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2023.02.02

冬は甘味たっぷり!大根を徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

2月の旬野菜は”大根”です。関連記事では、大根をたっぷり摂れるとっておきレシピもご紹介しておりますので、合わせてご覧ください。

冬の大根は甘味が増している

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日本の食卓になじみ深い大根。通年店頭に並んでいますが、春から夏のものは辛みが強く、秋から冬の寒い時期のものはみずみずしく甘味が増すといわれています。そんな甘味が増す冬の大根は、煮物や汁物、炒め物に大根おろしなど、主菜から薬味までさまざまな料理で活躍してくれます。

大根はサイズが大きいため「使い切れずにいたんでしまった…」ということもありますよね。今回は大根の栄養や選び方、保存方法、大量消費レシピをご紹介します。

【栄養】大根は葉っぱも栄養満点!

100g中の栄養素 出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

100g中の栄養素 出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

大根は根と葉の部分で栄養素が異なります。必須栄養素(※)が、どの部分にどれだけ含まれているか、また栄養素の役割をみてみましょう。

大根の葉にはビタミンCやカリウム、カルシウムなどたっぷり栄養が詰まっていることがわかります。今まで葉を捨てていた方、もったいないです!お味噌汁や炒飯、漬物などに活用して、効率よく栄養を摂りましょう。

※ 日本人の食事摂取基準で決められている栄養素

ビタミンC

ビタミンCはアスコルビン酸ともいわれ、コラーゲンの生成に必須の栄養素です。また、メラニン色素の生成の抑制、強い抗酸化作用を持ちます。多くの哺乳動物は体内で合成できますが、人は合成することができないため、食事から摂ることが必要となります。ビタミンCが不足すると、肌荒れ、血管がもろくなる、顔色が悪くなる、鉄分の吸収が悪くなり貧血になりやすくなる、等が挙げられます。

葉酸

葉酸はほうれん草の抽出物から発見されたビタミンB群の一種です。細胞の新生に深くかかわっています。新しい細胞が作られるとき、細胞の遺伝子情報が集まりDNAを合成します。その時の補酵素として働いています。新陳代謝促進や成長に欠かせない栄養素で、特に胎児に必要なため妊娠の可能性のある女性や妊婦にとって重要なビタミンです。また、動脈硬化を引き起こす危険因子の増加を防ぐ効果があると報告されています。

さらに、赤血球が作られるときにも必要なため”造血のビタミン”とも言われ、不足すると貧血、口内炎ができやすくなる、免疫力の低下等が挙げられます。

カリウム

カリウムは細胞の浸透圧を維持するのに大切な栄養素です。細胞外液のナトリウムとお互いに作用しながら細胞の浸透圧を維持しバランスを調整しています。また余分なナトリウムの排出を促進するため、塩分の摂りすぎによるむくみの解消、高血圧予防に効果が期待できます。

鉄は赤血球中のヘモグロビンという成分の材料となる栄養素です。ヘモグロビンは肺で酸素と結合し、体内の細胞に酸素を運ぶ役割をはたしています。不足すると貧血をおこし、疲労感、息切れ、頭痛、食欲不振等の原因となります。

カルシウム

カルシウムは骨や歯の材料となる栄養素です。丈夫な骨や歯に欠かせません。また、カルシウムは血液中で常に一定の濃度を保ち、神経伝達物質の運搬にも関わっていたり、筋肉の収縮や弛緩等にも役立っています。不足すると骨粗鬆症や筋肉の痙攣等がおこります。

大根特有の栄養素

大根には食事摂取基準に記されていない、アミラーゼやイソチオシアネートといった栄養素を含んでいます。

アミラーゼはでんぷんを消化する酵素のこと。消化を助けてくれるため、胸やけや胃もたれの予防効果が期待できます。イソチオシアネートとは、大根の辛味成分の事で、抗酸化作用があるとされています。イソチオシアネートは根の先端部分に多いといわれているので、大根おろしのような辛味を出したい時は先端を使いましょう。

【選び方】美味しい大根の特徴は?

