアレンジ自在のキャベツは、1年を通して食卓に登場する馴染み深い野菜です。春には葉が柔らかい春キャベツ、冬には冬(寒玉)キャベツと時期ごとにも特徴があります。

今回はそんなキャベツの栄養素から選び方、保存方法をご紹介いたします。

【栄養】ビタミンUが胃腸を守る!

キャベツの主な栄養素は、
・ビタミンC
・カリウム
・食物繊維
・たんぱく質
です。

キャベツはダイエット中も積極的に食べられることから、低カロリーな野菜として認識されている方も多いのではないでしょうか。栄養も豊富で、ビタミンCや食物繊維、胃腸の調子を整えるキャベジン(ビタミンU)など、体の調子を整える栄養素が含まれています。それぞれの栄養素について、詳しくみていきましょう。

ビタミンC

ビタミンCはコラーゲンの生成に必須の栄養素で、メラニン色素の生成抑制や強い抗酸化作用を持ちます。

体内で作ることができない栄養素ですから、食事から摂ることが必要。ビタミンCが不足すると、肌荒れ、血管がもろくなる、顔色が悪くなる、鉄分の吸収が悪くなり貧血になりやすくなる等があげられます。

ビタミンCをたっぷり摂りたいなら、生で食べるのがおすすめです。ビタミンCは水溶性ですから、水にさらしすぎず、ささっと洗って食べましょう。

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また、茹でるとビタミンやミネラルが茹で汁に流れ出て、ビタミン含有量が大幅に減少してしまいます。キャベツを加熱するなら、汁ごといただけるスープなどがおすすめです。熱に弱い傾向にあるため、長時間の加熱も避けましょう。

カリウム

カリウムは、ナトリウムの排出を促す作用があり、様々な研究によって血圧低下や脳卒中の予防につながることが分かってきています。

1日の目安量は18歳以上の男性で2,500mg、女性で2,000mgですが、目標量は18歳以上の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上。キャベツ100gには、カリウムが200mg含まれています。

キャベツに含まれるカリウムは熱を加えても問題ないため、スープなどにするとかさが減り、100g程度なら無理なく食べることができるでしょう。

ただし腎機能が低下している方が摂り過ぎてしまうと、高カリウム血症になる心配があるため注意が必要。その場合はかかりつけの医師に相談してください。

キャベツ特有の栄養素

食事摂取基準に記載はされていませんが、ビタミン様物質(※1)のキャベジンと呼ばれるビタミンUやファイトケミカル(※2)であるイソシアチアネートを含みます。

ビタミンUは胃の粘膜の保護をしたり、傷んだ胃壁の修復など、胃炎や胃潰瘍の予防によいとされています。イソシアチアネートはにんにくや玉ねぎの刺激臭や、大根などに入っている辛味成分のこと。強力な抗酸化作用と抗菌作用があるとされる注目の成分です。

※1 ビタミン様物質とは体内でビタミンと似た重要な働きをしている物質のこと。体内合成量で十分賄える、欠乏症がおこらない、といった理由でビタミンの仲間には入っていない。病気の予防、健康に役立つ成分として注目されている。

※2 ファイトケミカルとは、植物が作り出す化学物質のこと。植物が紫外線や虫等から自分を守るために作りだす、色素や香気成分、アクなどの成分が該当。代謝の仕組みや摂取基準はまだ研究途中で、抗菌作用、免役力向上など良い働きをしてくれることが分かっており、第7の栄養素として注目されている成分。

【選び方】美味しいキャベツの特徴は?

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キャベツは、収穫する時期により特徴が少し異なります。下記の特徴を踏まえて、季節ごとに美味しいキャベツを見極められるようになりましょう!

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春キャベツは、ふんわりして軽いものを選びましょう。

冬キャベツは、ずっしり重いものが良いとされています。外側が紫色になることもありますが、これは寒さから身を守るためにキャベツ自身が作るファイトケミカルであり、傷みによるものではありません。

どちらも茎の切り口がみずみずしく、黒ずんでいないものを選ぶのがおすすめです。

保存方法

野菜の保存方法全般に言えることですが、水分を逃さないようにするのがポイントです。

冷蔵保存する

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キャベツは中心から水分が抜けていくと言われています。包丁の刃先で芯をくりぬき、水で湿らせたキッチンペーパーを詰めた後にポリ袋に入れ、冷蔵庫へ。水で湿らせたキッチンペーパーの効果によって長持ちするとされています。

また、切り口から水分が失われるため、使うときは外の葉からはがして使うとよいでしょう。上手に保存できれば2週間ほど持ちますが、ビタミンCは壊れやすい栄養素ですので、早めに食べきるようにしましょう。

生のまま冷凍保存する

キャベツは生のまま冷凍保存が可能です。シャキシャキ感が失われにくく、若干煮崩れしにくいという特徴があります。

使いやすい大きさに切ってそのまま冷凍用保存袋に平らに並べて入れ、空気を抜いて冷凍しましょう。保存期間の目安は、状態にも寄りますが1ヵ月を目安に使いきるようにしてください。

浅漬けなど加熱せずに調理する場合はさっと流水で解凍し、そのまま使用できます。炒め物や汁ものは、凍ったまま調理が可能です。

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ざく切り:炒め物や和え物など様々な料理に使用できます。

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くし切り:ポトフ、レンジ蒸し、キャベツのステーキなどにむいています。

また、ビタミンCは冷凍保存のほうが残りやすいことが分かっており、冷蔵よりも冷凍保存のほうが栄養素としては優秀といえます。

塩もみして冷蔵保存する

おすすめの保存方法が、塩もみして冷蔵保存です。せん切りやざく切りにしたキャベツをビニール袋に入れ、キャベツの重量の1%程度の塩を加えて軽くもみ、空気を抜いて冷蔵庫へ。

使用するときはさっと水洗いして余分な塩分を洗い流し、軽く絞って副菜に使うととても便利です。さば缶やささ身をほぐしたものであえればたんぱく質も強化され栄養価が高まります。

せん切りするのが少し億劫と感じるかもしれませんが、塩もみキャベツをストックしておけば、消費しようと思う意識から、自然と野菜の摂取量が増えていきます。

1人分100g前後を目安に作っておくと良いでしょう。私自身もこの方法をよく取り入れています。

【豆知識】捨てないで!キャベツの芯には栄養たっぷり

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捨ててしまいがちなキャベツの芯にも、実は栄養が多く含まれています。キャベツの部位ごとの栄養を比較した研究によると、カリウムは外側の葉や中側の丸まった葉と比べ、芯に多く含まれているという結果でした。

薄切り、または小さくカットしてスープや味噌汁にプラスしたり炒め物にすれば、余すことなく使い切ることができます。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

『一生役立つ きちんとわかる栄養学』飯田 薫子・寺本 あい・監修 西東社
『調理のためのベーシックデータ 第6版(八訂)』女子栄養大出版

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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