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2023.01.05

栄養の宝庫!ほうれん草を徹底分析&大量消費レシピ【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

©︎yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。前半は栄養や選び方、後半は野菜をたっぷり摂れるとっておきレシピを管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

1月の旬野菜は”ほうれん草”です。

食卓に馴染み深い、ほうれん草のパワー

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店頭に通年並び、食卓でもおなじみのほうれん草。旬を迎えるのは、寒さが増す冬です。肉厚のものが多くなり、甘さが増すのが特徴。栄養価が非常に高いので、積極的にとりいれたい野菜です。

【栄養】ビタミンたっぷり&鉄分豊富で貧血予防

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野菜は淡色野菜とβ-カロテンが豊富な緑黄色野菜に分類されますが、ほうれん草は緑黄色野菜。非常に栄養価が高く、栄養士も積極的に献立にとりいれる野菜のひとつです。豊富な栄養素の中でも特に注目したい栄養素が

・ビタミンA
・ビタミンC
・ビタミンK
・葉酸
・鉄
・カリウム

です。

ビタミンAとビタミンCは抗酸化作用が強く、皮膚粘膜を正常に保つ働きをするため、ウイルスや菌の侵入を防ぐのにも役に立つといわれています。また、冬のほうれん草は夏季に比べて、ビタミンCが3倍にもなるのです。(日本食品標準成分表2020年版 八訂より)

ビタミンKは丈夫な骨づくりにも不可欠で、カルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す作用があります。

葉酸と鉄はどちらも造血に必要な栄養素です。貧血の予防に不可欠なもので、冷え性予防にも効果が期待されます。

カリウムは体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する作用があるので、むくみや高血圧予防にも効果が期待できます。ただし、腎臓病の方にはカリウムは、摂りすぎに気を付けなくてはいけない栄養素です。

【選び方】美味しいほうれん草の特徴は?

スーパーで並ぶほうれん草の中から、おいしいほうれん草を選ぶコツをご紹介します。

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・全体的にみずみずしい
・葉先がピンと張りがある
・葉肉が厚い
・緑色が濃い
・茎が太い

ほうれん草は、旬の時期を迎えると茎が適度に太くなります。茎が太いと甘味が加わりますので、冬は茎が太いほうれん草を選びましょう。

【保存法】さっとゆでて冷凍保存がおすすめ

購入したのに、うっかりダメにしてしまった。ということはありませんか?せっかくなら美味しく保存したいですよね。次に保存方法をご紹介します。

冷蔵保存する

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購入して、1〜2日なら、袋のまま根本を下にして野菜室にたてて保存しても大丈夫ですが、少ししなびてしまいます。おすすめは、一度ザっと洗って水気をしっかり切ってから、キッチンペーパーで包んでポリ袋に入れて密封する方法です。キッチンペーパーは全体にするのが理想ですが、この写真のように下半分にできればOK。保存は根元を下にして立てて冷蔵庫で。この一手間で、ほうれん草の鮮度が大きく変わります。(保存期間目安:5日~1週間)

しなびてしまった場合の対処法

うっかりしなびてしまったという時は諦めず、以下の方法を試してみましょう。ただし、細胞がいたみすぎてみずみずしさを失っている場合はこの方法でも難しい場合があります。

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①全体をたっぷりの水で洗ってから根本の泥をよく洗います。

②根本に十字に切り込みを入れ、たっぷりの冷水につけて、30分以上おいてください。

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③水をよく吸い、シャキっと感が蘇ります。

シャキっとさせるとゆで時間が短縮でき、食感がよくなります。また、ゆでることで、アクを取り除くことができるため、苦味がやわらぎ美味しく仕上がりやすいのが特徴です。

冷凍保存する

1週間以上保存したい場合は冷凍保存がおすすめ。生のまま冷凍、ゆでて冷凍の2種類があります。

生のまま冷凍する

<保存方法>
①全体をよく洗い、根本に十字に切り込みを入れて、たっぷりの水に根本をつけ30分以上浸けておきます。
②水気をよくきり食べやすい長さに切って、冷凍保存袋に平らに並べ、空気を抜いて冷凍します。(保存期間3週間~1ヵ月)