新鮮な大根は、水分をたっぷりと含んでいます。

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・持ってみて、ずっしりと重い
・色が白くて透明感がある
・皮のきめが細かい
・ツヤとハリがある
・ひげ根がついているくぼみを通る筋が、垂直にまっすぐ通っている

スーパーに並んだたくさんの大根から、上記の特徴をチェックして新鮮で美味しいものを選びましょう。

【保存法】大根は立てて保存するのが鉄則

冷蔵保存する

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葉がついている大根の場合、葉から水分が蒸発してしまうといわれています。すぐに葉を切り落とします。根の部分は立てて保存したほうがよいとされています。野菜室に立てられる長さに切りましょう。

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切り口から水分が蒸発してしまうので、ラップをし、保存袋に入れましょう。この状態で1週間ほど保存が可能です。

使い勝手抜群”下茹冷蔵”

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おすすめしたいのが下茹でして冷蔵保存です。大根は火が通るのに時間がかかりますよね。いちょう切りにしてやわらかく茹でて冷蔵保存しておくと、さっと汁物が作れてとても便利!

小腹がすいた時にインスタントのスープを活用する方もいらっしゃると思いますが、塩分ばかりで栄養が摂れないというデメリットがあります。そんな時にこの下茹で大根を入れてください。野菜不足解消になりますし、カリウムたっぷりで塩分の排出にも役立ってくれます。カレーやシチュー、グラタンにも意外と合うんです!安価な食材ですから、かさましにもぴったりです。

冷凍保存する

旬の時期の立派なサイズの大根を、1週間で食べきれないなら、冷凍保存がおすすめ。煮物用や汁物用など、普段作る大根料理をイメージして用途別に切り、冷凍すると使い勝手抜群になります。その際、先ほど記したように部位ごとの特徴を考慮するとよいでしょう。

万能に使える”いちょう切り”

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味噌汁や炒め物と幅広く活躍してくれる切り方です。バラバラに袋に入れるとくっついてしまうことも。写真のように100gずつまとめてラップをしておくとさっと取り出せて便利です。味噌汁や煮物の時はだし汁にポンと入れればOKです。炒め物にするなら、電子レンジで解凍してから使いましょう。

煮物にするなら”乱切り”

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煮物向きの切り方です。切り口が不揃いなため冷凍してもくっつきにくくバラバラになりやすいのもメリットです。凍ったまま煮汁に入れて使えます。

大きな煮物なら”輪切り”

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皮を厚めにむいてから2cmほどの厚さに輪切りします。おでんなどの大きな煮物にむいています。中心に十字に切り込みを入れると、味染みもよくなります。凍ったまま煮汁に入れて使います。

皮まで食べられる”せん切り”

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炒め物、漬物、味噌汁にむいています。厚くむいた皮も、余すことなくせん切りに。バラバラに袋に入れるとくっついてしまうこともあるため、写真のように100gずつまとめてラップをしておくとさっと取り出せて便利です。味噌汁の時はだし汁にポンと入れればOKです。炒め物には電子レンジで解凍してから使いましょう。

【豆知識】部位別おすすめの食べ方

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大根は葉に近い上部、中間部、下部で味わいが異なります。それぞれの特徴を知り、調理に活用しましょう。

上部

もっとも甘い部分ですが中央よりも硬い傾向にあります。うす切りやせん切りにしてサラダや漬物など、生で食べるのに向いています。

中部

みずみずしく、水分が多くやわらかい部分です。サラダや漬物など生での調理だけでなく、ふろふき大根や炒め煮にするなど、加熱料理にむいています。オールマイティーに使え、幅広く楽しめます。

下部

辛みが強く筋が多い部位のため、細かく切って炒め物や汁物などに使います。辛味が好きな方は大根おろしにしても良いでしょう。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

2.『一生役立つ きちんとわかる栄養学』飯田 薫子・寺本 あい・監修 西東社

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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