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2022.05.26

新型コロナ後遺症の特徴とその対策は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生  

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コロナ感染後、長い間体調不良が続く方がいるという報告があります。ですが、まだその詳細や治療法について明確にされていません。

今回ご紹介するのは、The Lancet Respiratory Medicine誌に、2022年4月23日ウェブ掲載された、新型コロナの後遺症についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

COVID-19罹患後症候群とはどんなもの?

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、だるさや微熱などの症状が長期間持続することや、肺疾患や生活習慣病などの全身疾患が新たに生じることも多いことは、国内外を問わずこれまでに多くの報告があります。

主にヨーロッパでは「COVID-19罹患後症候群」という概念で、初発から12週間以上持続する症状を定義していましたが、以前ご紹介したアメリカの研究では、より広く発症から21日以上持続する体調不良をシンプルに後遺症と表現していました。それ以外にロングCOVID(Long COVID)、というような表現も使用されています。

要するに、まだ統一された概念ではないようです。今回のイギリスの論文では、ロングCOVIDという表現がされています。

日本でも罹患後症状、後遺症、後遺障害と多くの表現が使用されていて、あまり一貫性のない状態です。保険病名としては、COVID-19後遺症という記載も認められています。

いずれにしても、概ね罹患後3ヶ月を過ぎても、体調が罹患前と比べて悪い場合にそうした表現がされることが多いようです。

後遺症外来と称するものも複数開かれていて、慢性疲労に使用されるような漢方薬やビタミン剤、一部のアミノ酸製剤やその誘導体などが使用されているようですが、明確にその効果が立証されているようなものは現時点ではありません。

コロナ感染後の2320人を追跡調査

今回の研究はイギリスにおいて、18歳以上で新型コロナウイルス感染症のために入院していて退院し、その後5ヶ月の時点での状態を診察した、2320名の経過を1年間追ったものです。実際には5ヶ月の時点で1965名が解析対象となり、1年の経過を観察しえたのはそのうちの807名で、804名が解析対象となっています。

退院後5ヶ月の時点で、完全治癒つまり罹患前と同じ状態に戻っていたのは、1965名のうち25.5%に当たる501名で、1年後において完全治癒していたのは、804名のうち28.9%に当たる232名でした。

つまり、5ヶ月の時点で後遺症状があった人は、1年の時点でもあまり変わってはいない、ということになります。

リスクが高いのは、女性・肥満者・人口呼吸器使用者

どういう人が持続的な症状のリスクがあるかで解析すると、女性、肥満者、人口呼吸器を装着した重症の患者で、より症状持続のリスクが高いと解析されました。

持続症状と関連のある検査値の解析では、特に記憶障害や集中力低下などの認知機能低下の強い患者において、血液中の炎症マーカーであるIL6濃度の上昇が認められました。

IL6は臨床的にも測定はし易い検査値で、実際にIL6の抗体を治療に使用するような試みも、研究レベルでは行なわれています。

より詳細な検証と治療の開発に期待

今回のデータは今後のCOVID-19後遺症の治療の端緒となるもので、今後のより詳細な検証と、治療の開発に期待をしたいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36