<使い方>
冷凍のまま炒め物に、おひたしにする場合はえぐみが気になることがあるので、さっとお湯でゆでてから水にさらしてご利用ください。

ゆでて冷凍する

生のまま冷凍も便利ですが、アクが気になることがあるので、おすすめはゆでたあと冷凍する方法です。冷凍したほうれん草は繊維が壊れて柔らかくなるため、ゆで時間を短くするのがポイント。

<保存方法>
①全体をよく洗い、たっぷりの熱湯に根本からいれ、再沸騰してから30秒ほどゆでます。
②水をたっぷり貯めたボウルにとり、冷まします。この時流水にするとより苦味が抜けます。

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③水気をぎゅっとしぼります。

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④食べやすい長さに切ります。

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⑤根元部分、葉先部分を均等になるようにわけ、ラップに包みます。この時、1個50~70gくらいになるように小分けにしておくと料理に使いやすいです。

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⑥冷凍保存袋に入れて冷凍します。
(保存期間:3週間~1ヵ月)

<使い方>
サラダ、おひたしは、自然解凍して利用。炒め物、汁ものは、凍ったまま調理可能です。

【豆知識】栄養価が高い保存方法は?

栄養価を損なわずに保存したい場合、軽くゆでて冷凍保存するのがおすすめです。ほうれん草の栄養素の中で変化があるものがビタミンC。ビタミンCの残存率が高いまま保存できる方法なのです。

ほうれん草のビタミンC残存率

出典:『調理のためのベーシックデータ 第6版(八訂)』女子栄養大出版

出典:『調理のためのベーシックデータ 第6版(八訂)』女子栄養大出版

買ってきたばかりのほうれん草を100とした場合、ビタミンCの残存率は、翌日91%、3日後約75%、5日後約65%と、みるみる内に減っていきます。

室温、冷蔵庫、冷凍庫で比べてみると、冷凍庫で保存が最もビタミンCの残存率が高い結果になっています。

冷凍するなら、生のまま?ゆでてから?

出典:『調理のためのベーシックデータ 第6版(八訂)』女子栄養大出版

出典:『調理のためのベーシックデータ 第6版(八訂)』女子栄養大出版

では冷凍する場合、生のままとゆでてから、どちらがよいのでしょうか。

まずは、ゆで時間によるビタミンCの残存率をご紹介します。ビタミンCは水溶性で加熱に弱い性質があるため、ゆでるとビタミンCが損失していく傾向にあります。1分で74%、2分で61%、3分で48%と半分以下に減少してしまいます。そのため、さっと短時間ゆでるのがおすすめです。

ほうれん草は、冷凍することでビタミンCが残りやすい傾向にあります。上記のデータから、保存するならゆでて冷凍が保存期間が長いだけでなく、栄養価、調理性ともに優れていることがわかります。

生のまま冷凍もできますが、ほうれん草はアクの強い野菜。シュウ酸が入っているため、たくさん摂取するなら、やはりゆでてアク抜きしておく方が使いやすいでしょう。

ほうれん草をたっぷり食べよう!ほうれん草と鶏むね肉の炒め物

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ここからは、栄養たっぷりなほうれん草をたっぷり食べられるおすすめのレシピをご紹介します。

材料(1人分)

ほうれん草 100g
鶏むね肉(皮なし) 100g
ごま油 小さじ1
塩 1.5g
胡椒 少々

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主な栄養価

カロリー 173kcal
たんぱく質  25.5g
カリウム 1062mg
鉄 2.3mg
葉酸 223μg
ビタミンC 63mg

作り方

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1.ほうれん草を水で洗ってから根本の泥をよく洗い、根本に十字に切り込みを入れ、たっぷりの冷水に30分以上つける。

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2.泥が残っていないか確認してから、食べやすい長さに切る。

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3.フライパンにごま油を入れ中火にかけ、あたたまったらそぎ切りにした鶏むね肉を加え炒め、塩を半量加える。

