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2022.09.30

【ダニ・虫】刺されたら「ステロイド」最強な理由|秋に繁殖、家のダニ対策、危険なダニも紹介

東洋経済オンライン

虫やダニに刺されたときの対処法を解説します(写真:Graphs/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/621230?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

虫やダニに刺されたときの対処法を解説します(写真:Graphs/PIXTA)

秋本番。キャンプやハイキングなど、屋外イベントを計画している人も多いだろう。楽しいアウトドアでの困りごとの1つといえば、虫刺されだ。赤くかゆくなると掻かずにはいられない。

そしてもう1つ、この時期、意外と多いのがダニによる被害だ。

そこで今回は、帝京大学名誉教授で皮膚科医の渡辺晋一さんと、ダニの生態に詳しいペストマネジメントラボの高岡正敏さんに、虫やダニに刺されたときの対処法と予防法を聞いた。

「蚊であろうが、ダニであろうが、虫に刺されて赤みやかゆみが出たら、すぐに“ステロイド外用薬”を塗ること。虫刺され程度では皮膚科に行く必要はありません」と渡辺さん。

ちなみに、毛虫などに触れてかぶれることもある。これを毛虫皮膚炎という。虫刺されと思っている人もいるが、基本的に対処法は同じだ。

ステロイド外用薬は1日2回、“たっぷり”と塗るのがポイント。量の目安はティッシュペーパーで押さえたときに軽く付く程度だという。何より早期対応がカギだ。

「薬を塗ってもしばらくはかゆみが残りますが、掻かないこと。掻きたくなっても我慢してください。掻きむしりが心配であれば、上からラップを巻いてもよし、包帯やガーゼをのせて医療用のテープで止めるもよし。就寝中に無意識に掻いてしまうのを防ぐこともできます」(渡辺さん)

患部を冷やすとかゆみが治まる

かゆみに対しては、患部を氷や保冷剤などで冷やすのも有効だが、長時間冷やし続けると凍傷になるおそれがあるので、注意しよう。

「ステロイド外用薬をしっかり塗れば、3日ほどでよくなります。5~6日経っても薬の効果が出ないときや、刺されたところが水ぶくれになったり、痛みがじわじわと出てきたりしたときは、皮膚科医に診てもらったほうがよいでしょう」(渡辺さん)

渡辺さんがダニや虫に刺されたときの塗り薬として勧めるステロイド外用薬は、医療機関で処方される薬でなくてもかまわない。薬局やドラッグストアで売られているもので十分だという。

選び方のポイントは、“ある程度、効きめに強さのあるもの”。商品名でいえば、「フルコートf軟膏」(田辺三菱製薬)や、「リンデロンVs」(シオノギヘスルケア)などだ。どれがいいかわからなければ、購入時に薬剤師や登録販売者に聞いてみよう。

また、いつ虫に刺されても対応できるよう、置き薬として一家に1本常備しておくといいかもしれない。子どもが虫に刺されたときも「(子ども用のものではなく)大人用のものを使って大丈夫です」と渡辺さんは話す。

虫刺されで使うステロイド外用薬とは、どんな薬なのか。

ステロイド薬とは、副腎で作られる副腎皮質ホルモンの1つ、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)をベースに合成した薬効成分の通称だ。炎症を抑える作用がある。

炎症を抑える市販の塗り薬のなかには、ステロイドが含まれていない(非ステロイド性の)外用薬もあるが、「虫に刺されたらステロイド外用薬を塗る」が世界のスタンダードであり、「非ステロイド性では効果がない」と渡辺さんは語気を強める。

「炎症を抑えるもので、ステロイド外用薬に優るものはありません」

ステロイド薬というと副作用を心配する声もあるが、「内服薬と比べて、外用のステロイド薬の体内吸収率は微々たるものです」と渡辺さん。

「かゆみのある初期の段階に強めのステロイド薬をしっかり塗れば、たいていの虫刺されや毛虫皮膚炎によるかゆみや炎症は収まります。日本だけが、ステロイド薬に対する意識や使用法が消極的であり、非常に残念に感じています」(渡辺さん)

家に棲む刺すダニの種類

続いて、我々の生活に身近なダニ刺されについて、みていこう。

生活圏内に生息するダニは、ヒョウヒダニ(チリダニ)、コナダニ、ツメダニやイエダニだ。ダニの調査に携わって50年以上になる高岡さんは、「このうち人を刺すのはツメダニとイエダニです。畳やカーペットに潜むのがツメダニ。梅雨どきからや秋口に増殖します。このツメダニのエサとなるのが、ほぼ1年中見られるヒョウヒダニやコナダニなどです」と言う。

 そして、こう続ける。

「イエダニは、ネズミに寄生する吸血性のダニで、住居内にネズミが潜んでいるような環境であれば、イエダニもいると考えたほうがいい。何よりダニの生息条件を把握し、正しい知識を持つことです」

