メニュー

2022.11.07

モデルナ製オミクロン2価ワクチンの有効性は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

日本でもオミクロン株由来のワクチン接種が始まっています。このワクチンは従来型と比べてどの程度有効性があるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2022年10月6日掲載された、モデルナ社製のオミクロン対応2価ワクチンの有効性についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

オミクロン2価ワクチンの有効性は?

日本でも追加接種として、オミクロン株由来の抗原を含む、2価の新型コロナウイルスワクチン接種が、開始されていますが、今回の研究は日本でも使用されている、モデルナ社の2価ワクチンの、アメリカで施行された発売前の臨床試験の結果を解析したものです。

従来型ワクチンと2価ワクチンの有効性を比較

今回の臨床試験では、モデルナワクチンの3回接種を終えた被験者を、くじ引きで2つの群に分けると、そのうちの377名はこれまでと同じ従来型の抗原を50μg含むワクチンを接種し、もう一方の437名は従来型の抗原25μgと、オミクロンBA.1株由来の抗原25μgを含む2価ワクチンを接種して、接種後28日の時点での抗体上昇などを比較しています。

今回の4回目接種は、3回目から3か月以上の間隔を置いて施行されています。

その結果、GMT(幾何平均抗体価)という指標で評価した、オミクロンBA.1株のスパイク蛋白に対する抗体価は、新型コロナに罹患していない対象のみで比較したところ、従来型ワクチンでは1473.5(95%CI:1270.8から1708.4)であったのに対して、オミクロン対応2価ワクチンでは2372.4(95%CI:2070.6から2718.2)で、オミクロン対応ワクチンで有意な増加を示していました。

オミクロンBA.4とBA.5に対する抗体価で同様の検証を行うと、従来型ワクチン接種後の抗体価は492.1(95%CI:431.1から561.9)であったのに対して、オミクロン対応2価ワクチンでは727.4(95%CI:632.8から836.1)となっていて、BA.1に対する免疫反応と比べると弱いものの、矢張りオミクロン対応ワクチンで有意な増加が見られていました。

またアルファ、ベータ、ガンマ、デルタの、オミクロン株以前の変異株に対しての免疫反応についても、従来ワクチンよりオミクロン対応ワクチンで、より高い抗体上昇が認められました。

2価ワクチンは従来型より有効性が勝る様子

このようにオミクロン対応ワクチンは、オミクロン株を含めたそれ以前の変異株についても、従来ワクチンに勝る有効性が期待され、その安全性や実際の感染予防効果については、今後の検証を待つ必要がありますが、取り敢えずは従来型ワクチンを、オミクロン対応ワクチンに置き換えるという方針で、問題はないように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36