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4.鶏肉全体が白くなったら、ほうれん草の下の茎の方を加える。茎が太いようだったら小さく裂いてから入れる。

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5.しんなりしたら葉の方も加え、残りの塩と胡椒(分量外)を加え全体がしんなりするまで炒める。

このレシピのPOINT

ポイント1.ほうれん草は根に十字に切り込みを入れ、水に浸けてアク抜きをする

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今回は、下ゆでしないで炒める方法をご紹介しました。根に十字を入れて水に浸けておくとアクが気にならなくなり、シャキッとした炒め物ができます。

ただし、シュウ酸は抜けにくいため、アクが気になる方は、下ゆですることをおすすめします。

ポイント2.鶏むね肉はそぎ切りする

鶏むね肉のように大きさにばらつきがあるものは、繊維を断ち切るようにそぎ切りすることで、加熱しても固くなりにくくなります。また、味染みもよくなります。

このレシピの栄養ポイント

ポイント1.たんぱく質がしっかり摂れる

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このレシピにはたんぱく質が豊富に含まれています。

たんぱく質の推奨量は、30歳~64歳の場合1日あたり女性50g、男性65gです。

骨や筋肉だけでなく、内臓、皮膚、髪、骨、歯など身体の主成分で、体重の約20%を占める必要不可欠な栄養素。

身体を形成するだけでなく、身体の代謝を調節するホルモンの生成や、消化・吸収に欠かせない酵素の生成、光や味、匂いなどの刺激を受け取るレセプターなどにも大切な働きをしています。

鶏むね肉には豊富にたんぱく質が含まれ、このレシピではたんぱく質25.5gを摂ることができます。1日の摂取目標のうち、女性なら約50%以上、男性なら約40%。昼食か夕食で、このメニューを取り入れて、たっぷりたんぱく質を摂取しましょう。

ポイント2.貧血対策にも優秀

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普段から不足しがちな栄養素に“鉄分”があります。推奨量は30歳~69歳の場合1日あたり女性11mg、男性7.5mgです。

このレシピでは鉄分が2.3mg摂れるため、1日の摂取目標のうち、女性なら20%、男性なら30%を摂ることができます。

ほうれん草に含まれる鉄分は非ヘム鉄と言って吸収率が低いのですが、ビタミンCとともに摂取すると吸収率が高まることが知られています。ほうれん草には豊富にビタミンCが含まれています。特に冬は夏の3倍になると言われていますから、吸収率もUPして鉄分も効率よく摂ることができます。

また、鉄分だけでなく造血作用に必要な葉酸は12歳以上の男性女性ともに240mg(推奨量)です。このレシピでは223μgですので、ほぼ100%達成できるのです。

ポイント3.食べすぎた翌日のリセット食にも優秀!

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食べすぎてしまい翌日体重が増えてしまっていた。今日は食事を抜いて調整…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。摂取カロリーの調整は体重管理に有効ですが、食事を抜くのはかえって逆効果になることがあります。

食べすぎた翌日の体重増加の原因は、塩分摂り過ぎによるむくみのことが多いのはご存知でしょうか。そのため塩分を排出するカリウムが豊富なものをとることが大切になります。

ほうれん草はカリウムの含有率が高い点も特徴です。そして意外と知られていないのが、鶏むね肉にも豊富にカリウムが含まれているということ。この2つの組み合わせは、むくみ対策にとっても良いのです。

カリウムの15歳以上の目標量は1日あたり女性2600mg以上、男性3000mg以上です。このレシピで1062mgのカリウムが摂れるため、女性なら約40%、男性なら約35%が摂れます。塩分量も少なめのレシピですから、むくみ対策にはぴったりです。

食べすぎた翌日大切になるのは低カロリーにおさえつつ、栄養素はしっかり摂り、無理な食事制限による暴食を防ぐことです。決まった時間に食事をすることも大切になりますので参考にしてください。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

3.『調理のためのベーシックデータ 第6版(八訂)』女子栄養大出版

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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