ダニがいる環境に長くいるほど刺されやすい。このため、長時間家にいる主婦がダニに刺されることが多いそうだ。

「それで、『なぜ、私だけなの……』と、“ダニ・ノイローゼ”ともいえる状態になってしまうという話も聞きます。でも、私からみれば、今の住環境で、ダニと無縁の生活を送るということのほうが難しい。敵を知らずして対策なし。どうすればダニの増加を防げるのか、それを考えていただきたいです」

ツメダニでもっとも注意すべきところは「畳」だという。

「ツメダニが多い住まいの(ダニ)発生源は、新しい畳であることがほとんど。新築の家であっても、リフォーム直後の家でも、新しい畳があれば、そこにダニがいると考えたほうがいいでしょう。理由は、新しい畳ほど湿度が高いからです。それに対し、ヒョウダニは住まいの至るところで繁殖します」

そして、こうアドバイスする。

「日ごろからまめに掃除機をかけ、年に1~2度は大掃除をしましょう。ふとんも丸洗いしましょう。畳やソファ、マットレスはこまめに日光干しをし、掃除や洗濯などでゴミを溜めないように。畳の上にじゅうたんを敷くようなことは絶対にしてはいけません。押し入れ、クローゼットも頻繁に通気して、湿気をなくしましょう。思い切って畳をやめるのも1つの手です」(高岡さん)

怖い感染症をもたらすダニ

病原体を媒介するダニに刺されてしまうと、思わぬ感染症にかかることも。そこで、最後に“危険な感染症”を取り上げる。

「まずは『ツツガムシ病』です。これは細菌の一種であるリケッチアを持つダニの一種、ツツガムシに刺されて感染する病です」

リケッチアの潜伏期間はおよそ1週間、その後に発疹が現れ、40度近い高熱が出る。

「ツツガムシ病はテトラサイクリン系の抗菌薬を投与すれば治ります。しかし、症状だけでは診断が付かないため誤診されることも多く、別の病気と診断されて、普通の抗生物質を使ったために血小板が減少して重症化したという事例も報告されています」(渡辺さん)

日本感染症学会のホームページによると、日本では北海道を除く全国で発生が見られている。野山や河川敷などの草むらにいるツツガムシに刺されると感染する。国内の感染報告は年間400~500例で、ピークは5~6月と、11~12月だ。

もう1つは、野山に生息する、ボレリアという細菌を持つマダニによって吸着される感染症「ライム病」だ。長野県の上高地など、本州の中部以北で多く見られる。

「病原体が全身に広がると、神経症状や心疾患、筋肉炎などを起こします。こちらも抗菌薬が有効ですが、やはりツツガムシ病と同様に鑑別が難しい病気なので、この病気に詳しい医師に診てもらう必要があります。心筋梗塞や関節炎など、のちに症状が出ることもあります」(渡辺さん)

SFTSというウイルスを保有するマダニに刺される感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」にも注意したい。血小板と白血球が減少し、症状としては発熱、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血などだ。ときに腹痛や筋肉痛、神経症状なども見られる。

ダニ・虫に刺されないポイント

野生動物が多くいる環境にはマダニも生息していると考えて、キャンプや山登りなど、野生動物がいるような場所に行く際には、長袖、長ズボンを着用するなど、肌の露出を控えるなど、徹底した対策をしよう。


この連載の一覧はこちら

「手首、足首など、『首』という名がつくところから(ダニや虫は)入ります。また、二の腕やお腹、ももの内側など、やわらかいところの皮膚をダニは好みます。衣服の末端を縛って、なるべく虫が入らないようにしましょう。虫よけスプレーも有効です」(渡辺さん)

(取材・文/大崎百紀)

帝京大学名誉教授
渡辺晋一医師

東京大学医学部卒業。東京大学医学部皮膚科医局長、アメリカ・ハーバード大学留学、帝京大学医学部皮膚科主任教授などを歴任。アトピー性皮膚炎やレーザー治療、皮膚真菌症研究のスペシャリスト。著書に「間違いだらけのアトピー性皮膚炎診療―なぜ日本の患者は治らないのか、どうすれが治るのか」(文光堂)など多数。

ペストマネジメントラボ代表取締役
高岡正敏獣医師

日本獣医畜産大学獣医学科卒業。東京大学医科学研究所寄生虫研究部、東京医科歯科大学医学部医動物研究室、獨協医科大学医動物学教室などでの研究、講師活動を経て、埼玉県衛生研究所に移り退職後の2008年、ペストマネジメントラボを設立、代表取締役に就任。著書に「ダニ病学-暮らしのなかのダニ問題」(東海大学出版会)など。

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東洋経済オンライン医療取材チーム:記者・ライター

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